企業におけるVDI(Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ基盤)の存在感が非常に大きくなっています。
VDIは物理サーバー上に複数の仮想マシンを作り、それらの1つ1つにOSやアプリケーションを搭載して個別のデスクトップ環境を構築します。この仮想的なデスクトップ環境とクライアントPCを1対1の関係で結ぶことで、すべてのデスクトップ環境をサーバー側で一元管理しつつ、ユーザーは平常通りのパソコン作業が行えるようになるわけです。
VDIを構築するにはデスクトップ仮想化ソフトウェアが必要です。その業界で長年高い人気を誇っているのが、VMware社が提供するVMware Horizonです。本記事では、VMware Horizonはどのようなソフトウェアなのか?その基本を解説したいと思います。
VMware Horizonはどんな仮想化ソフトウェアなのか?
VMware Horizonはいくつかの基本コンポーネントによって構成された仮想化ソフトウェアであり、まずはそれぞれにどんな役割を持っているかをご確認ください。
1. vSphere Desktop
VDIを実現するための、ハイパーバイザと呼ばれる仮想化基盤構築プログラムです。VDI構築の中核を成すコンポーネントであり、すべてのHorizonに付帯しています。
2. vSAN for Horizon
デスクトップとアプリケーションに仮想マシン視点のストレージを提供するコンポーネントです。オールフラッシュまたはハイブリッド構成に対応でき、VDIに必要なストレージ環境を迅速に構築できます。
3. vRealize Operations for Horizon
VDI環境の監視とレポート作成のためのコンポーネントです。Horizon環境とはもちろんのことXen Desktop・XenApp(Citrix社製の仮想化ソフトウェア)環境を監視でき、監視対象をデーターセンターまで拡大できます。さらにUX(User Experience:ユーザー体験)を分析できパフォーマンスの向上に役立ちます。
4. VMware Cloud Foundation for Horizon
VDI構築においてシンプルさとセキュリティ強化をもたらすコンポーネントです。VDIワークロード用に標準化されたクラウドプラットフォームを活用し計画と設計を簡素化したり、デバイスの紛失や盗難、マルウェアによるデータ漏洩のリスクを削減したりします。
5. User Environment Manager
仮想、物理、クラウドベースのWindowsデスクトップ環境においてプロファイルやポリシーの設定を管理するコンポーネントです。複雑なユーザーインターフェースを使用せずにデスクトップを管理でき生産性が向上します。
6. Mirage
組織全体に分散している物理デスクトップ環境およびPOS端末を対象に、Mirageが提供するイメージデスクトップ管理を使ってバックアップやリカバリの自動化やWindows移行を容易に行えます。
7. ThinApp
古くても業務に不可欠なレガシーアプリケーションをWindows 7やWindows 10に迅速に移行できるコンポーネントです。アプリケーション分離による競合を排除してスムーズな移行を支援します。
8. Blast Performance
場所や端末を問わず、パワーユーザーや設計者は世界中の人とスムーズにコミュニケーションが取れ、高性能の2Dおよび3Dグラフィック機能で設計ビジネスを推進できます。
9. App Volumes
Horizon、Citrix XenApp、Citrix Xen Desktop、RDSH(Microsoftの仮想デスクトップ機能) を使用した仮想環境に適したアプリケーションおよびユーザー管理コンポーネントです。ITコストを最大70%削減しスムーズなVDI運用を支援します。
VMware Horizon 6つの特徴
上記でVMware Horizonの基本コンポーネントをご紹介しました。では、VMware Horizonには具体的にどういったメリットや特徴があるのでしょうか?
以下に、VMware Horizonのメリットをご紹介します。
メリット1. vSphereによる堅牢な仮想化基盤
VMware HorizonはVMware vSphereを基盤として堅牢で可用性の高い仮想デスクトップ環境が構築できます。その中の重要な仕組みがDRS(Distributed Resource Scheduler:分散リソーススケジューラ)です。特定の仮想デスクトップが急速なCPU・メモリ消費を始めた場合、VDI環境を監視しているDRSは当該仮想デスクトップを他のホストサーバーに移動させ、自動的に全ノードでの負荷分散を図ります。
メリット2. ストレージアクセラレーター
始業時にユーザーが一斉ログインする際、処理能力を超えたI/Oが共有ストレージに周通することから仮想デスクトップがいつまでも立ち上がらない問題が発生します。これを解決するのがストレージアクセラレーターです。ホスト上のメモリをキャッシュとして利用し、ピーク時のRead I/Oを削減する機能です。その結果、ストレージの負荷を軽減します。
メリット3. vSANによるハードウェアコスト削減
VMware HorizonのVDI環境では、VMware vSANを利用してサーバー内臓のSSDやHDDを統合し、仮想的な共有データストアとして運用可能です。VMware vSANは最低3ノードの物理サーバーから構成でき、後々スケールアウトでノードを追加しながら共有データストアの容量や、I/O性能をリニアに増強することができます。
メリット4. 仮想デスクトップの多様な展開をサポート
VMware HorizonのVDI環境では、ひとつひとつの仮想デスクトップが完全に独立したインスタンスとなるフルクローン方式の他に、リンククローンやインスタントクローンと呼ばれる多様な展開方法をサポートしています。
メリット5. リンククローン機能による運用性の向上
リンククローンは、マスターイメージとなる仮想デスクトップのテンプレートと、ユーザーデータなどの差分データをリンクさせて個別の仮想デスクトップにする機能です。古クローン方式に比べるとストレージ容量を大幅に削減でき、マスターイメージに対してパッチを一度適用すればそのリンククローンとして運用しているすべての仮想デスクトップのイメージを一斉に入れ替えることが可能です。
メリット6. インスタントクローン
リンククローンを進化させたのがインスタントクローンであり、その名称が示す通り即時性を大きな特長とした仮想デスクトップの展開方式です。30台の仮想デスクトップをわずか2分以内で構築できます。
VMware HorizonはMicrosoft Azure上で運用できる
いかがでしょうか?VMware Horizonには多様なコンポーネントとメリットがあり、VDIを構築する上で有効的な選択肢です。さらに、VMware Horizonは信頼性の高いクラウドプラットフォームであるMicrosoft Azure上での運用可能です。VMware Horizon Cloud では、クラウドベースの単一の制御プレーンを通じて、クラウドからあらゆる場所のあらゆるデバイスに仮想デスクトップおよびアプリケーションを提供できます。
VDI環境構築の際は、Microsoft Azure上での運用も視野に入れながら、検討を進めましょう。