TeamsおよびOffice 365は、多くの組織で活用されている業務アプリケーションです。テレワーク需要の拡大によって、Teamsを積極的に活用する企業が増えました。TeamsとOffice 365を使って生産性を向上させるためには、ネットワークの品質がポイントになります。快適でセキュアな環境を構築することは、IT部門の重要なミッションといえるでしょう。
米国Microsoftからパートナー企業として認定を受けている株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は、Office 365の快適な通信環境を実現するために、クラウドエクスチェンジサービスを提供しています。導入メリットを中心に概要を解説します。
Office 365のためのダイレクト接続サービス
Office 365の最適なネットワークを設計するためには、数多くの課題を考慮する必要があります。たとえば、ExpressRoute for Office 365ではMicrosoftの承認手続きが必要です。承認が得られないために、利用を断念しなければならない場合も考えられます。
ところが、クラウドエクスチェンジサービスでは承認手続きが不要です。したがって、業種や用途に関わらず、あらゆる企業や公共団体で利用できます。国内に9か所のアクセスポイントがあり、主要キャリアのアクセス回線に対応しています。マルチキャリアを構成した信頼性の高いネットワークを構築可能なことがメリットです。
さらにクラウドエクスチェンジサービスの特長を2つの側面から整理します。
高品質のネットワークでTeamsを快適に、Microsoftネットワークに最適
Teamsのビデオや音声会議はリアルタイムでコミュニケーションを行うため、遅延が少ないこと、安定した通信環境であることが条件になります。クラウドエクスチェンジはExpressRoute同じように、Microsoftのネットワークとダイレクトに相互接続するサービスです。したがって、低遅延とゆらぎの少ない通信環境を実現できます。
クラウドエクスチェンジサービスはMicrosoftグローバルネットワークだけに接続が可能であり、その他のグローバルネットワークには到達性がありません。Microsoftネットワークに対してはNAPT(Network Address and Port Translation)で変換した後に接続されます。企業のポリシーに合わせて、マネージドファイアウォールサービスの提供のオプションもあります。
Microsoftによる高い評価
IIJの提供するサービス全般にいえることですが、エクスチェンジサービスも高品質が特長であり、その品質はMicrosoftの認定により裏付けられています。
2019年7月18日には「Microsoft Azure Network MSP」で認定されました。これは米国Microsoft社のAzure のネットワークサービスに特化した認定プログラムであり、独自の高品質なマネージドサービスを提供する事業者を認定するものです。
また、2020年8月27日には、米国Microsoft社により「Microsoft Azure Expert MSP」の認定を受けています。Azureパートナー認定プログラムとしては最高位であり、スペシャリストとして実績やノウハウを総合的に評価されました。第三者機関による厳しい監査を通過して合格することが必要になる認定です。
Microsoftのパートナー企業は、世界に30万社以上あります。しかし、Azure Expert MSPの認定を受けたパートナーは約50社に過ぎません。国内では、富士通株式会社、株式会社FIXER、ソフトバンク株式会社、そしてIIJの4社です。
加えてMicrosoft Azure Expert MSP とMicrosoft Azure Networking MSPの両方の認定を受けているパートナーは世界で4社、国内では IIJ とソフトバンクだけです(2021年1月現在)。
導入事例と実績
クラウドエクスチェンジサービスは、数多くの企業に導入実績があります。ニーズで分類して事例を紹介します。
ビデオ会議の品質向上、大規模なクラウド移行戦略を目的とした事例
人材系企業(帯域数300Mbps、従業員700人)では、ビデオ会議が増加したことからゲートウェイの上限帯域のボトルネックに達したことが課題でした。しかし、クラウドエクスチェンジサービスの導入により、オフィス以外の場所からも快適なビデオ会議を実現しています。
IIJのサービスには、大規模なネットワークに耐えられる信頼性があります。電力系企業(帯域数500Mbps、従業員2,600人)がIIJのサービスを選んだ理由は、アクセス回線をNTT系と電力系によって冗長可能なことでした。さらにバックボーンの堅牢性、国内トップクラスの実績を評価して、IIJのサービスを導入しました。AWS/Azureの接続に関しても、IIJプライベートバックボーンで統合しています。
