クラウド移行ツールとして注目されているMicrosoft Azure Migrateですが、どのような機能があるのか、また利用金額について気になる方は多いでしょう。
本記事では、クラウド移行ツールMicrosoft Azure Migrateの概要や機能、利用金額について詳しく説明します。自社のシステムのクラウド移行を検討しているIT部門担当者の方は、参考にしてください。
クラウド移行ツールAzure Migrateとは!?
Azure Migrateとは、他のクラウド環境やオンプレミス環境で稼働しているマシンを「Microsoft Azure」に移行する際のサポートツールです。
Azure Migrateでは、Azureに移行した場合の費用や構成を確認できるだけでなく、様々な機能を利用することができます。以前はAzure移行診断サービスの「Migrate Project」としてリリースされていましたが、現在では改良されて「Azure Migrate」として移行全体をサポートするツールになっています。
Azure Migrateの主な3つの機能
Azure Migrateに搭載されている主な機能は、以下の3つです。
- 移行元マシンの検出機能
移行元マシンの検出や移行診断に利用するデータを収集します。 - クラウド移行時のアセスメント機能
Azure移行ができるか否かの判断とコスト算出、適切なサイジングを行います。 - マシンのクラウド移行機能
エージェントレスのAzure移行の実施と移行状況の追跡を行います。
Azure Migrateには検出や準備、見積もりやエージェントベースの評価、移行サポートの機能などがあり、クラウド移行の簡素化に寄与します。
Azure Migrateが提供するサービス
Azure Migrateが提供するサービスは多岐に亘りますが、大きく分けると7つに分類できます。
ここでは、7つのサービスの機能について解説を行っていきます。
Azure Migrate: Server Assessment
Azure Migrate: Server Assessmentは、端的に言うとサーバー評価の機能です。
Azureに移行するための準備として、オンプレミスのVMwareやHyper-V VM、物理サーバーの検出および評価を行うことができます。
Azure Migrate: Server Assessmentによって作成できる評価は、「Azure VM」と「Azure VMware Solution(AVM)」の2 種類です。また、サイズ変更の設定基準として「パフォーマンスベース」と「現状のオンプレミス」の2種類があります。
Azure Migrate: Server Migration
Azure Migrate: Server Migrationは、サーバーを移行する機能です。
VMware VMやHyper-V VM、物理サーバー、その他の仮想マシン、パブリッククラウドVM をAzure に移行します。
Azure Migrate: Server Migrationでは、レプリケーションアプライアンスを使用してマシンをAzureにレプリケートします。レプリケーションアプライアンスが実行するコンポーネントは、構成サーバーとプロセスサーバーの2つです。
Data Migration Assistant
Data Migration AssistantはAzure SQL Databaseに移行する際に、オンプレミスのSQL Serverの影響で不具合を引き起こす可能性の検出に役立つツールです。
移行先のデータベースがSQL Server かSQL Database かによって、Data Migration Assistant を利用した移行の挙動が変わる点に注意が必要です。また、移行後に役立つ新機能やサポートされていない機能などの互換性に関する評価もできます。
Azure Database Migration Service
Azure Database Migration Serviceは、オンプレミスのデータベースをAzureに移行するツールです。複数のデータベースソースからAzureデータプラットフォームへシームレスに移行でき、それを最小限のダウンタイムで実現できるように設計されています。
プロセスはMicrosoft が選択したベストプラクティスを利用して実行されるため、安心して移行処理を行うことができます。
Movere
Movereは、サーバーを評価するSaaSプラットフォームサービスです。Movere では1 日以内にIT 環境全体を正確に描き出すとともに、企業の成長や変革などによって必要となる企業環境の可視性・統制をもたらします。これによって、企業における意思決定の質を上げることが期待できます。
