VDI(仮想デスクトップ基盤)環境を構築するにあたり、多くのユーザーに選ばれているのがVMware HorizonやCitrix Virtual Apps and Desktops(旧称:XenApp & XenDesktop)です。本記事では、VMware Horizonをマイクロソフトが提供するIaaS/PaaSであるMicrosoft Azureで展開できる、VMware Horizon Cloud on Azureとはどのようなサービスなのかをご紹介します。
クラウドへのニーズが急速に高まる中、VDI環境もクラウドで構築しコスト適正化や利便性向上を目指す企業が増えています。その中でVMware Horizon Cloud on Azureはどのような価値を提供するのでしょうか?マイクロソフトが提供するDaaSであるAVD(Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop))との違いと合わせてご紹介します。
VMware Horizon Cloud on Azureとは?
そもそも、VMware HorizonはどのようなVDI製品なのでしょうか?まずはその特徴を簡単にご説明します。VMware Horizonの特筆すべき特徴を3つ挙げると、「VMware vSphere」「ストレージアクセラレータ」「リンククローン」です。
VMware vSphere
VMware HorizonはVMware vSphereを基盤として堅牢で可用性の高い仮想デスクトップ環境が構築できます。その中の重要な仕組みがDRS(Distributed Resource Scheduler:分散リソーススケジューラ)です。特定の仮想デスクトップが急速なCPU・メモリ消費を始めた場合、VDI環境を監視しているDRSは当該仮想デスクトップを他のホストサーバーに移動させ、自動的に全ノードでの負荷分散を図ります。
ストレージアクセラレータ
始業時にユーザーが一斉ログインする(ログインストーム)際、処理能力を超えたI/Oが共有ストレージに集中することから仮想デスクトップがいつまでも立ち上がらない問題が発生します。これを解決するのがストレージアクセラレータです。ホスト上のメモリをキャッシュとして利用し、ピーク時のRead I/Oを削減する機能です。その結果、ストレージの負荷を軽減します。
リンククローン
リンククローンは、マスターイメージとなる仮想デスクトップのテンプレートと、ユーザーデータなどの差分データをリンクさせて個別の仮想デスクトップにする機能です。クローン方式に比べるとストレージ容量を大幅に削減でき、マスターイメージに対してパッチを一度適用すればそのリンククローンとして運用しているすべての仮想デスクトップのイメージを一斉に入れ替えることが可能です。
簡単に特徴的な機能をご紹介しましたが、VMware Horizon Cloud on Azureとは要するに、以上のVMware Horizonが持つ特徴をそのままにMicrosoft Azure上に展開できるサービスです。
VMware Horizon Cloud on Azureのメリット
では、VMware Horizon Cloud on Azureとしてユーザーが得られるメリットとは何でしょうか?
メリット1. 独自画面転送技術による快適な操作性
クラウド型VDIのパフォーマンスを下げる根源はネットワークの遅延が多いことは周知の事実でしょう。VMware Horizon Cloud on AzureはVMware Horizonで長年使用されてきたBlast PCoIPという画面転送技術を採用し、Wi-Fiやモバイルルーターからでも快適なデスクトップ操作を実現します。
メリット2. 無停止運用可能なワンクリックアップデート
本来VDI環境は、いったん構築するとシステムを止めることが難しいためベンダーのアップデートプログラムへの対応が難しいという運用問題がありました。一方、VMware Horizon Cloud on AzureではすべてのコンポーネントがMicrosoft Azure上で運用されるため、クラウド特有の可用性と拡張性を活用し、ポータル画面よりワンクリックでアップデート作業が完了します。しかも、作業中にシステムを止めることもありません。
メリット3. ビジネスに合わせた柔軟なライセンス体系
VMware Horizon Cloud on Azureを利用するのに必要なライセンスはVMware HorizonとMicrosoft Azureの使用量のみです。VMware Horizon Cloud on Azureでは同時接続数や利用ユーザー数での課金ができ、Microsoft Azureは使ったん分だけの従量課金制なのでトータルコストを削減できる可能性が高くなります。
AVD(Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop))との違い
VMwareがVMware Horizon Cloud on Azureを提供する一方で、マイクロソフトではAVD(Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop))というDaaSを提供しています。ちなみにDaaSとは、VDI環境をネット経由で提供するクラウドサービスのことです。
AVDの最たる特徴は、マイクロソフトが直接的にVDI環境をネット経由で提供するということです。VMware Horizon Cloud on Azureとの決定的な違いはここにあります。VMware Horizon Cloud on Azureを利用するにはVMware HorizonのライセンスとMicrosoft Azureの従量課金、さらにデスクトップ環境を構築するためのWindowsライセンスが必要になります。つまり、2つのライセンスとIaaS/PaaSの利用料が必要になるというわけです。イメージとしては自社で構築するVMware Horizonをクラウドで動作させるということになります。
一方、AVDはMicrosoft Azureに組み込まれたDaaSなので、VDIソフトウェアにかかるライセンスが不要になります。さらに、Dynamics 365のサブスクリプション(定期利用ライセンス)やWindows 10ライセンスを保持している場合、追加のライセンスコストをゼロにして使用できるためMicrosoft Azureの従量課金のみでAVDが使えます。
VMware Horizon Cloud on AzureとAVDを比較してみよう!
これからVDI環境を構築するにあたり、VMware Horizon Cloud on AzureとAVD、どちらが正解ということはありません。企業や用途が違えば環境が違うように、VDI環境を構築する目的に応じて、どちらのサービスが最適かが異なります。それを知るためにはとにかくVMware Horizon Cloud on AzureとAVDをさまざまな視点から比較し、自社企業のVDI環境構築の目的と照らし合わせながら、最適なサービスを選択することです。どちらも素晴らしいサービスであることには変わりないので、この機会に幅広く比較し、自社企業にとって私的なDaaSを選びましょう。