近年、企業全体のDXをスムーズに進めるために、「DevOps」が注目されています。これは、システムの開発と運用の境目をなるべく取り払い、協働しつつ迅速にサービスのリリースに活かしていく取り組みです。そこで本記事では、DevOpsを推進するポイントや、それに有用なソリューションについて解説します。
なぜDevOpsが注目されているのか?
「DevOps(デブオプス)」はここ数年、IT業界で話題に取り上げられているトレンドキーワードです。システム開発と運用の在り方を変えていくDevOpsが、なぜ今これほど関心を集めているのでしょうか。DevOpsとは?
そもそもDevOpsとは、「Development(開発)」と「Operations(運用)」を掛け合わせた言葉です。システムの開発環境と運用環境の垣根をなるべく取り払い、組織の情報やデータ、機器などのリソースを効率的に活用し、開発から運用のプロセスを迅速に進めるために、安定したシステム体制の構築を目指す取り組みを指します。
あらゆる業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)によるビジネス競争が始まり、企業の各部門は達成すべき目的に基づいて行動しています。しかし、企業の各部門で垣根があると、「市場やユーザーのニーズに価値を届ける」という共通の目的が果たせません。
その弊害がもっとも大きく表れるのは、システムの開発と運用の壁です。企業の基幹システムがオンプレミスからクラウド環境に移行しつつある中、開発と運用の壁という問題はより深刻化し、近年さまざまな企業で問題として顕在化しています。クラウド化でよりスピーディーな対応が求められた結果、市場やユーザーのニーズにタイムリーに対応した製品・サービスを提供する必要性が高まっているのです。実際、配車サービスや空き部屋の貸し借り仲介サービスなどは、ユーザーのニーズにスピーディーに応えることで、劇的な成長を見せています。
こうした開発と運用の壁の問題を解決する方法として、DevOpsというキーワードが広まりました。DevOpsの推進は、企業の成長に大きなメリットがあると期待されています。
DevOps推進評議会
海外でDevOpsという言葉が使用されたのは、2009年にJohn Allspaw氏とPaul Hammond氏が行ったプレゼンテーションビデオが最初とされます。ただ、日本と海外ではIT環境や文化の違いがあるため、DevOpsの導入を検討する際は、日本国内の開発・運用環境に即した推進方法を考えることが重要です。
DevOpsが日本より先に浸透している米国では、自社でシステム開発をするのが一般的で、日本のように外部のITベンダーに委託するケースは稀です。システムの自社開発が多い米国企業では、普段から開発と運用チームが協力する必要性があります。一方、日本の場合はITベンダーの売上構造が開発中心で、運用チームと協力する体制が作りにくいという問題があります。
そのため、日本ではDevOpsの概念がなかなか広まりませんでしたが、2016年に発足した「DevOps推進評議会」が1つの転機になったとされます。同会はDevOpsという概念の普及を設立目的としており、その背景に日本の産業界が抱える問題として、サービス業の生産性低下・国際競争力の低下・人材不足を挙げています。
DevOps推進評議会は2018年に解散しましたが、日本の産業界の現状を改善すべく、民間企業の中にDevOps推進支援サービスを提供する動きが始まりました。その1つが、後述する日立ソリューションズのサービスです。
「DevOps化=IT化」ではない
日本企業でもDevOpsを推進していくには、前提としてIT環境の整備が欠かせません。しかし、DevOpsを推進する本来の目的は、「国際的な競争力の低下や慢性的な人材不足に悩まされる環境を解決しながら、市場・ユーザーのニーズ変化に対して、自社の製品やサービスを即応させていくこと」です。
IT環境の整備はあくまで手段に過ぎず、DevOpsの推進によってDXを実現することが肝要です。この観点からDevOpsについて、「企業のDXを加速させるという明確な目的を持ちつつ、基幹システムの開発と運用の在り方、そして関係性を再構築するもの」、と理解してもいいでしょう。
日立ソリューションズは近年、新しいサービスや製品を提供するお客様のアジャイル開発に取り組んできました。10年以上培ったノウハウを基に、企業の規模を問わず、短期間で改善を繰り返し、ビジネスの価値を高めるプロセス改善を支援しています。さらにDX推進を加速するため、プロセス改善に加えてDevOpsの導入サポートも行い、これらのノウハウを体系化してDevOps推進のソリューションサービスを提供しています。
自社環境に沿ったDevOps推進で、適切なDXを実現する
実際にDevOpsを自社に導入する場合は、特定のツールを利用するのではなく、自社環境に合わせて進めることが重要です。以下では、DevOpsで自社に最適なDXを実現するポイントを解説します。大目的はDX実現
企業がDevOpsを導入する大目的は、「開発・運用環境を再構築し、組織全体のDXを目指すこと」です。DXはデータとデジタル技術を活用し、ユーザーや市場のニーズに即応した製品やサービス、ビジネスモデルに変革することで、業務プロセスや企業全体の体制、文化までもドラスティックに変革します。
