2019年4月から施行された「働き方改革関連法」や、新型コロナウイルスなどの影響により、テレワークという働き方は徐々に広がりを見せています。一方で費用面の障壁があり、なかなか導入に踏み切れない企業も多いのではないでしょうか?
そんな企業の助けとなる、テレワークに関連したいくつかの助成金・補助金を紹介します。
テレワーク推進企業が知っておきたい助成金の種類
働き方改革が推し進められるとともに、新型コロナウイルスへの感染対策も求められる世情の元、テレワークを取り入れる企業が増えてきました。各省庁や自治体でも、在宅やサテライトオフィスでの就業を後押しするため、様々な施策を展開しています。
厚生労働省が主導する「働き方改革推進支援助成金」や経済産業省主導の「IT導入補助金」、東京都による「事業継続緊急対策助成金」や「テレワーク活用・働く女性応援助成金」などがその代表例です。
テレワークの推進に関しては、ほかにも多くの自治体が独自の支援策を実施しています。導入を検討する際には、所在地の最新情報を確認してみるのがおすすめです。
後ほど各制度について詳しく解説しますが、その前に、まずは「助成金」と「補助金」の違いについて知っておきましょう。
共通するのは、どちらも企業活動をフォローするための給付金であり、基本的に返済が不要だという点です。国や市町村、民間団体の財源から支給されます。
このふたつが異なっているのは、受給要件とその目的にあると言えるでしょう。「助成金」は受給要件が比較的達成しやすく、クリアすればほぼ確実に受けとれる制度です。複数の制度を並行して使うこともできます。その多くは厚生労働省が運営し、目的は雇用の増加やキャリアの育成に関するものがほとんどです。
一方の補助金はというと、公募制であることが大半で、支給を受けるためには期間内に応募して審査に通らなければなりません。助成金よりも利用におけるハードルは高いですが、支給額は高い傾向にあり、バリエーションも豊富です。主要な管轄は経済産業省で、目的は主に経済の活性化や国策の推進。その手段として、会社や個人事業主を手助けするという形をとっています。
ではここから、先述したテレワーク導入に関する助成金・補助金の代表例の内容について、それぞれ詳しくご紹介していきましょう。
働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)|厚生労働省
テレワークの導入や、継続使用にともなう支出を補助する助成金です。対象は労災が適用される全国の中小企業で、支給を受けるためには「テレワークに使う通信機器の購入や就業規則などの作成」、「労働者に対する研修、周知・啓発」など、定められた項目のうち最低でも1つは実施している必要があります。その取り組みで発生した経費(機械装置の購入費など)の一部が助成される、という仕組みです。
また、「指示された期間内で対象者全員にテレワーク業務をさせる」など、支給額にかかわる目標も設定されています。支給額は「対象経費の合計×補助率」で、補助率は上記の目標を達成した場合4分の3、未達成の場合は2分の1です。目標達成した場合の上限額は1企業につき300万円、1人あたりは40万円で、達成できなかった場合の上限は1企業につき200万円、1人あたり20万円となります。なお、2020年度分の申請は、12月1日まで受け付けられています。
働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)|厚生労働省
この助成は「働き方改革推進支援」の一環として、コロナウイルス対策のため時限的に設置されたものです。助成を受けられる企業や、実施すべき取り組みは通常のテレワークコースと同様の条件となっています。取り組みのうち、支給対象となる経費の内訳も同じです。
このコース特有なのは、期間内に達成すべき要件が2つある点でしょう。1つ目は上記の取り組みの遂行、そして2つ目は、最低でも直接雇用している労働者1人をテレワークに従事させることです。支給額は通常コースと同じ計算式で、補助率は2分の1。上限は1企業で100万円までとなっています。交付申請は2020年5月29日、支給申請が2020年9月30日までです。
IT導入補助金2020|経済産業省
もともとは、企業がソフトウェアやサービスなどを導入する際の支出を、部分的にサポートする制度として生まれました。指定事業者が登録しているITツールを用いた、生産性の改善や効率化の取り組みを支援します。
2020年現在、積極的に在宅勤務の環境を整え、新型コロナウイルスの蔓延による影響を克服しようとする事業者のために、通常枠に加えて、新たに特別枠が設けられました。対象は通常枠・特別枠ともに全国の中小企業や小規模事業者。申請においては、発行に1週間ほどかかるgBizIDプライムアカウントが必要です。ソフトウェア購入における経費が主な支給対象ですが、特別枠に限り、当該ソフトウェアの運用に欠かせないハードウェアのレンタル料も含まれます。
通常枠の場合、枠内にAとB、2つの分類があり、A類型は補助額の下限〜上限が30〜150万円、B類型は150〜450万円です。補助率は、どちらも2分の1以下と規定されています。
そして特別枠は、C類型-1とC類型-2の2分類となっています。補助率は1が3分の2以内、2は4分の3以内です。下限〜上限額は、どちらも30〜450万円で共通しています。通常枠よりも申請と受給のハードルが少々高めな分、より手厚い補助が受けられるでしょう。なお公募が通年となったことで、申請締切は2020年中にもまだ数回残っています。直近の締切は、通常枠・特別枠ともに6月26日と7月10日の予定です。
事業継続緊急対策(テレワーク)助成金|東京しごと財団
新型コロナウイルスの影響で事業がストップしないよう、在宅勤務などの環境整備を目指す企業に対して支給される助成金です。運営は公益財団法人の東京しごと財団で、2〜999名以下の常時雇用者を有する都内、中堅・中小企業が主な対象です。また、都が行っている「2020TDM 推進プロジェクト」への参加なども必要となります。
テレワーク設備の用意を、指定された期間内に実施することが必須の要件です。その取り組みで生じたソフトウェアの購入費用や、ネットワークの保守費用などが助成対象となります。最大250万円までの金額を、10分の10の助成率で受け取れます。申請は郵送で1度のみ、2020年7月31日締切必着です。なお、計上された予算以上の申請があった場合は、期限前に終了することもアナウンスされています。できるだけ早めの申請がおすすめです。
テレワーク活用・働く女性応援助成金|東京しごと財団
こちらも同じく、東京しごと財団の運営による助成金です。テレワークの促進に加え、職場変革による女性のさらなる飛躍も目的としています。コースは「テレワーク活用推進コース」と「女性の活躍推進コース」の2通りあり、テレワークに関わる助成は1つ目の「テレワーク活用推進コース」です。恒常的な雇用者が2~999名までの、都内に所在する中堅・中小企業などがその対象となっています。
テレワーク導入時におけるモバイル端末やネットワークおよびシステムの整備や構築費用、もしくはサテライトオフィスの利用に関する費用が助成されます。支給されるのは250万円を限度に、助成率2分の1で計算した額です。
2020年度の申請期間に関する情報は、2020年6月現在公表されていません。最新情報は東京しごと財団のホームページをご覧ください。
まとめ
企業のテレワーク活動を後押しするのは、助成金や補助金だけではありません。無償のコンサルティングやテレワーク環境を体験できるサポートなどを合わせて受ければ、導入前の不安をより減らせるでしょう。
新型コロナウイルスの感染拡大で支援が拡充しているこのタイミングで、自社へのテレワーク導入を検討してみてはいかがでしょうか。