Web App Migration Assistant
Web App Migration Assistantは、オンプレミスのWeb アプリケーションを評価し、Azure App Service に移行する機能です。Azure App Service に移行することで、従来よりも顧客のための価値創造により多くの時間を使うことができるようになり、インフラストラクチャの管理に要する時間と労力を節約することができます。
Azure Data Box
Azure Data Boxは、Azureに格納されているデータや処理中のデータを迅速かつ効率良く移動する機能です。Azure Data Boxを使用することで、ネットワークが混雑している時でも簡単にAzureへデータを移動することができます。すべてのデータはAESで暗号化されており、アップロード完了後はNIST Special Publication 800-88 revision 1 標準に従って、デバイスが切り替えられます。
Azure Migrateで行うクラウド移行の流れ
ここまでAzure Migrateの機能について解説してきましたが、Azure Migrateを利用する前に、クラウド移行の流れについて理解しておくことが大切です。
Azure Migrateを採用してクラウド移行を行う際の流れは、以下のとおりです。
- 移行のための環境準備
- オンプレVMの検出
- 移行適正判定
ここからは、Azure Migrateでクラウド移行を行う際の各工程について、より詳しく解説します。
移行のための環境準備
Azure Migrateを利用するにあたっては、まず以下における環境準備を行う必要があります。
- Azure Migrateと移行後のVMの展開に必要なAzureサブスクリプション
- サブスクリプションの共同作成者権限を持つAzure ADユーザー
- Azure ADにアプリ作成権限を持つAzure ADユーザー
Azure MigrateアプライアンスはHyper-V環境とvSphere環境をサポートしており、それぞれの環境でインターネット接続ならびにMigrateアプライアンス展開のためのリソースを準備しなければなりません。VMwareをAzureに移行する際は、エージェントレス移行方式とエージェントベース移行方式のどちらかを選択します。
オンプレVMの検出
移行のための環境準備が進んだ段階で、オンプレVMの検出を行います。
クラウド移行に際してオンプレミス環境のVM(仮想マシン)を検出し、移行評価に利用するためにMigrateアプライアンスがオンプレVMのメタデータ収集を行います。
オンプレVMの検出時に収集すべきメタデータには、主に「構成データ」と「パフォーマンスデータ」があります。
構成データ
- VM表示名
- メモリサイズ
- ディスクサイズ
- CPUコア数
パフォーマンスデータ
- CPU使用率
- メモリ使用率
- ディスクIOPS
パフォーマンスデータは定期的に収集するもので、収集期間が長くなるほどデータの信頼度が向上します。
移行適正判定
Migrateアプライアンスが収集したメタデータをベースにして、Azureへの移行適正判定を行い、VMのサイジングとランニングコストの算出を行います。
移行適正判定時には、収集したデータからオンプレVMとAzure VMの互換性をリソースサイズやOSサポート状況を基に判定します。
移行可能と判定された場合は、Azureで稼働させることを想定したサイジングとコスト算出が行われます。移行不可能またはデータ不足で判定できない場合は、サイジングとコスト算出は行われません。移行に条件が付けられた場合は、妨害要因の解決案やOSサポート状況の案内が行われます。
Azure Migrateの価格
Azure MigrateやAzure Migrateのツールを利用する際にかかる料金は、サーバーの評価と移行、データベースの評価と移行、Webアプリの評価と移行のすべてが無料で、追加料金がかかることもありません。
ただし、サードパーティ製のISVツールに対する料金が発生する場合があります。依存関係の視覚化は、ログアナリティクスワークスペースをサーバーアセスメントに関連付けた日から数えて、180日間は無料となります。期間が過ぎると、ログアナリティクスの標準料金の適用となるため注意が必要です。
まとめ
Azure Migrateは、他のクラウド環境やオンプレミス環境で稼働しているマシンをMicrosoft Azureに移行するためのツールです。Azure Migrateが提供するサービスは7つに分類でき、それぞれの概要について知っておくことが大切です。
Azure Migrateでクラウド移行を行う流れを理解し、リスクのないクラウド移行を実現しましょう。