近年、クラウドファーストが一般化しつつあり、多くの企業でERPシステムのクラウド化が進展しています。そんなクラウド型ERPのなかで最も高い支持を得ているのがSAP社のソリューションです。本記事はSAP社が提供するクラウド型ERPの概要や導入メリットを解説するとともに、おすすめのサポートサービスを紹介します。
そもそもSAP/ERPとは?
SAP社のクラウド型ERPについて解説する前に、まずは「SAP」と「ERP」のおさらいをしておきましょう。SAPとERPという言葉は、本来の意味とはやや異なる使い方をされがちな傾向にあります。そのため、クラウド型ERPの導入を検討しているのであれば、この2つの用語がもつ意味を正しく理解しなくてはなりません。
SAPとは?
「SAP」とは、1972年にドイツで創業された大手ソフトウェア企業です。「サップ」と呼ばれることもありますが、正しくは「エスエイピー」と読みます。IBMドイツ法人を退社した5人のエンジニアによって創業され、1973年に世界初のERPシステムと呼ばれる「R/1」をリリースしました。そして、現在ではERP分野において世界トップシェアを誇るリーディングカンパニーであり、世界中の企業が基幹システムにSAP社のソリューションを採用しています。そのため、メルセデス・ベンツの車を総称して「ベンツ」と呼ぶように、SAP社のERPシステムを指して「SAP」と呼称する傾向にあります。
しかし、メルセデス・ベンツにもさまざまな車種があるように、SAP社のERP製品も多種多様なソリューションがある点に留意しなくてはなりません。たとえば、まずオンプレミス型とクラウド型の違いがあり、さらにクラウド型ERPにも大企業向けの「SAP S/4HANA Cloud」や、中小企業向けの「SAP Business ByDesign」など複数のソリューションが存在しています。
ERPとは?
「ERP」は「Enterprise Resource Planning」の略称で、経営資源を、部門ごとにリアルタイムデータを集め一元的に管理し、効率的に運用するマネジメント手法を指します。ERPの本質は、企業活動を支える基幹業務の統合的な管理と標準化、そして、データ統合による経営判断と意思決定の迅速化です。基幹業務を一元管理することで全部門が単一のデータに基づいて連動できるため、全社横断的な情報共有や経営リソース配分の最適化に寄与します。
そして、会計・人事・調達・生産・販売などの基幹業務データを一元的に管理し、経営資源の最適化に寄与するITシステムを「統合基幹業務システム」または「ERPシステム」と呼びます。本来のERPは経営資源を一元的に管理するマネジメント手法を意味する概念的なビジネス用語ですが、近年では統合基幹業務システムを指して「ERP」と呼称をするのが一般化しつつあります。
SAP社のクラウド型ERPのメリット・デメリット
ここからは、SAP社のクラウド型ERPを導入するメリットとデメリットについて見ていきましょう。
SAP社のクラウド型ERP導入のメリット
クラウド型ERPの大きなメリットは、オンプレミス型と比較して導入費用と開発期間を大幅に削減可能な点です。オンプレミス型の導入プロセスは「計画立案」→「製品選定」→「要件定義」→「設計」→「事前テスト」→「開発」→「事後テスト」→「運用」というプロセスを辿ります。企業規模や組織体系によって大きく異なりますが、ERPシステムを導入する際は、最低でも一千万円以上から数億円というコストと年単位での開発期間が必要でした。たとえば、2009年にNECがオンプレミス型の統合基幹業務システム「SAP ERP」を導入した際の総投資額は約400億円にも及んだといいます。しかし、クラウド型ERPであれば、サーバーやネットワーク機器などのITインフラを必要としません。そのため、企業規模によって必要なライセンス数が異なるため一概には言えないものの、導入費用と開発期間を大幅に削減できます。
