オンプレミス(On-premise/社内で情報システムを主体的管理)からクラウド(Cloud/インターネット経由で利用するリソース)への移行が加速しています。なぜ、多くの企業がクラウドによる情報システムの構築を進めているのでしょうか?
<情報システムをクラウドへ移行するメリット>
- 情報システムに必要なリソースを資産として保有するのではなく、サービスとして利用することで費用対効果を高められる
- 情報システムに必要な開発環境を素早く構築(インスタンス)できるため、調達にかかるコストを削減できる
- 情報システムを安定的に稼働させるための物理メンテナンスが不要になるため、開発やサポートに集中できる
- 情報システムのデータが社内やデータセンターではなく、クラウドベンダーで管理されるためセキュリティ強化につながることが多い
- オフィスやデータセンターが被災してもデータは他の場所に保管されているため、事業継続計画(BCP)の一環として取り組める 他
このように、オンプラミスからクラウドへ移行することで様々なメリットが享受できることから、クラウドファーストで移行を積極的に検討する企業が増えています。そこで本記事では、オンプレミスからマイクロソフトのクラウドプラットフォーム、Microsoft Azureへ移行するための手順をご紹介します。今後オンプレミスからクラウドへの移行を検討されているのならば、ぜひ参考にしてください。
オンプレミスからAzureへの移行、大まかな3つのプロセス
まず、オンプレミスからAzureへの移行において把握しておきたいのが3つのプロセスです。それが「1. 事前準備」「2. 計画と実行」「3. 移行本番への切り替え」です。それでは、最初のプロセスとなる「1. 事前準備」から解説していきます。
事前準備
手順1. クラウド移行のゴールを決める
クラウド移行の最初の手順として行うべきことは、移行にさいしゴールを決めることです。「なぜオンプレミスからクラウドへ移行するのか?」「何をどこまで移行するのか?」「いつまでに移行を完了させるのか?」これらのゴールを具体的な数値とともに決定し、さらにKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)を設定します。
手順2. 情報資産の棚卸しを行う
次に、実際にクラウドへ移行する情報システムのドキュメントやソフトウェア資産などを把握していきます。サーバーや情報システムへアクセスするためのログイン情報や秘密鍵などは見落としがちなポイントなので注意しましょう。
それと並行し、情報システム関係者とのコンミュニケーションが必要とされます。社内関係者だけでなく、外部委託先やAPI等で連携している外部サービスがある場合は、その担当者も含めて移行に関する各種業務調整などを行いましょう。
手順3. Azureの移行対象を選定する
移行対象となる情報システムが一部なのか全部なのかにより、移行方法は異なります。複数の情報システムを移行する場合は優先的に移行する順序も検討しなければいけません。優先度の決定は業務課題の有無、ビジネスへの影響度、担当情報などの切り口え比較し、整理しましょう。ユーザーが少ない情報システムからPoC(Proof of Concept/概念実証)を兼ねて移行していくのも良いでしょう。先行事例を持つことで、大規模な情報システムを移行する際の注意点が把握できます。
手順4. 実機調査を行う
情報システムに必要なCPUやメモリなどのリソースを取り急ぎ用意したのは良いものの、管理ドキュメントが更新されていなかったことで実機のOSやミドルウェアが現行よりも新しかったというケースも少なくありません。現時点での情報システム環境を把握するためのドキュメントを使用しつつ、実機の状態を構成上の正しい数値として抑えるのがベターとなります。
Azureへの移行、計画と実行
手順5. Azure移行の方針を決める
オンプレミスからクラウドへの移行に際し準備と課題の整理が完了したら、各情報システムでAzureへの移行をどう行うかの方針と計画を固めていきます。例えば、プライベートIPアドレス帯は既存の情報システムと別にしておき、専用線やVPN通信が必要になることを考慮して事前に用意しておくなど、幅広い方針を決定しましょう。
手順6. Azureへのデータ移行を考える
データベースに格納されているデータやウェブコンテンツ、各種ログ情報などオンプレミス環境に分配管理されているこれらのデータを、いつどのように移行するかを検討します。移行すべきデータを全て最新の状態のままAzureへ移行するのが最終的な目標ですが、情報システムを切り替える以外にも、本番と同等のデータを移行しなければいけないタイミングがあります。このため「どのデータをいつ、どのように移行するか?」という視点から整理しておきましょう。
手順7. Azureへの移行にあたりマイルストーンを設定する
オンプレミスからAzureへの移行にあたり、人まとまりの作業セットに分けてマイルストーンを設定することで全体に見通しが立てやすくなります。クラウド移行はイレギュラーな事態が発生しやすいため、予定通り進んでいることよりも作業がどこまで終わっているのかを常に確認しながら移行を進めることが大切です。
手順8. 移行対照表を作成してタスクの洗い出しをする
現行の情報システムと移行後で何がどう変わるのかを正確に把握するために、設計や移行作業を実施する前に移行対象表を作成し、まとめると便利に扱えます。IPアドレスやOS・ミドルウェアなどの移行アチ商標を統合・破棄も含めて用意しましょう。
手順9.移行リハーサルによる移行作業準備
移行手順が確立したら移行リハーサルを実施しましょう。目的は段取り上の抜けや漏れを発見するためで、オペレーションについても見積もり範囲内で収まるかどうかなど、計画しただけではわからない想定外の事象を洗い出せます。
Azure移行本番への切り替え
手順10. 担当者と連絡体制を決めておく
情報システムの切り替えと実は、連絡体制の構築が重要になります。システム切り替え作業に関わる担当者の連絡先や連絡手段などを事前にまとめておきましょう。各担当者の連絡が取りにくい時間帯なども考慮する必要があります。
手順11. 移行時体制の構築
さらに、具体的な移行時体制を構築します。連絡を取り合うタイミングと判断ポイントを消えておき、切り戻しのタイミングと基準設定が重要になります。
手順12. 移行直前のポイント
Azure移行直前のポイントとして注意したいのが、イレギュラーな事象が起きた時の対応シナリオを用意しておくことです。円滑な移行作業のために連絡体制と定期的な連絡ポイントを適切に設定すること。それと、移行作業が完了した後のバックアップ体制を踏まえて要員計画を立てておくことです。
いかがでしょか?以上の手順を持ってAzureへの移行を検討することで、効率的かつ実態に即したクラウド移行ができます。この機会に、オンプレミスからAuzreへの移行をぜひご検討ください。