AI・機械学習をBIツールへ活用できるAzure Synapse Analyticsを利用するメリットや便利機能について解説している記事です。本サービスの特徴や採用事例なども紹介しています。導入を検討している方の参考材料になる内容です。
データ分析サービスAzure Synapse Analyticsの機能概要
本サービスは、DWHとビッグデータ解析を一つに統合した分析基盤です。前世代「Azure SQL Data Warehouse」の後継サービスに該当します。これまでのやり方では分析環境を構築するためにはBIツールやDWHをそれぞれ独立させて稼働させるという形態を取っていたはずです。そして、システムが独立しているため、データを分析するには連携させる必要があり、その手間も大きなものでした。そういった煩わしさを解消する基盤として提供されるのが「Azure Synapse Analytics」です。
ETLで処理されたデータはDWHに蓄積され、Azure Synapse Analyticsに取り込まれます。さらに、機械学習のAzure Machine LearningやBIツールのPower BIとも連携させればデータ分析、データサイエンスなどの高度なデータ分析やデータベース管理の作業を一つの基盤に統合して扱えるのです。今までは様々な連携が必要だったものを一つの基盤にまとめられるところがAzure Synapse Analyticsを利用するメリットと言えます。
BIの活用メリット
BIの概要や会社にBIツールを導入することで得られるメリットについて記事の続きで解説します。
BIとは
BI(Business Intelligence)は、企業に蓄積している大量のデータを分析し、その結果を経営の意思決定に活かしていくことです。分析プロセスの部分をシステム化したものがBIツールと呼ばれています。IT化やDXなど時代による変化が激しく進む昨今では、データ活用の必要性を感じてBIツールを導入する企業が増えつつあります。
そのデータ活用に欠かせないBIツールの主な役割は、社内の生産管理、購買管理など各システムに点在するデータを集めて自動で分析を行い、結果をグラフなどの分かりやすい状態で出力することです。社内にあるデータを誰でも分かりやすく活用していくのに便利なツールです。
メリット1 データ管理が容易に
BIツールを導入すると社内に散らばった大量のデータを集約して分析しやすくなります。集約したデータは必要に応じて抽出し、加工することが可能です。そもそも社内に保存された顧客情報などの一つひとつのデータは、蓄積された資産とみなしてよいほどの価値があります。資産といっても活用できなければ意味がないため、散らばったデータを集約して管理も簡略化できるBIツールは導入するだけでメリットがあると考えてもよいでしょう。
メリット2 データの可視化で現状把握が容易に可能
BIツールを使用すると、集約したデータの一部を抽出して加工し、Excel資料やグラフなどの分かりやすい形で出力されるためデータの分析結果が見やすいです。データの状況はBIツールが逐一リアルタイムに更新するため、更新頻度が高く、大量のデータが毎日やり取りされていたとしても常に鮮度の高いデータを参照できます。
これにより、ツールが整理したデータから会社の現状把握をするのが簡単になり、経営上の問題点の早期発見がしやすいです。BIツールを導入すれば人の手で時間をかけてデータの分析や数字の集計作業をする必要もなく処理も正確なため、データ分析業務の時短にも繋がります。
Azure Synapse AnalyticsはAIをBI機能へ追加
Azure Synapse AnalyticsはBIツールであるPower BIのほかに様々なツールと連携できます。例えば、AIサービスであるAzure Cognitive Services、機械学習サービスであるAzure Machine LearningをPower BIと組み合わせることができます。AIサービスはMicrosoftが学習させたAIとAI処理モデルを利用できるものです。機械学習サービスも使用者のスキルレベルを問わずに利用できるツールで、機械学習の開発に費やす時間を短縮することが可能です。これらのサービスを連携状態にした方が、Power BIを通常よりも高性能な能力で分析できるようになります。また、サービスを利用する方が、本来必要な専門知識の学習時間や、知識の習得コストを削減できるというメリットもあります。
BI機能を活かしたAzure Synapse Analyticsの諸特長
Azure Synapse Analyticsに備わっている特長のいくつかを紹介します。
無限のスケール
まずデータ分析の容量が非常に大きい点が特徴です。テラバイトを超えるペタバイト規模の大きなデータを扱えます。その大容量を活かして社内の蓄積データとビッグデータの両方を無限のスケールで分析可能です。
本来ならDWHとビッグデータは別個にある状態のため、統合して何かするのは難しいものです。しかし、Azure Synapse Analyticsなら両者をシームレスに連携させて解析することが可能で、社内にある全データを網羅した上で必要な分析データを素早く出力できます。
最高レベルのセキュリティおよびプライバシー機能
高度なセキュリティレベルとプライバシー機能でデータを保護できる点も本サービスの特徴の一つです。市場で見比べても高いセキュリティ機能によって分析などのソリューションを保護し、高い安全性を維持します。多くのコンプライアンス認証を取得しているため、コンプライアンス基準の厳しい政府や業界でも利用できます。
データ保護、監視、管理を行うためにAzure Synapseと連携する際の接続方式では脅威の検出、データ暗号化が自動で行われます。列、行レベルでのセキュリティ、暗号化、動的データのマスキングなどの制御により、大切な機密データへのアクセスを自動的に保護します。
リアルタイムで分析情報を取得できる
Azure Cosmos DBのAzure Synapse Linkを利用すると、データストアからリアルタイムでいつでも分析情報を出力できるようになります。本サービスはHTAP機能を提供するため、利用するとAzureデータベースとSynapse間の処理が最適化され、ライブデータの分析ができるようになります。このように外部サービスと連携することで分析環境を効率的な形に構築することが可能です。
オンプレミス型との連携で分析速度が向上
オンプレミス型と連携して利用することもできます。オンプレミス環境下にあるDWHを稼働させながら、負荷の高い作業はAzureに任せるといったシステムの役割分担を行うことで、データ処理待機時間などの処理プロセスの最適化が行われ、業務の効率化に繋がります。コンプライアンスなどの問題でオンプレミスにデータ集約をしているケースもありますが、Azure Synapse Analyticsとのハイブリッドで構築すれば柔軟に対応可能です。
Azure Synapse Analyticsの導入事例
大手物流企業がAzure Synapse Analyticsを導入した事例を紹介します。その物流企業では組織構造の改革プランの実行と同時にデジタル化とデータ活用も推進する予定がありました。そのためにデータ分析基盤の構築が早急に必要になり、複数あるデータ分析基盤の性能やコストを比較検証した結果Azure Synapse Analyticsを選ぶという結論を出しています。同社が選んだ理由は、分析力がほかのものと比べて一番優れていたためです。本事例では性能が評価されて社内への採用と導入に至っています。
まとめ
Azure Synapse AnalyticsはDWHとデータ分析機能をひとまとめにできるサービスです。Power BIと連携することでデータ分析をより高性能にできます。また、本サービスを利用することでAIや機械学習の機能をBIに追加することも可能です。性能が評価され、大手物流会社に採用された事例もあります。