IoTを利用して新しいビジネスを創出するには、データの取り扱いが重要です。どのようなデータを取得して、どのように解析・活用するかによって、ビジネスモデルが大きく変化します。そこで本記事では、IoTデータの取り扱いにおける基本的な知識や、おすすめのツールなどについて解説します。
IoTデータとは
「IoTデータ」とは、その名の通りIoT製品が取得したデータを指します。そもそも「IoT製品」とは、「Internet of Things(モノのインターネット)」と呼ばれる技術が用いられた製品群の総称で、具体的にはエアコン・冷蔵庫・カメラなど特定の機能があるモノに無線SIMを搭載し、インターネット通信ができる状態にした新しい製品のことです。
通常の製品がIoTとして機能すると、外出先からON/OFFを切り替えたり、現在の製品の状態を外出先から確認したりすることが可能となります。そして、これらIoT製品が取得した、インターネット上のサーバに送るデータのことをIoTデータと呼びます。
製品によって取り扱うIoTデータはさまざまで、温度・湿度・振動・位置情報・ログなど多岐にわたります。これらを収集・分析して有効活用し、日々の暮らしを豊かで便利なものに変えていこうというのが、IoTの目的とするところです。
IoTデータを活用するには
ここでは、IoTデータが活用される手順について解説します。
データ収集
IoTデータの収集は、製品に組み込まれたセンサーや動作などによって行われます。たとえばIoTエアコンの場合、温度・湿度・利用データなどを取得します。まず、エアコン内部にあるセンサーによって温度・湿度を収集し、現在の状態が人間にとって快適かどうかを分析します。快適でないと判断した場合は、自動で暖房や冷房が作動するように設定できるのです。
また、作動した時間を収集することで月々の電気代を算出し、わかりやすいようにレポーティングすることも可能です。このようにIoT製品では、収集したデータをもとに新しい商品価値を作り出します。
データ蓄積
IoT製品が収集したデータは、インターネットを介してクラウド上のデータベースサーバに集められます。データベースサーバとは、いつでも取り出せるように整理されたデータの棚のようなものです。ここにデータを蓄積しておくことで、いつでも取り出して使用できるようにします。
また、データベースといえば多くの場合、縦横のアーキテクチャーを採用した「リレーショナルデータベース(RDB)」がイメージされます。しかし、リレーショナルデータベースには、テキストデータなどの簡単なデータ以外の取り扱いが難しいという問題があります。
特にIoTでは、テキストデータ以外にもさまざまなデータを取り扱うため、リレーショナルデータベース以外の「NoSQL」など、半構造化データを取り扱えるデータベースを利用するのが一般的です。
データ加工
IoT製品が収集したデータは、可視化や分析がしやすいように加工されます。ここでは、わかりやすい例として、IoT製品に特化した「Microsoft Azure IoT」に付属しているサービスから、「Stream Analytics」「HD Insight」「Data Factory」の3つを見てみましょう。
Stream Analyticsは、受信したデータをリアルタイムで処理して、そのままPower BIなどに出力できるサービスです。処理にはクエリ言語を使用します。ランダムに送信されたデータをクエリ言語で処理することで、欲しい情報だけをふるいにかけて利用できるという仕組みです。
HD Insightは、データを分散処理するためのサービスです。Apache Hadoopとの互換性があり、データの高速処理に向いています。またData Factoryは、ほかのサーバやデータを統合して、1つの処理としてまとめあげるサービスです。IoTデータは、このようにさまざまな方法で加工したうえで使用します。
データ分析
IoT製品におけるデータ分析は、一番重要なポイントといっても過言ではありません。というのも、この工程で導出された結果次第で、成果が大きく変わってくるからです。
従来、データ分析は人の手作業で行われるのが一般的でしたが、現在ではAIや機械学習を用いるケースがほとんどです。たとえば、有名なソフトウェアとしてMicrosoftの「Power BI」があります。これは、抽出したデータをわかりやすいようにレポートでまとめてくれるツールです。
