クラウド導入後に運用負荷が高まり、運用における課題が増えていることをご存じでしょうか。DX推進の時代の流れを受け、コスト削減や業務効率化の観点からクラウド移行を進めている企業は多いです。しかし、クラウド環境へのシステム移行が増加する中、クラウドサービスの管理・運用における担当者の業務負担が増え、企業の運用負荷が高まりつつあります。本記事では、クラウドサービスの利用状況や企業の運用保守費の傾向について解説し、クラウド運用における課題と負荷軽減策について解説します。
クラウド環境の運用負荷とは?
クラウドサービスの利用状況
近年、多くの企業はクラウドサービスの導入を加速させています。総務省の「令和2年度版 情報通信白書」によると、「クラウドサービスを利用している」または「一部クラウドサービスを利用している」企業の割合は、6割を越えています。前年と比べて、利用率は6%上昇しており、あらゆる分野や業界においてクラウド利用率が増加しています。
IT予算は「増加」・保守運用費は「現状維持」の傾向
企業のIT予算は、DX化を推進する取り組みから近年増加しています。JUASの「企業 IT 動向調査報告書」によると、17年度は前年度と比べて約8%増加しています。しかし内訳を見ると、開発費が13%増であるのに対して、保守運用費は4%増であり、開発費が大幅に増加したのが理由として考えられます。
保守運用費を「現状維持(不変)」と回答した企業の割合は 61%となり、前年と比べて15%も増えています。クラウド利用は増えているため、企業のIT 関連の投資コストは増額しているが、保守運用費においては、現状維持や抑制しようとする流れが強まっているといえます。
保守運用費が維持・抑制されると、クラウド運用において業務負荷が増したとしても、社内のシステム運用を担当する情報システム部門の人員を増やすことができず、担当者一人当たりの運用負荷が増し、結果として企業の運用負荷が高まっている状況へとつながっていきます。
クラウド運用における課題
総務省の通信利用動向調査の「クラウドサービスを利用している理由」をもとに、企業がクラウドを採用する理由とクラウド運用において顕在化した課題について解説します。
総務省の通信利用動向調査によると、企業がクラウドサービスを利用している理由は「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」(45.9%)が最も多く、次いで「場所、機器を選ばずに利用できるから」(43.3%)、「安定運用、可用性が高くなるから」(36.8%)が多いです。
クラウド利用により多大なメリットを享受できる反面、クラウド運用においては顕在化した課題があります。
手軽さゆえに、社内や部門内でサーバーが乱立し、運用できなくなっている
クラウドサービスを利用する最も多い理由は、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」です。クラウドはオンプレミスと比べて、初期投資費用が少なく、気軽にサーバー構築をでき、運用保守が軽減される特徴があります。
しかし社内のクラウド導入が進むにつれ、各部門が独自でクラウド上にサーバーを構築し、運用を開始するケースが増えてきています。結果としてサーバーの稼働台数が増えるため、運用管理が分散し、運用工数が増大してしまう危険性があります。
複数サービスを利用すると管理が煩雑になり、その分対応工数が多くなる
クラウドサービスを利用する理由として、2番目に多いのは「機器を選ばずに利用できるから」です。クラウドは、クラウド事業者が提供する幅広いサービスを、社内で構築する手間やコストを払わずに、必要なときに必要な分だけ利用できる特徴があります。
そのため、クラウドサービスを並列で複数活用するケースも多く、サービス毎に異なる設定や利用方法・運用手順などを覚える手間が発生します。利用するクラウドサービスが多いほど、運用負荷が増加してしまう原因となります。
リモートワークの普及により様々な環境での利用が増え、サポート量が増加している