逆にいえば、「DXによってどのようなビジネスを構築するのか」というプランの策定がないと、単なる最新IT技術の導入に終始しかねません。もちろん、ビジネスモデル全体を一気に変えようとするのではなく、できるところから着実に実施することが重要です。その意味でも、「DevOpsで開発・運用の関係性を構築する」を発想のベースとすることは理に適っています。
DevOps推進は単一のツールでは不可能
システム改善をITベンダーに丸ごと委託する企業が多い日本では、「特定のツールを導入すれば問題が解決する」という発想が生まれがちです。しかし、DevOps推進のために最新ツールを導入したところで、必ずしも自社に適したDXが実現するわけではありません。業種や業態、ビジネスモデルに応じ、多種多様なツールの導入が必要なのです。
あくまでDevOps推進は、自社に最適なDXを実現する大目的であることを見失わないようにしましょう。そのうえで、目的に沿って自社のシステム開発・運用に最適なツールを選定していく作業が必要です。
現場の声を集める
自社でDXを起こすには、まず現場の声から「どんな現状の問題があるのか」を丁寧に聴取・収集し、データ活用に活かすべく整理することが大切です。実際にモデルを使い始める段になって、現場から追加要望が出たためにシステム導入が滞るケースも考えられます。そうした事態を避けるため、現場の関係部署や関係者を巻き込むことも必要です。
また、システム開発・運用の現場では、それぞれの立場の違いから軋轢が生じやすいと言われます。企業全体でDXを見据え、DevOpsを推進するためには、開発・運用部分が抱える問題を慎重に整理する必要があるのです。
そして、これらを解決するためのツールを一つひとつ選定し、現場と密に協力しながら、小さい範囲でツールの自社への最適化を進めていくことがポイントです。焦って現場で使えない最新ツールを導入したところで、DevOps推進どころか業務に悪影響を与えることにもなりかねません。
前提となるのはアジャイル
DevOps推進の前提となるのは「アジャイル」です。ここでは、DevOpsとともに知られるようになったアジャイルについて解説します。アジャイルとウォーターフォール
アジャイルとは、システム構築やソフトウェア開発をする際のプロジェクト開発手法のことです。日本語では「素早い」「機敏」という意味があり、短期間にテストを繰り返し、迅速に開発していく手法を指します。これまでのプロジェクト開発に比べ、開発期間を大幅に短縮できるのが特徴です。
基本的にDevOps推進は、アジャイル型のワークフローを自社に最適化し、ユーザーや市場のニーズに即応しやすくすることで実現させます。アジャイルとよく比較される「ウォーターフォール」は、工程を分割する開発手法で、最初にソフトウェアの機能をすべて決めるのが特徴です。これとは対照的に、アジャイルはプロジェクト進行中であっても、柔軟に仕様変更に対応できます。
「DevOps化=アジャイル化」ではない
アジャイルは具体的なプロジェクト開発手法であり、DevOpsが示す開発と運用の協力体制を意味しません。例えば、ユーザーや市場のニーズに素早く対応するため、市場価値の高い機能から逐次リリースするアジャイル体制を構築するには、柔軟性が高い分、専門知識を持つ人材を集める必要があります。しかし、それだけでDevOps化は完了しません。アジャイル環境を前提に、DX実現を目指し、DevOpsで開発・運用間の協力体制を再構築していく必要があるのです。
「DevOps推進ソリューション」の利点
「DevOps推進ソリューション」は、アジャイル開発経験の豊富な日立ソリューションズのコンサルタントが、人材育成からプロセス改善支援、評価、運用・保守までトータルに支援するDevOps化支援サービスです。最後に、DevOps推進ソリューションのメリットを紹介します。多様な育成プランを用意
「何でもこなせる、即戦力のある有能なエンジニア」を雇えば、自社のDevOpsが実現するわけではありません。組織全体でDevOpsを進めるには、社内人材の育成が不可欠です。「DevOps推進ソリューション」では、関係者がDevOpsを理解できるよう、基礎から実践までさまざまな育成プランが提供されます。前提となるアジャイル開発概要の教育支援も並行して導入可能です。各ツールの選定からDevOps実施まで徹底支援
DXという大目標を明確に意識し、現状の課題解決のため、各企業に最適なDevOps用ツールの選定・提案をしてくれます。膨大で多種多様なDevOpsツール群から、どのツールをどのように組み合わせるか、整理し提案してくれるので、選定の手間を大幅に削減することが可能です。一見すると複雑になりがちなDevOps推進計画を、計画・検証・適応の3つのステージに分けた導入ロードマップで、着実に指導・牽引してくれます。最適なプロセスを整備
開発と運用の現場における問題を整理し、協力関係を構築し得る最適な実施プロセスを策定できるのもメリットです。プロセスの施行を通じて評価・検証し、ガイドラインを随時改善してくれます。
さらにはDevOps化を進めた現場や試用中の環境で、現場スタッフにアンケートを実施します。今後の改善点に向けたフィードバックを行い、評価報告を行うことで、最適なプロセスの整備を実現させてくれるでしょう。
まとめ
DevOpsの必要性は理解していながらも、環境の整わない企業のほうが多いのが現状です。「DevOps推進ソリューション」は、人材育成やツール選定など「人・技術」の両面で、DevOpsの基礎固めから実施に至るまでを強力にサポートしてくれます。DevOpsの推進に課題を感じている方は、ぜひ導入をご検討ください。