DX(デジタルトランスフォーメーション)は、一般企業だけでなく公共機関でも行われてきています。しかし、多くの自治体において、DXについて適切な取り組みすらなされていないばかりか、その重要性も浸透していない、という現状があります。
そこで本記事では、公共機関におけるDX推進の動向について解説しつつ、Citrix Cloud for Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)を活用したDX事例について詳しく解説していきます。
公共機関におけるDX推進の動向
デジタル・トランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術を用いてさまざまな課題を解決しようという試みのことで、現在は主に「デジタル技術によって、企業が抱える課題解決に取り組むこと」を指します。もちろん、企業以外でもDXの動きが進んでいますが、特に注目されているのが公共機関におけるDXです。
2018年秋、経済産業省によって発表されたDXレポートによると、企業でのDXが進められるようになったと言われています。例えば、多くの人が日々利用する行政では、窓口業務やさまざまな手続きなど業務が煩雑なうえに、やるべき仕事が拡大・増大していると言えます。
しかしその一方、自治体で働く職員数は減少しており、一人ひとりにかかる負担が少しずつ増えているのが現状です。また、こうした行政ではいまだに窓口をはじめとする対面でのコミュニケーションが行われており、利用者一人ひとりにかける時間が長く、無駄も多いと言えるでしょう。
こうした業務量の多さ、対応する職員の少なさや非効率的と言える現状に対し、行政DXの必要性が強く叫ばれています。2021年には「デジタル庁」が発足するなど、行政のDX化も少しずつ進んでいます。
公共機関でDXが必要な理由
では、自治体でDXが必要な理由についてさらに掘り下げてみましょう。
現状の行政では、業務量の多さに加え、以下のような課題が山積しています。
まず、行政手続きのアナログ対応についてです。手続きによっては住所や名前を何度も書かなくてはならない場面も多く、一人ひとりに時間がかかってしまうため、職員も利用者も大きな負担となっています。
次に、書面でのやり取りや押印など、対面主義にある現状です。電話やメールで問い合わせをすることはできても、その場で処理可能な手続きは非常に限られており、役所まで直接出向いて手続きをしなくてはなりません。対面でなくても安全にできる手続き方法を挙げ、職員や利用者の負担軽減につなげるべきと考えられます。
同じように、デジタル基盤の標準化が求められています。現在は書類を用いた手続きであったり、窓口を介した対面での手続きであったりと、デジタル化には程遠い現状と言えるでしょう。さらに、行政でも各部署や分野によって共有できるデータ、そうでないデータがあるため、利用者はそのたびに手続きをしなくてはなりません。
こうした負担を減らすためにもデジタル化を進め、分野間でのデータ連携を行う必要があると考えられます。
Citrix Cloud for Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)で公共機関のDXを促進
こうした行政DXに向けた課題解決に活用したいのが、データの管理やリモートワークをはじめとする、DXソリューションの導入です。
代表的なものとしてCitrix社の「Citrix Cloud」や、Microsoftの「Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)」が挙げられますが、このふたつのソリューションを組み合わせた「Citrix Cloud for Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)」です。
Citrix Cloud for Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)の特徴
Citrix CloudとAzure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)はそれぞれ単体で利用されていましたが、Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)の機能をCitrix Cloudによって拡張できたり、さまざまな環境に対応しやすくなったりするなど、双方のメリットを利用できるのが特徴です。
具体的な内容として、安全に利用できるよう高度なセキュリティ環境を整えられること、オンプレミスから、実際の仮想デスクトップ(VDI)が稼働しているAzureに移行できること、管理者にとって直感的な運用が可能なこと、などが挙げられます。
渋谷区の導入事例
それでは、実際に「Citrix Virtual Apps and Desktop」を導入している渋谷区の導入事例について、詳しくみてみましょう。
渋谷区では2019年の新庁舎開庁を機に、Citrix Virtual Apps and Desktopを導入しました。これまでにも取り組んでいたというICT基盤を一新し、住民へのサービス向上や、渋谷区で働く職員に対する働き方改革に力を入れました。
渋谷区での取り組みについては、具体的には約1,900台のノートPCが導入されたことです。約2,000人の職員や働く渋谷区では、ほぼ一人一台端末が配布されている計算になります。分割されていたネットワークの利用環境を仮想化することで、職員に配布された端末から、必要なときに必要な情報へいつでもアクセスできるようになりました。
また、実際の業務で用いられているのが、Microsoftのさまざまなグループウェアです。Office365をはじめ、Microsoft TeamsやSharePointといったグループウェアを積極的に活用し、職員同士で連携を取りやすい体制を構築。
さらに、文書管理システムや電子決裁システムの導入により、これまで書類を用いて対面で行われていた業務の手間を省き、職員はもちろん住民に対しても負担を軽減しました。これでペーパーレス化も図れるため、環境にも配慮できるメリットが生まれます。
住民一人ひとりにかける時間が短縮されても、こうしたツールを用いることでコミュニケーションが円滑に進むため、業務を進めるスピードも速まり、生産性向上やサービス向上につながるというサイクルも生まれました。
また、マイナンバーなどの個人情報はすべての職員が業務でよく利用するものではないうえに、厳正な管理が必要な情報です。DX化を図ったときにこうした情報をどのように管理するかについても十分に考慮されています。具体的には、Microsoft Azureをはじめとするクラウドを活用するとともに、Citrix Virtual Apps and Desktop導入によって、職員が必要なときにそれらを利用できる環境を整えたのです。
このように渋谷区では、窓口での対面手続きや書面による手続きなどの慣例を打ち破り、DXによって職員にも住民にも大きな負担を軽減しています。
まとめ
DXは一般企業だけでなく、行政などの公共機関においてもその動きが求められていることがわかります。従来のやり方を思い切って変え、DXを推進することで職員にとってはモチベーションアップや生産性の向上、サービスの向上につながるとともに、時間や場所を選ばない働き方改革にもつながります。
住民にとってもさまざまな手続きが簡素化できるメリットがあり、新型コロナウイルス感染へのリスク軽減にもつながるでしょう。
DXについて検討している場合、渋谷区が導入しているMicrosoftとCitrixの公共機関向けのDXソリューションの活用をぜひ考えてみてはいかがでしょうか。