また、先述したAzure IoTには、「Azure Machine Learning」という機械学習ソフトも付属しています。機械学習は入手したデータから法則性を見つけ出して、新たな洞察を提供してくれます。このように、さまざまな方法でデータを分析することで、ビジネスに落とし込んでいくわけです。
IoTのクラウドサービスでは、AIや機械学習のサービスを提供していることも少なくありません。業務改革や新たなビジネスチャンスの創出を図りたい場合は、こうした分析ツールを利用するのもよいでしょう。
IoTデータの活用事例
では実際に、IoTデータはどのように活用されているのでしょうか。以下では、IoTデータの具体的な活用事例をご紹介します。
消費電力の可視化と警告
近年、ビルやマンションなどの設備管理において注目を集めているのが、IoTを利用した「スマートビルディング」です。これはIoTの導入により、設備管理の自動化や省エネルギー化を実現した建物のことです。
現在では、ビルやマンションのスマート化に役立つサービスが数多く登場しています。照明・空調の自動制御や、駐車場・トイレ・会議室の空き状況のモニタリングなど、設備の稼働状況をアプリ1つで把握・管理できるものもあります。
また、設備内の電力使用量の計測・可視化も可能です。リアルタイムの電力使用状況をグラフで表示し、いつでもアプリから確認できるようにしたり、電力使用量が設定値に接近あるいは超過した際に警告アラートを発したりなど、多彩な機能によって設備管理の効率化を支援します。
交通状況のモニタリング
道路上にあるカメラやセンサーを通じて、現在の道路の混雑状況をデータ化し、地図上に可視化するサービスがあります。これはカーナビの渋滞予測と似ていますが、データが蓄積されれば、渋滞しやすい箇所や時間帯ごとの交通状況の予測なども可能となります。
また、イスラエルの新興企業であるValerann社では、道路に埋め込むタイプの監視システムを開発しています。これには複数のセンサーが埋め込まれており、重量や温度などさまざまなデータを取得することで、走行中の車両から事故状況、落下物の有無、雨や雪といった天候状態に至るまで細やかな監視を実現します。さらに、集められたデータをグラフ化して、道路状況をリアルタイムで把握することも可能です。
タイヤにセンサーを設置し燃費向上
車の事故でよく見られるのが、タイヤのバーストです。特に高速道路ではタイヤのバースト件数が高く、横転によって死亡者が出る可能性もあるため重大な問題となっています。そこで、こうしたリスクを減らすべくタイヤ製造のPirelli社が開発したのが、IoTシステムを活用した工業用タイヤ「Cyber Fleet」です。
タイヤに搭載されたセンサーによって、空気圧・走行距離・走路の種類・負荷といったさまざまな情報を収集します。これによりタイヤの状態がすぐにわかり、事故防止だけでなく燃費の向上につなげることも可能です。
長距離を運搬するトラックなどは、適切な整備を行わないと事故を起こしてしまう可能性があり、1つの事故が大きな問題に発展するおそれもあります。このタイヤは、そうした問題を未然に防ぐための安全対策に効果的なIoT製品です。
IoTデータの分析方法
IoT製品を活用するにあたって重要なのは、サーバの選定と分析手段です。リアルタイム性が高く機密性のあるデータは、安全かつ利用しやすいサーバで取り扱わなければいけません。また同時に、収集したデータを有効活用するためには、BIツールやAIなどの利用も不可欠です。
そこでおすすめなのが、先ほどご紹介したAzure IoTです。Azureはクラウドサービスなので気軽に利用でき、IoTに関連したサービスも多数付属しています。データ加工ではリアルタイム処理やデータ統一、高速分散処理など、データ分析ではBIツールや機械学習ソフトなどが利用できます。IoT活用に資する多くの機能を利用できるため、新しいビジネス展開を考えるには最適なツールといえます。
まとめ
IoTをビジネスに活かすには、データの収集・蓄積・加工・分析が重要です。特にIoTデータは、通常のデータと扱いが異なる場合もあるため、「Microsoft Azure IoT」のようなIoT活用に特化したサービスの導入がおすすめです。Azureは豊富な機能を備えているので、さまざまなビジネスに応用が利くのも魅力です。