また、クラウド環境はITインフラの保守業務が不要なため、情報システム管理部門の業務負担を軽減できる点も大きなメリットです。保守業務に割いていた人的資源をコア業務に投入可能になり、業績向上や収益性の改善が期待できます。現在、オンプレミス環境で「SAP S/4HANA」を運用している企業であれば、AWSやAzureなどのクラウドプラットフォームへ移行することで、クラウド化のメリットを享受しつつ従来と変わらない運用が可能です。
機能面のメリットとしては、「SAP S/4HANA」はインメモリDBを採用しているため、基幹業務の管理とビジネス分析のプロセスを高速化できる点が挙げられます。さらにSaaS型の「SAP S/4HANA Cloud」を例に挙げるなら、3ヶ月ごとにシステムがアップデートされるため、常に改善・成長し続けるという特長があります。AIの機械学習やディープラーニング、ブロックチェーンなどの先端技術にリンクできる条件も備えているため、技術革新や市場変化に柔軟に対応できる点も大きなメリットです。
SAP社のクラウド型ERP導入のデメリット
クラウドERPのデメリットとして挙げられるのは、柔軟性の低さやインターネット環境に依存する点です。SAP社のソリューションに限らず、クラウドコンピューティングサービスは基本的にカスタマイズ性に乏しく、自社のシステム要件を満たせない可能性があります。そして、基本的にオンライン環境でしか稼働できないため、ネットワーク障害の発生時に事業の継続が困難になります。また、コスト面のデメリットとして、オンプレミス型と比較すると導入費用は安価に抑えられるものの、従量課金の月額費用やライセンス費用などのランニングコストが必要な点に留意しなくてはなりません。
「SAP ERPクラウドホスティングサービス」にクラウド型SAPの導入や運用もおまかせ
「SAP ERP」のメインストリームサポートが2027年に終了する影響も相まって、ERPシステムのクラウド移行が加速しています。しかし、ERPシステムのクラウド移行はファイルの破損や不具合による事業停止など、さまざまなリスクが懸念されます。そこでおすすめしたいのが「SAP ERPクラウドホスティングサービス」です。
「SAP ERPクラウドホスティングサービス」とは?
「SAP ERPクラウドホスティングサービス」とは、KOBELCO社が運用管理するITインフラ上でSAP社のERPシステムを稼働できる仮想ホスティングサービスです。KOBELCO社は兵庫県に本社を置くSlerで、ITシステムの設計・開発・保守・運用に関する深い知識と高度な技術を備えています。そんなKOBELCO社が提供する仮想化されたインフラ基盤上で、統合基幹業務システムを運用できるのが「SAP ERPクラウドホスティングサービス」です。
統合サポートデスクによるワンストップサービス
「SAP ERPクラウドホスティングサービス」は、KOBELCO社のインフラ基盤上でERPシステムを運用できるため、物理サーバーやネットワーク機器などのITインフラを自社で用意する必要がありません。24時間/365日受付の統合サポートデスクを設置しており、KOBELCO社がアプリケーション保守・運用も含めた運用全てをワンストップでサポートします。
機能や特長
「SAP ERPクラウドホスティングサービス」を活用することで、導入費用や開発期間の大幅な削減、保守・管理の業務負担の軽減、基幹業務の管理とデータ分析の迅速化など、先述したクラウド型 ERPの機能やメリットを享受できます。また、「ベースプラン」「アドバンスドプラン」「カスタマイズプラン」という3つのサービス形態を用意しており、自社の事業形態や組織体制に合わせて柔軟なERP環境を構築できる点も大きなメリットです。ERPシステムのクラウド化を検討している企業は、インフラ基盤からアプリケーション運用までワンストップで提供する「SAP ERPクラウドホスティングサービス」を導入してみてはいかがでしょうか。
まとめ
クラウド型ERPはオンプレミス型にはない、さまざまな恩恵を企業にもたらします。「SAP ERP」から「SAP S/4HANA Cloud」への移行、またはオンプレミス環境で運用している「SAP S/4HANA」をクラウド化したい企業は、KOBELCO社へ相談してみてはいかがでしょうか。