クラウドサービスを利用する理由として「どこでもサービスを利用できるから」も重要視されています。クラウドはインターネットを経由して、外出先や自宅・遠隔地など、場所を問わずアクセスが可能です。ニューノーマル時代を見据えてリモートワークの普及が進められており、オフィス内外のあらゆる環境でのシステム利用が増え、問い合わせや各種依頼・セキュリティ対策・トラブル時の復旧など、運用担当者の負荷は増える一方となっています。
運用負荷を軽減させるための方法4選
解決策1.専門性の高い領域は外部サービスを利用
クラウド利用を進める企業は、一般的に運用における一部を外部委託しています。特に、セキュリティ脅威からシステムを守るために、継続的に運用を続けるのは負担が大きく、外部サービスを利用することで最新のセキュリティ対策を実現できると考えられています。
Microsoftが提供するAzure Automation サービスを利用すると、データセキュリティとプライバシーを専門とする 3,500 人を超えるセキュリティ体制で外部からの高度な脅威に強い、信頼性の高いシステム構築を支援してくれます。月額従量課金制で初期費用は必要なく、いつでも解約できるので、運用工数の削減に効果的であるため、検討してみるとよいでしょう。
解決策2.運用プロセスの自動化
運用業務の中で、アカウントの管理や各種サーバの設定・稼働状況の点検などは定常業務といわれます。定常業務は、頻繁に実行する必要があり、時間がかかる上に間違えやすいため、運用負荷を高める要因となります。
Azure Automation サービスは、クラウド上で発生するさまざまな定常業務を自動化してくれる機能があります。機能を活用すると、汎用的な運用プロセスを簡単な手順を踏むだけで自動化でき、運用にかかる工数を削減できます。担当者を他の優先度の高い業務に割り当てることができるため、より生産性の高い運用を実現できます。
解決策3.利用しているクラウドサービスの棚卸
クラウドサービスは代表的なものとしてAWSやAzure・GCPなどが提供されており、企業や各部門・業務に応じて異なるクラウドサービスを利用している場合、個々の業務は効率化できても、全体の効率化が改善できないケースが多いです。
業務の効率化に取り組むうえで、自社のクラウド運用のルールを策定し、ルールに沿ってクラウドサービスの取捨選択を行うといいです。
具体的には、情報処理推進機構(IPA)発行の「中小企業のためのクラウドサービス安全利用の手引き」を参考に、以下のポイントでクラウド運用におけるルールを策定します。
- 利用範囲の明確化
- 業務にあったクラウドサービスの選定
- データの重要度の確認
- セキュリティルールとの整合性
特にビジネス環境の変化に対応できるように、少人数で運用できる基盤づくりが重要となります。複数のクラウドサービスを利用する場合でも、1つの運用ルールを基準とした利用が大切です。
解決策4.フルマネージドのクラウドサービスの採用
「システム運用の定常業務だけで手一杯であり、突発的に発生するトラブル対応の人材を確保できていない」「本来行いたい提供サービスの運営に工数をかけられていない」など、運用業務の課題をまとめて解決したい運用担当者は多いです。
フルマネージドサービスを利用すると、クラウド事業者がサーバーの構築や監視・障害対応・セキュリティ対策など、サーバー運用に関するすべての作業代行を提供してくれるため、運用業務の手間を大幅に削減できます。
また、利用するサービスによって差はありますが、負荷の大きいセキュリティ対策やトラブル時の対応などの大半を提供側が担ってくれるケースもあり、クラウド事業者の責任範囲が大きい形態を利用すると、運用負荷を大幅に軽減できます。
サービスを選ぶ場合は24時間365日監視を行なってくれるか、クラウド事業者が責任の大部分を担ってくれるか、などをポイントとして検討してみてください。
まとめ
企業の運用負荷が高まる背景として、クラウド導入後の運用における担当者の管理工数の増加が理由として挙げられ、早急な対策を練らなければ運用負荷は増すばかりとなります。
ビジネスにおいて必要不可欠な基幹システムの継続の役割を担う運用担当者の負担を少しでも軽減するため、Azureが提供する「Azure Automation サービス」などのツールを活用して、より効率的な運用方法を検討してみてください。