ITシステムの導入や運用にあたって、近年よく耳にするSAPは、どのようなシステムなのか気になるところです。SAPはERP製品の一つで、高いシェアを誇るため、導入の際には特徴をよくチェックしておくことが大切です。
業務効率の悪さやプロセスのわかりにくさなどに困っている場合は、SAPシステムでの解決を積極的に目指していくことが有効です。そこで今回は、SAPシステムの特徴やモジュールについて紹介したうえで、導入のメリットや注意点を解説していきます。
今注目のSAPシステム(SAP ERP)とは
近年注目を集めているシステムに、SAPのERPがあります。しかしERPやIT関係の用語になじみがない人にとっては、「SAPシステムとは何か」なかなか理解できない部分も多いのではないでしょうか。
まずは、概要として「SAPとは何か」という点を簡単に整理していきます。
SAPシステムは、SAP社が提供しているERPのことを指します。ERP(Enterprise Resource Planning)とは、企業をはじめとする組織すべての部門を一元管理できる共通システムのことです。
ERPには多くのパッケージ製品がありますが、中でもSAPシステムを利用している企業は多く、ERPを知るなら、SAPシステムについては必ず理解を深めておきたいところです。
SAPシステムでは、これまで部門ごとに分かれていたシステムを統合し、データ管理・連携をスムーズに行います。これにより異なる部門同士の情報共有は迅速化され、業務の効率化やコスト削減が可能となります。
生産性が上がらない、あらゆる業務プロセスにおいて無駄が多いなどの経営課題を抱えている場合は、SAPシステムをはじめとしたERPの導入が非常に効果的と考えられます。
SAPシステムのモジュールとは
SAPシステムを運用していくときは、「モジュール」というIT用語を目にすることが多くなります。そのため理解を深めるため、各機能の利点をしっかりと感じるためには、モジュールとは何かという点も整理しておく必要があると言えるでしょう。
モジュールとは「一つのまとまりになった機能」のことを指します。建築分野では基本単位という意味を持ちますが、IT・ビジネス用後としては一つのまとまりになった機能という意味を持つことを覚えておきましょう。
SAPシステムは、あらゆる部門の業務・データを一元管理・運用できるERPパッケージです。しかし厳密にいうとSAPを含めたERPは、「さまざまな種類のモジュールが存在し、それらがまとまることで成り立っている」という特徴を持ちます。
SAPシステムのモジュール項目
ではここからは具体的に、SAPシステムに設けられているモジュール項目を整理していきましょう。
※カッコ内は各モジュールの略称です。
財務会計(FI)…帳簿や伝票、決算書作成などの財務会計を管理する
管理会計(CO)…経営状態をスムーズに把握し管理する
販売管理(SD)…販売の状態を把握し管理する
在庫購買管理(MM)…仕入れや発注、在庫状況などを管理する
生産計画管理(PP)…製造業の製造計画・生産・販売・原価計算などを管理する
品質管理(QM)…製品の品質チェックを管理する
プロジェクト管理(PS)…プロジェクト計画やリソース計画などを管理する
プラント保全(PM)…技術システムを管理する
倉庫管理(WM)…入庫や出荷、在庫など倉庫に関する管理を行う
人事管理(HR)…労務や人事情報、評価などを管理する
クロスアプリケーション(CA)…各アプリケーションの領域横断の機能
SAPシステム導入のメリット
ERPは組織内におけるあらゆる業務の効率化をサポートしてくれるのがポイントです。SAPシステムを導入するメリットとしては主に以下のようなことが挙げられるため、導入を検討する際にはよくチェックしておきましょう。
業務工程を標準化できる
SAPシステムを導入すれば、各部門の業務行程を標準化して整備することが可能です。
特に、「効率・品質・安全性」などの面からしっかりとした基準やルール、手順を決めることで業務を進めやすくするのがポイントです。
標準化のための環境・マニュアル整備を行っていないと、例えば承認の行程を何度も経なければならないなど無駄な工程が生まれてしまうことは少なくありません。そういった無駄が増えれば生産性が落ちるのは明らかです。
しかしSAPシステムには、あらゆる業種が効率的に業務を進めるための管理システムが備わっています。そのため導入し運用していけば、標準化によって効率が向上し、従業員のモチベーション管理にもつながりやすくなります。
データ処理を高速化できる
SAPシステムでは、組織内で管理しているデータを素早く情報共有したり、変換したり加工したりすることが可能です。部門同士の垣根を超えてデータ連携をするのもスピーディーなため、データ処理が総合的に高速化されるのは大きなメリットと言えるでしょう。
例えば販売と在庫のデータをリアルタイムで反映することができれば、それに伴って仕入れや原価管理を同じようにスムーズに行うことができます。
生産性向上が期待できる
製品の製造における効率と品質管理を的確に行うことができるSAPシステムでは、生産性を大きく向上させてくれます。
納期や在庫、原価などを細かく管理してリアルタイムでデータ反映を行うため、必要に応じて別部門との連携も取りやすくなります。これにより生産性がアップし、最終的には利益向上という大きな成果をもたらします。
SAPシステム導入の前に確認したいこと
ERPパッケージとしてSAPを取り入れるのには大きな利点があると言えますが、導入を検討する際には、上記のようなメリットとあわせていくつか確認しておきたいことがあります。それは、
- IT知識や技術力のある人材が必要
- 導入にあたって初期コストがかかる
- 取り入れる目的が明確でなければ失敗する可能性もある
以上のような注意点です。
SAPは各部門の業務を総合的に管理できるシステムとして非常に優秀ですが、やはり導入や運用にあたってはIT知識・スキルのある人材が必要になります。IT関連の知識を持った人材が著しく不足している場合は、知識を身につけるか、ITコンサルを依頼するかして対策を取ることが不可欠となります。
また、導入にあたってはある程度まとまった費用を用意する必要があります。ライセンスやサーバー、システム構築費用などがかかるため、初期コストがかさむことは注意点の一つと言えます。
そして最後に重視しておきたいのは、自社に取り入れる目的です。「ほかもやっているから」といったあいまいな目的で導入すると、結果として費用ばかりかかって不必要だったという場合も出てきます。どのような経営課題を解決するために導入するのかをよく考えて、事前に目的を明らかにしておくことが大切です。
企業デジタル化においてAzureへクラウド移行するメリット
デジタル化が進む現代では、さまざまなシステムのクラウド化も著しく進んでいます。基幹システム(ERP)を導入する場合でも、クラウドでの運用の需要は非常に高いと言えるでしょう。
ERPで業務効率化や大幅なコストカットを目指すなら、新たなかたちの基幹システムとして、SAP on Azureの採用を検討してみましょう。導入を検討する際には、実際に導入したことで効率化やコスト削減に成功した事例をチェックしておきたいところです。
業務プロセスの見える化や情報共有スピードの課題を解決するにあたってのSAP導入事例については、資料をダウンロードのうえ確認してみてください。
まとめ
SAPシステムには多くのメリットがあるため、近年は導入を進める企業が増えてきています。特に昨今はリモートワークや社外でのスムーズなシステムへのアクセス、部門間の連携の需要が拡大している時代です。「業務効率が悪い・プロセスが散らかっている」などの経営課題を解決するには、ERPの運用は非常に有効な対策と言えるでしょう。
他社のSAP導入事例なども確認しつつ、自社に必要なのかを見極めたうえで、ERP運用での業務効率化・コスト削減を積極的に目指しましょう。SAP on Azureなら、クラウド型であらゆる業務プロセスを効率化し、場所を問わずアクセスできる柔軟な業務環境を手に入れられます。ERP導入をご検討の際には、ぜひお問い合わせください。