近年、働き方改革の推進により「テレワーク」という新たな働き方が広がりつつありましたが、新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態を迎え、さらにテレワークを導入する動きが加速しています。ここでは、テレワークのメリットや導入の際にポイントとなる点について解説します。
新型コロナウイルスによるテレワークへの影響とは
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、多くの企業でテレワークを本格導入する動きが急拡大しています。元来テレワークの導入を検討していなかった企業でも、外出自粛などのあおりを受けて、急きょテレワークを取り入れざるを得なかった企業も多いのではないでしょうか。
日本経済新聞社OFFICE PASSが企業の役員や管理職を対象に実施したインターネットによるアンケート調査(2020年3月27日〜4月10日)によると、「社員へ在宅勤務やテレワークを要請・推奨」した割合は、全体の72%という結果でした。規模別にみると、従業員300人以上の大企業で88%、300人未満の中小企業では49%で企業規模によりテレワーク導入の差があることが判明しています。また「新型コロナウイルスの影響で初めてテレワークを実施した企業」は46%にのぼり、コロナがきっかけとなり急激にテレワークが広がっていることが浮き彫りになっています。
一方、テレワークを進める上で課題も山積しています。代表的なものが、従業員が自宅で仕事をする上での持ち出し可能なPCやリモートで業務を行える環境の整備や、遠隔で勤務する際の勤怠管理や従業員の評価制度の見直し、遠隔でも孤立することなくコミュニケーションが取れる工夫など、生産性を維持するためにハード・ソフト面問わずさまざまな体制をどのように構築していくかを考えていかなければなりません。
働き方改革を推進「テレワーク」導入で期待できる効果
本格導入に向けてこれらの課題も残る一方、しっかりと運用できればテレワークによって期待できる効果もあります。
まず、テレワークでは場所に関係なく業務を行えるため、人材採用の面で幅が広がります。たとえオフィスに近いところに住んでいなくても優秀な人材がいれば採用できるようになります。また、子育てや介護を行っている従業員も、従来のオフィスワークと比較して働き続けやすくなります。
テレワークで業務そのものの生産性を高めることも可能です。オフィスで顔を合わせて仕事をしていると、不必要な打ち合わせや会議も実施してしまいがちです。リモートを前提としたコミュニケーションでは、基本的にチャットを活用するため、無駄な会議にとられる時間が減り、自身の業務に集中できることで、業務の効率化や生産性向上につながるというメリットがあります。
企業からみると、コスト面においても大きなメリットがあります。従業員の通勤が不要になるため、通勤費などに関わる人件費を抑えることができます。またオフィスで勤務する人数が大幅に減るため、構えるオフィス自体を最小限にすることができ、結果として維持費の削減につながります。
さらに、非常時の事業継続の観点でもテレワークはメリットになります。業務がオフィスに一極集中することを避けることで、自然災害や今回の新型コロナの感染拡大のような事態となっても業務が滞ってしまうリスクを回避することが可能となります。
緊急でテレワークを導入する際の抑えるべき手順
新型コロナの影響で、緊急でテレワークを導入する企業が急増しています。その際、注意すべき手順について解説します。
1.テレワーク導入方針の検討
まず、テレワークを導入する上で「どの業務を・何のために」テレワークに移行するのかの目的を明確にすることが必要です。テレワーク導入そのものが目的となってしまっては業務が滞ってしまう危険性もあります。持続可能な働き方となるためにもこれらを明記したガイドラインを策定した方がいいでしょう。また、基本方針やガイドラインを従業員にしっかりと共有することもポイントになります。
2.テレワークにおける社内ルールの策定
企業内でテレワークについての基本方針を固めたら、実際に運用していく社内ルールを策定します。社内ルールを作成する際は、以下の内容を盛り込みます。
- どの業務をどのような形態のテレワーク(在宅かモバイルワーク型なのかなど)で行うのか。
- 勤怠管理方法、テレワーク時の就業規定。
- テレワークにおける人事評価制度。
- テレワーク時に導入するツールの使用方法のルールとセキュリティ規定。
これらの社内ルールを確定したら、社内研修や教育を実施し、これらのルールの周知徹底を図る必要があります。
3.情報通信システム・機器の整備
テレワークを進める上で、従業員それぞれのICT環境の整備は必須となります。業務内容に沿ってハードウェア機器やソフトウェアの導入が必要になるでしょう。
ICT環境には、安全なデータの転送や集積を実現するため、VPN (Virtual Private Network)の設定や、リモートデスクトップや 仮想デスクトップ 化( VDI )やクラウド型システムの導入などの方法があります。また、リモートで勤怠管理ができるシステムの構築、遠隔で会議するためのWeb会議ツールやチャットツール、ファイルを共有し共同編集できるツールなども導入しなければなりません。
これまで会社支給の携帯電話やPCなどがなかった場合は支給を検討し、個人利用と分ける必要もあります。緊急でテレワークを導入する場合、従業員それぞれの自宅にある通信インフラを使用することも多いですが、追加費用が発生したときの手当の有無なども取り決めておくべきでしょう。さらに、従業員によってITリテラシーなどに差があるため、機器やシステムの使い方とともにレクチャーしておくことも必要です。
4.セキュリティリスクの対策
テレワーク導入のハードルのひとつが「セキュリティ」です。テレワークの場合、外から社内のネットワークにアクセスするため、情報漏洩や不正アクセス、データ改ざんを防止するためにも、端末そのものの管理やネットワークのセキュリティ確保が重要です。従業員それぞれの端末にウイルス対策ソフトウェアを導入するだけでなく、企業のネットワークに外部からの不正なアクセスがあったかを検知できるシステムも重要です。代表的なものにファイヤーウォールの設定がありますが、他にIPS(侵入防止システム)やIDS(侵入検知システム)を導入するなど、高度なセキュリティ対策を講じておきましょう。
5.VDT作業における環境づくり
テレワークにおいては「自宅で仕事をする」ということを前提にVDT( Visual Display Terminals) 作業に対する環境管理が求められます。VDT作業とは、ディスプレイやキーボードなどで構成される機器を用いてデータの入力や検索、プログラミングや監視などの作業を行うことです。厚生労働省は「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を定めており、労働衛生の面から作業者の心身の負担を軽減するために以下のような様々な基準を設けています。
- 照明はディスプレイ画面上における照度は500ルクス以下であること。
- 椅子は床からの座面の高さは、作業者の体形に合わせて、適切な状態に調整できること。
- 机の作業面は、キーボード、書類、マウスその他VDT作業に必要なものが適切に配置でき る広さであること。
これらの決まりについて従業員にひろく周知し、それぞれの環境整備を促していくことも重要となります。
まとめ
新型コロナの影響も相まってテレワークの注目度はさらに高まっています。コロナ対策としての側面にフォーカスされがちですが、テレワークを上手に運用していくことは今後の働き方の幅を広げ、生産性向上にもつながり、引いては企業の成長も期待できるのです。本記事のポイントをしっかりと理解した上で効率よくテレワークを導入していきましょう。