本記事では、ドイツのSAP社が提供する次世代型ERP「SAP S/4 HANA」と、三井情報株式会社が提供する「PoC環境提供サービス for SAP S/4HANA」について解説します。社内システムのSAP S/4 HANAへの移行を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
SAP S/4 HANAとは
「SAP S/4 HANA(エスエイピー・エスフォーハナ)」とは、ドイツ西部に本社を置く欧州最大級のソフトウェア会社「SAP社」が提供する、次世代型のERP(Enterprise Resource Planning)です。
ERPの原義は「経営資源計画」という訳語が示すように、企業が抱える資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を効率的に管理・活用するための計画を意味していました。しかし、現在ではもっぱら、それをソフトウェア上で可能にする「統合基幹系業務システム」を指す言葉として使われています。ERPによって、企業は生産・販売・人事・会計など、部門ごとに切り離されていた基幹系システムを統一的に運営することが可能になり、円滑な企業運営ができるようになります。
SAP S/4 HANAは、SAPが提供する中でも第四世代のERPに位置づけられます。MicrosoftやGoogleといった世界的企業も含め、2019年7月時点で1万1,500社もの導入実績を誇っています。
SAP S/4 HANAに移行するメリット
では、自社システムをSAP S/4 HANAに移行することで、一体どのようなメリットが得られるのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
システムの高速化
SAP S/4 HANAでは、インメモリデータベースの「SAP HANA」をプラットフォームに採用しているため、システム処理やデータ収集の高速化が図れます。
「インメモリデータベース」とは簡単にいうと、すべてのデータをメモリ内に保存する仕組みのことです。通常、コンピューターの記憶回路は「メモリ」と「ハードディスク」に分けられ、このうち前者は現在行っている作業を遂行するために、リアルタイムで活用されている記憶領域を指します。
例えば人間の場合も、電話口で耳にした電話番号などをメモしたり復唱したりするために、その場限りの短期記憶が使われていますが、コンピューターのメモリも同じような役割を担っています。他方、HDDやSSDといった外部の記録媒体とデータをやり取りするには、そこへのアクセスを挟む都合上、若干の時間がかかります。このように非インメモリデータベースの場合、ハードディスクにデータ領域を持つため、情報処理にタイムラグが生じてしまうのです。
その点SAP S/4 HANAでは、データをすべてメモリ領域内に保管できるため、ハードディスクにアクセスする工程が生じません。つまり、高パフォーマンスを維持したまま、スムーズなデータのやり取りが可能となるのです。
TCO・ストレージコストの削減
インメモリデータベースによる処理の高速化は、TCOとストレージコストの削減にもつながります。この「TCO」とは、コンピューターの導入から運用、廃棄に至るまでに必要な総コストを意味します。
社内システムをSAP S/4 HANAに移行することで、社内全体のPC業務が円滑化されます。これにより、ビジネスプロセスの見直しが簡単になり、エンドユーザーのオペレーションが減少し、結果的にTCOの削減が可能です。また、SAP S/4 HANAの活用によってデータサイズも相対的に小さくなるため、ストレージコストの削減も期待できます。
オンプレミス・クラウド両方から選べる
SAP S/4 HANAはMicrosoft Azureなどにも対応しており、企業のニーズに合わせてオンプレミス・クラウド・ハイブリッドから自由に選ぶことが可能です。
現在、日本企業はテレワークの採用をはじめとする働き方改革を強く求められていますが、同時にマルウェアなど情報セキュリティリスクの増大も懸念されています。そのため、「どのような環境下でシステムを運用するか」の判断は、各企業の業態にも左右される大きな課題となっているのです。
このように不確実性が高まる状況の中、どのような環境においても最適なサポートを可能とする豊富な選択肢を持ったSAP S/4 HANAは、企業にとって力強い存在になり得るでしょう。
PoC環境提供サービス for SAP S/4HANA
2027年に迫るSAP ERP6.0の保守サポート終了に伴い、既存のSAPユーザーはS/4HANAへの移行が必須となるでしょう。三井情報株式会社(MKI)では、多様なソリューションにてシステム移行をサポートするサービス「PoC環境提供サービス for SAP S/4HANA」を提供しています。MKIは、これを通してサービス管理基盤からPoC環境にアクセスし、運用・メンテナンスを実施します。
PoC環境提供サービス for SAP S/4HANAの特長
「PoC環境提供サービス for SAP S/4HANA」は、PoC環境の構築やバックアップ、BASIS管理などさまざまな特長を備えています。
例えばPoC環境の構築においては、AWS環境の構築(VPC構築/EC2インスタンス手配)や、DB(SAP HANA)およびSAP S/4HANAのインストール、AWSへの接続環境の構築など、PoC環境を構築するために必要なタスクを幅広くカバーしています。
またMKIは、SAP Basis・DB・OS・クラウドを総合的に管理。これにより、SAP Basisの運用作業のために、ユーザーを煩わせることがありません。
さらにMKIは、SAPレイヤーも含めた監視やバックアップなど、SAP ERPを安定稼働させるために必要な作業も標準サービスとして提供します。またMicrosoft AzureのCSPサブスクリプションを利用することで、自社で機器を導入したり、入れ替えたりする際の費用が不要となります。機器管理や機器購入にかかるコストを大幅に削減できるでしょう。
そのほか、SAP ERPシステムの運用のために必要な機能を共通で提供しているため、これらを自社で個別に用意する必要がなく、さらなるコスト削減につながります。本番環境についても、Microsoft AzureのSLAに基づいて稼働が保証されるので、安心して運用できるでしょう。
MKIでは、このように万全のサポート体制を構築したうえで、お客様のSAP S/4HANAへのシステム移行を支援しています。自社システムを移行する際は、ぜひ「PoC環境提供サービス for SAP S/4HANA」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
本記事では「SAP S/4 HANA」の概要と、MKIが提供する「PoC環境提供サービス for SAP S/4HANA」の特長について解説しました。インメモリデータベースを持つSAP S/4 HANAは、情報処理能力の高速化をはじめ、業務全体の改善につながるERPです。ぜひ、MKIの万全なサポートのもとで移行してください。