レガシー(Legacy)とは、「遺産」「遺贈」「受け継いだもの」「遺物」などの意味を持つ言葉です。本来、レガシーは後世に受け継がれるものとして丁重に扱われます。しかしながら、情報システムにおけるレガシーは、そうしたポジティブな意味合いはなく、古く時代遅れな「負の遺産」という意味合いで使われています。
どれくらいの年数が経過したらレガシーシステムになるのか?という定義はありません。既存のテクノロジーに代替する新しいテクノロジーが登場し、ビジネス的に対応が求められているにも関わらずそれに追随できていない場合、レガシーシステムとして扱われることになります。このため、稼働開始から数年程度でレガシーシステムになる可能性もあるというわけです。
本記事では、レガシーシステムが抱える課題をご紹介します。レガシーシステムを運用し続けることで何が起こるのか?一緒に確認していきましょう。
レガシーシステムが抱える課題
経済産業省はレガシーシステムが抱える課題を2018年9月に発表したDXレポートでまとめています。そこでは、「2025年までに何らかの対策を打たなければ企業は様々なIT問題を抱え、日本経済は年間12兆円の損失を被ることになる」という「2025年の崖」について言及しています。まずは、そのDXレポートより日本国政府が懸念している課題点をご紹介します。
- データを活用し切れずDXが推進できないため、市場の変化に対応してビジネスモデルを迅速かつ柔軟に変更することができず、デジタル競争の敗者になる
- システムの維持管理費が高額化して、情報システム予算に占める割合が9割以上に達する(転記的な観点でシステムを開発し、結果として長期的に保守費や運用費が高騰する)
- 保守運用の担い手不在により、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失などのリスクが高まる
- 多くの技術的負債を抱え、業務基盤そのものの維持や警鐘が困難になる
- レガシーシステムの保守及び運用に多くのリソースを割かざるを得ず、最先端のデジタル技術を担う人材を確保できない
- レガシーシステムのサポートに伴う人月商売の受託型業務から脱却できない
DXレポートでは、「2025年までに21年以上運用している基幹系システムが6割に達する」と指摘していますが、稼働年数が長いだけでレガシーシステムとは必ずしも言えないということもあるでしょう。しかし、皆さんの会社で稼働している情報システムのうち、新しいテクノロジーや時代に即していないと感じれば、それは既にレガシーシステムだと言えます。
レガシーシステムの何が問題なのか?
レガシーシステムが数多くの課題を生み出す最大の理由は、「ブラックボックス化」です。レガシーシステム化した基幹系システムの多くは、業務プロセスの効率化を図るために無数のアドオン開発やカスタマイズが組み込まれており、非常に複雑な構成をしています。また、すべて0からフルスクラッチで開発したシステムも存在することでしょう。これらのシステムは、開発当時のドキュメントがほとんど意味を成していないケースが多く、誰もシステムの全体像をつかむことができないのです。
これにより、システムの維持管理費は高騰します。正確なドキュメントが無ければ、障害等が発生した際の対応コストは肥大化するばかりです。
また、古くからある業務パッケージを活用したシステムなどは、大量のアドオン開発やカスタマイズが行われています。そのことは、レガシーシステムに大きな課題を生みました。幅広い範囲の業務プロセスと極度のカスタマイズされたレガシーシステムは、いわゆる「バージョンロック」を招きベンダーがリリースした新バージョンへの対応を阻みます。また、時代ごとに変化するビジネス環境への追随も鈍化させ、古く柔軟性の低いシステム環境を構築することになりました。
このままでは、若く才能のある人材を確保できたとしても、新しいテクノロジーを採り入れることができずに古い技術に縛られたシステム環境により、才能を潰すことにもなりかねません。また、その状態が続くとそもそも優秀な人材を確保できないなどの問題も生じて行くことでしょう。
第三者検証の必要性
多くの情報システム担当者は自身の役割を、システムを止めずに維持・運営することを考えています。しかし、その役割を重視するあまり広い視野を持った運用が難しく、システム移行のリスクを恐れてその場しのぎの処置を続けてしまいます。結果、事態を悪化させる可能性が高くなるのです。
ただし、責任があるのは情報システム担当者だけではありません。新しいシステムやインフラへの移行コストが高いことを知りながら勇気を持って移行の必要性を上司へ報告しても、「古いものから新しいものに替えるだけで、なぜこんなに金がかかるんだ!?」と一蹴されてしまうことが少なくありません。つまり、情報システムに対する経営層の理解不足もまた、事態を悪化させる大きな原因なのです。
こうした中で必要性が増しているのが、「第三者検証」です。社外のシステム導入パートナーや情報システムコンサルタントによるヒアリングやアセスメント(現状評価)を行ってもらい、客観的なデータをもとにした作業見積もりを出してもらうことで、信憑性が高く納得感のあるコストを含んだ移行計画を立てられます。さらに、第三者視点が加わることでテストの網羅性や品質精度検証を付けて、抜け漏れのないテストを実施することもできます。
もちろん、正確な第三者視点を採り入れるには信頼のおけるシステム導入パートナーや情報システムコンサルタントを見つけ出すことが先決となります。その点においては、移行を検討している情報システムやインフラが認定した代理店に着目することも大切になります。
クラウド型の情報システム・インフラへの移行検討を
レガシーシステムの移行先として、多くの企業の検討リストに挙がっているのがクラウド型の情報システム及びインフラです。そして、高い確率でクラウド型への移行が進められています。
クラウド型の利点は、経営層が懸念しがちな初期投資コストを大幅に抑制できる点です。情報システムやインフラを刷新するにあたり、新しいサーバーの調達は不要です。情報システムやインフラとしての機能はすべてインターネット経由で提供されるため、移行環境を即座に整えられます。
また、柔軟性の高さも魅力の1つです。クラウド型は企業が運用する情報システムの規模や、ビジネス環境の変化に応じてリソースの増減が容易に可能となります。比較的簡単に、変化に対して柔軟に対応できる環境を構築できることから人気を集めています。
今後、レガシーシステムを何らかの形で刷新したいと考える際は、ぜひともクラウド型の情報システムやインフラをご検討ください。信頼性の高いサービスならば、利用するだけでセキュリティ対策の強化に繋げることも可能です。