Power BIは、Microsoft社が力を入れているデータ分析プラットフォームです。その名の通り、BIツールとしての機能に特化しながら、Office製品やAzure製品との高い親和性を有します。企業経営において、蓄積されたビッグデータの活用は必要不可欠なものになってきています。BIツールの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
そもそもBIツールとは?
BIとは、ビジネスインテリジェンス(Business Intelligence)の略で、企業に蓄積されるデータを総合的に把握し、そのデータを使って市場やサプライの変化に適応していくためにさまざまな角度から分析を行い、経営判断に用いるという意味で使われています。
BIのためのデータ活用のプロセスでは、経営活動の中で収集したさまざまなデータが保存され、蓄積されていきます。ユーザーは保存されたデータにアクセスして、分析を開始し、ビジネス上の質問に対する答えを得ることができます。
例えば、使い慣れたExcelなどで分析を行うことも可能ですが、IT化が進んだ昨今では企業内のデータは膨大で、複数のサーバーやデータベース上に散在し、集計して分析するのは容易ではありません。データ収集と分析、結果のアウトプット部分を支援するのが、BIツールと呼ばれる、BIを支援する機能に特化したソフトウェアなのです。
2022年2月現在、多くの企業でBIツールを利用し、経営分析や売上分析だけでなく、人事データ、予実管理、帳票作成など幅広く活用されています。企業全体や部門ごとの業務分析をし、分かりやすいレポートにより可視化することで、経営層やマネージャー層の経営判断を支援するために役立てています。
Power BIの特長
Power BIの特徴のひとつは、セルフサービスBI である点です。ビジネスパーソンなら馴染みのあるExcelに似た操作性で、複数のデータソースから自分に必要なデータだけを参照し、分析することができます。また、Office製品との汎用性が高く、Excelファイルをデータソースにすることも可能です。
あらゆるデータの分析ができる
Power BIでは、社内のオンプレミスのデータだけでなく、AzureなどSaaSやクラウド上のデータをひとつに集約し、分析対象として加工できるという特徴があります。さらに、Excelファイルからデータをインポートすることも可能です。過去に作成したデータも分析対象として使用することができ、もう稼働していない旧システムのデータを、現在のデータと並べて可視化するといった使い方もできます。
例えば、自社製品型番をキーにして、オンプレミスの販売管理システムにある売上データと、クラウド上にあるMA ツールに蓄積されたリード、問合せ情報と紐づけ分析することで、販促活動や新製品開発の方向性を決めるなど、さまざまな検討材料として利用できるようになるのです。
プログラミングの知識が必要ない
ビッグデータの分析を行うには、データサイエンティストなど高度な専門スキルが求められ、少なくても多少のプログラミング経験は必要と考えられています。このため、IT部門の人材不足などにより、BIツールの導入に踏み切れない企業も多かったのではないでしょうか。
セルフサービスBIであるPower BIは、従来のBIツールと違い、プログラミングの知識がなくても直感的に作業できるという特徴があります。もともとPower BIは、Excelのアドイン機能として開発されたものです。その後BI製品の需要が高まっていく中、今のサービスに進化しました。Excelがベースになっているため、専門知識を持たない担当者でも気軽にデータ分析やレポートの作成を行うことができるということで、導入を検討する企業が増えています。
クロスプラットフォームでの作業
ハードウェアやOSなどの制限なく、クロスプラットフォームでの作業が可能です。Windows PCだけでなく、iOSやAndroid端末から情報を共有することができ、環境を問わずに作業を継続できるのはもちろん、複数ユーザーでデータを共有することもできます。
作成した分析データは、スマートフォンやタブレット端末でも閲覧できるため、移動中や、出張先でも簡単に閲覧できるというメリットがあります。デバイスにあわせて画面サイズを自動調整するレスポンシブデザインに対応しているため、常に最適な表示でデータ閲覧が可能です。データを確認するために帰社したり、顧客への回答が遅れたりといった課題を解消し、また、複数端末を持ち歩く必要もなくなるのです。
Azureとの連携
Power BIのメリットであり特徴として、Azureとの連携があげられます。データ基盤として優秀なクラウドサービスであるAzure SQL DatabaseをPower BIで分析できるのはもちろん、Azureの多様なサービスのデータは、すべてPower BIで分析することが可能です。AzureとPower BIには相互接続が組み込まれているため、あわせて利用することでBI作業効率が大きく向上します。
またAzureのPower BI Embeddedを活用するとPower BIで得た分析結果を社内アプリケーションやポータルなどに埋め込むことが可能です。レポート、ダッシュボードをいつでも従業員の目に触れるよう設置しておくことで、デバイスの種類を問わず、どこからでも必要なデータにアクセスし、情報を共有することができるようになります。
Power BIの活用例
ここからは、実際にPower BIを導入し活用している事例を紹介します。データ基盤としてAzureを選択し、Power BIと連携することによるメリットや、Power BIによるレポート作成業務の効率化など、参考になるのではないでしょうか。
JTB コミュニケーションデザインでの活用例
社内外のコミュニケーション、社員のモチベーションを高めるための分析と提案を手掛けるJTBコミュニケーションデザインでは、収集したデータの分析と結果のレポート化にPower BIを利用して大きな成果を得たとしています。
調査結果を製本し、提供してきた従来の方法では、顧客ごとにほぼスクラッチに近いレポートを作成するために、多くの時間と社内リソースが必要でした。また、提供を受けた顧客側では、膨大なレポートのどこを見てどんな施策をとるべきか、時間をかけて読み解くしかありません。
BIツールを採用してレポートと管理権限を顧客に付与すれば、顧客自身がドリル ダウンしながら、独自の角度、視点でデータを参照し、洞察を得ることができるようになります。多くのBIツールを比較した同社では、Azure Active Directory Premium (AADP) とシームレスに連携することができるPower BIを選定しました。この AADP では、GUI ベースで権限を設定することが可能で、案件単位で、ダッシュボードの構築から顧客の権限付与、ダッシュボード環境の提供することができるのです。
機密性の高い情報をレポート化してクラウド上に展開するため、セキュリティに関しては十分な配慮が必要ですが、Microsoftは ISO 27001 などのセキュリティ認証を取得している他、セキュリティ文書に必要な項目を明確に公表しているため、すぐに対応することができます。
Power BIの導入により、社内の工数負荷を削減し、尚且つサービスとしての有用性も高めることができた成功事例といえます。
花王グループカスタマーマーケティング株式会社での活用例
データ分析基盤として、フルスクラッチで構築したオンプレミスのシステムを運用してきた花王グループカスタマーマーケティング株式会社では、今後SNSデータなども含め取り扱うデータが増えていくことで、オンプレミスでの対応に限界を感じ、データのクラウド移行を推進しました。
Azureをデータ基盤に選択したことで、これとシームレスに連携できるPower BIを導入し、大量データ処理に応えるパフォーマンスと拡張性を得ることができました。
小売業への提案を行う営業担当ごとに、特定の顧客データのみを閲覧可能にするなど、詳細なセキュリティ設計ができる点は重要なポイントとして評価されました。オンプレミスで次期システムを構築した場合と比較し、約半分のコストで導入することができています。
まとめ
Microsoft Power BIを導入することで、データ分析と、結果の見える化について企業が抱える課題解決への道が大きく開けるでしょう。
これからさらに需要が高まっていくBI活用を検討するうえで、導入しやすくセキュリティにも優れたMicrosoft AzureとPower BIの組み合わせをぜひ検討してみてはいかがでしょうか。