社内の業務実態や市場の状況を理解するために、データ分析を活かすことが注目されています。データ分析を行うためには、適切なフレームワークが必要です。今回はデータ分析とフレームワークについてお話します。
データ分析とは?
近年のIT技術が広く普及したことで、企業は自社の売上や成果などをデータとして収集・蓄積できるようになりました。それに伴い、データを活かして経営戦略を練るデータドリブン経営が注目されるようになりました。
しかしその一方で、収集したデータをどのように活かせばいいかわからないという声も出ています。データはただ集めただけでは、なんの意味もありません。データの山から有用な要素を見つけ出すデータマイニングが重要になります。
それによって業務の実態が可視化され、気づかなかった企業の強みや、ボトルネックなどの問題点見つけたりすることができます。このような発見を元に業務を見直すことで、業務の最適化が実現できるでしょう。
さらに、利用するビジネスフレームワークについても考えなければなりません。ビジネスフレームワークとは、さまざまな状況や目的に応じた、適切な考え方の枠組みです。どのようなデータを集積すべきか、どのように活用すべきかを考えて、利用するフレームワークを選択する必要があります。
データ分析によって実現できること
データ分析によって、社内で雑多に集積されていた情報を、有益に活用できるようになります。
ただ集積されたデータは、ルールも規則性もなくバラバラな状態です。データを使える状態に成形する必要があります。はじめに、どのような形にするかルールを定めます(データモデリング)。そのルールの元、データの表記方法を変更する、不正な情報を削除するなどして、データを利用できる状態にします(データクレンジング)。そして、そのデータをグラフや図に表わして可視化させます(データビジュアライゼーション)。このようなプロセスを経て、経営判断に利用できる形になります。
また、必要なデータははじめから一つのところに集まっているとは限りません。部署やシステムごとにバラバラになっていることも珍しくないでしょう。そのようなデータを一箇所に集約するデータ統合も、データ分析には必要な作業です。
データ分析の種類
データ分析にはいくつかの種類があります。代表的なものをご紹介しましょう。
記述統計
データがどのように分布しているのか、どのような特徴を持っているのかを調べるために、表やグラフに表することを記述統計といいます。
記述統計というとなんだか難しいものに感じますが、平均値など普段から接しているものも記述統計です。データ分析の中でも、代表的なものといえるでしょう。
探索的データ分析(EDA)
データをどのように利用できるかを見つけるための分析を、探索的データ分析といいます。
雑多なデータを観察し、データの特徴やデータ同士の相関関係、使える要素・使えない要素を見つけます。とりあえずはデータを集めてみたものの、どのように活用できるかわからない、といった状況で利用され手法です。
確証的データ解析(CDA)
経営戦略を考える上で浮かんだ仮説は、それだけでは説得力を持ちません。そのため、記録されてきたデータを観察・検証することで、その仮説がどれだけ現実に則しているのかを証明することができます。そのような目的の基で行われるデータ解析を、確証的データ解析と呼びます。
データ分析に欠かせないフレームワーク
データ分析には、そのデータをどう活かしたいかという目的と、どのように扱うのかという手段が必要になります。そのような状況や目的に応じた適切な考え方の枠組みを、フレームワークとよびます。
ビッグデータの解析には、ビジネスフレームワークがなくてはなりません。大量のデータはただ眺めればいいというわけではなく、目的別に図やグラフにしなければならないからです。適切なフレームワークを利用することで、業務改善や問題解決に活かすことができます。そのためには、物事と根拠に分け、論理的にそれらを理解するロジカルシンキングが欠かせません。
フレームワークにはさまざまなものがあります。市場における自社の立ち位置、顧客層と製品の相関関係、従業員のパフォーマンスなど、多くの画面で利用されています。
主なビジネスフレームワークをご紹介!
ビジネスフレームワークにはさまざまなものがありますが、その中でも代表的なものをご紹介します。
トレンド分析や問題解決など、目的によってフレームワークを使い分けましょう。
- PEST分析
政治的要因、経済的要因、社会的要、技術的要因に分けられます。自社を取り巻く外的要因を分析します。 - SWOT分析
強み、弱みという内部環境と、機会・脅威といった外部環境を分析します。 - クロス集計分析
アンケートを分析する際に用いられます。性別・年齢のような「回答者の分類」と「回答内容」という2つの軸で図式化し・分析します。 - 3C分析
「市場・顧客」、「自社」、「競合他社」という自社を取り巻く環境を分析します。 - アソシエーション分析
大量のデータから、要因ごとの相関関係を見つけ出すために分析を行います。 - 因子分析
顧客アンケートなどを利用して、潜在的な共通性を見つけ、分類・集約する分析です。
ビッグデータを扱うなら「データ分析基盤」
大量のデータを集めることが容易になった反面、データ加工の労力は増大しています。少量であれば人力での整理も可能でしたが、ビッグデータを処理するにはデータ処理を自動化するシステムが求められます。そのような課題に応えるのが、データ分析基盤です。データ分析基盤は、膨大なデータを蓄積、加工、分析するシステムのことです。
蓄積されたデータはデータレイク、あるいはデータウェアハウスに保存されます。どちらもデータを保存するという目的は同じですが、データの形質が異なります。
データレイクは成形されていない、生のデータです。理想的なモデリングが規定できない場合などに利用されます。データウェアハウスは、加工され使いやすくなったデータです。どのような目的で利用されるのかが決まっているため、分析しやすい形に成形されています。また、データウェアハウスから必要データを抽出したものを、データマートと呼びます。
データ分析基盤を構成する技術
データ分析基盤を理解するには、それを支える技術について理解しなければなりません。
- ETL
ETLとは、データを抽出・加工・蓄積する技術のことです。データを利用できるようにするには、この工程が必要になります。 - データストリーム技術
旧来はデータを収集してから分析することが一般的でした。それに対し、リアルタイムに絶えず流れてくるデータを処理する技術をデータストリーム技術と呼びます。クレジットカードの処理など、24時間際限なく処理を行わなければいけない状況で利用されます。 - ELK スタック
ELKスタックとは、Elastic社が開発しているElasticsearchを支えるプロダクトのことです。データの収集、検索・分析、ユーザーが利用できるUI、データ収集パイプラインなどの処理を効率的に行うために開発されました。
データ分析システムの導入に関する注意点
データ分析システムを導入する前には、自社が利用するデータについてよく考える必要があります。
まず、扱うデータがどのようなものかを明確にしましょう。扱うデータの大きさや量を考えないと、導入したストレージでは不足するということがあります。また、どのような目的でデータを利用するのかを決めないと、適切なシステムを選ぶことができません。
導入したシステムをさまざまな場面に応用することを考えているのであれば、システムの拡張性についても考えましょう。どのような機能が追加できるのか、他社のシステムと連携できるのかなど、システムの柔軟性も考慮しなければなりません。
また、非構造化データをどのように利用するのかも考える必要があります。データをどのように加工すべきか、または加工せずに集積するのか。目的によって扱い方はさまざまです。最終的にどのような形で利用したいかを明確にし、それに応じた形でデータを集積しなければなりません。
まとめ
フレームワークを活用することで、目的に合ったデータ分析を行えるようになり、経営戦略の策定に役立てることができます。
しかし、データ分析はさまざまな知識を必要とするため、適切なフレームワークを見つけるのは非常に難しいといえます。データ分析について学びたい場合は、オンライン講座などを利用することをおすすめします。ライブ形式のオンラインサービスDojo Onlineでは、現場で活躍できる人材になることを目的とした講座が開講されています。
適切なフレームワークを利用して、経営戦略に活用しましょう。