全システムをクラウドに移行していくことを見据えて各種IIJサービスを選定したのが、金融系企業(帯域数200Mbps、従業員2,000人)です。ExpressRoute接続サービス、クラウドプロキシサービスを組み合わせることにより、さまざまなクラウドに対する快適でセキュアな接続を利用しています。
Office 365のネットワーク環境を向上させた事例
公共団体(帯域数100Mbps、ユーザー数1,800人)では、Office 365向けのExpressRoute利用時に煩雑な承認プロセスを回避するため、承認不要のOffice 365ダイレクト接続サービスとしてクラウドエクスチェンジサービスを選定しました。クラウドプロキシサービスと併用することにより運用負荷を軽減しています。
ExpressRouteによるOffice 365向けのダイレクト接続を希望していましたが、Microsoft社からの承認を得ることができずに断念したのが、製造系企業(帯域数100Mbps、ユーザー数500人)です。承認が不要でOffice 365向け接続サービスを利用できることから採用しました。
情報系企業(帯域数50Mbps、ユーザー数100名)では、Office 365向けダイレクト接続はもちろんWANなど多様なサービスをワンストップで利用できることから導入しました。リセラーとして、エンドユーザ向けにOffice 365の導入支援とともにダイレクト接続を提供しています。
IIJの各種サービス統合による事例
物流系企業(帯域数100Mbps、ユーザー数 1,000人)では、WANなど各種ゲートウェイをIIJのバックボーンに集約できることから選定しました。デジタルワークスペースの実現に最適なIIJ Omnibus(オムニバス)サービスを中心に、WAN、Office 365向けのダイレクト接続、インターネット接続すべてをIIJプライベートバックボーンに統合しています。
同様に、メディア系企業(帯域数400Mbps 、ユーザー数1,300人)においても、各種ゲートウェイをIIJのバックボーンに集約して、運用負荷の軽減と各種ゲートウェイの統合を実現しました。統合したのは、リモートアクセス、Office 365向けダイレクト接続、インターネット接続です。
IIJが提供する各種サービスと連携可能
事例でも紹介しましたが、クラウドエクスチェンジサービスは、各種IIJサービスと連携することにより、Office 365をより快適かつセキュアな環境で利用できます。
IIJクラウドプロキシサービスとの連携
Webプロキシがある環境では、Office 365導入時にURL変更によるプロキシ運用やプロキシ自動設定(PAC)ファイル運用が発生します。クラウドプロキシサービスではOffice 365の宛先情報をMicrosoftから自動的に取得して更新します。利用する端末からクラウドプロキシサービスを指定するだけでOffice 365の通信振り分けを実現可能です。
クラウドエクスチェンジサービスでOffice 365と判別された通信は、プライベートバックボーンサービスのルーティングにより、インターネットあるいはクラウドエクスチェンジサービスのいずれかに自動的に振り分けられます。Facebookなどの通信は、あらかじめフィルターで設定して、企業のプロキシ経由の通信が可能です。
IIJフレックスモビリティサービスとの連携
自宅や外出先からのリモートアクセスによるOffice 365の利用が増加すると、移動中や混雑した場所の利用時にVPNが切断されたり、TeamsのWeb会議で映像や音声が遅延したり、通信品質の低下が生じることがあります。
IIJフレックスモビリティサービスは、従来のTCP方式ではなく独自のUDP 方式をVPNプロトコルとして採用し、暗号化通信を行います。したがって、パケットを再送したときの遅延や回線の品質劣化したときのパケットロスの影響を抑え、Teamsを使った音声と映像の会議、仮想デスクトップなどを快適に利用できます。
さらに自動VPN接続やきめ細かいポリシー制御によって、セキュリティを向上させます。デバイス認証に対応しているため、無許可の端末からの接続を禁止することが可能です。アプリケーションを改修することなく、アプリケーションごとのVPN制御(スプリットトンネル)を簡単に実現します。
まとめ
テレワークの需要が高まり、社外でTeamsおよびOffice 365を利用する機会が増加すると、通信品質の維持とセキュリティの強化を考慮しなければなりません。IIJのクラウドエクスチェンジサービスは信頼性が高く、さまざまなIIJのサービスを統合して利用できます。遅延のない快適な通信環境の構築は、ビジネス加速させるための基盤として重要です。