ファイルサーバーのAzure移行を検討しつつも、クラウド化する具体的なメリットを把握できず踏み出せない企業も少なくありません。そこで本記事では、Azure上にファイルサーバーを構築するメリットについて解説します。クラウドネイティブな情報共有基盤の構築を目指す企業は、ぜひ参考にしてください。
Azureファイルサーバー移行が注目されている理由
ファイルサーバーとは、ローカルエリアおよびワイドエリアなどのネットワーク上でデータを保管・共有するコンピューターであり、企業では情報共有基盤やデータバックアップ基盤として活用されているシステムです。ファイルサーバーには顧客情報や契約情報、製品開発情報などの社外秘情報や、従業員の個人情報のような社内秘情報など、決して流出してはならない機密データが保管されています。
そのため、情報系システムのクラウド化は推進しているものの、機密データを取り扱うファイルサーバーのクラウド移行は躊躇する企業が少なくありませんでした。しかし、近年ではMicrosoft Azure(以下、Azure)のようにISO規格のセキュリティ認証を得ているクラウドサービスも増加しており、ファイルサーバーのクラウド移行が進んでいます。
実際に総務省の調査によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は68.7%であり、その内、最もクラウド化している領域として多かったのが「ファイル保管・データ共有」の分野です。具体的には、クラウド化しているサービスとして「ファイル保管・データ共有」の割合が59.4%と最も高く、次いで「電子メール」が50.3%、社内情報共有・ポータルが44.8%、「スケジュール共有」が43.8%となっています。
Azureのようなクラウドサービスは、ファイルサーバーを構築するために物理的なサーバーやネットワーク機器などを導入する必要がありません。自社にITインフラを構築することなく、コンピュータネットワーク経由で利用できるため、システムの導入費用を大幅に削減可能です。このような背景から、パブリック環境にファイルサーバーを構築する企業が増加しており、国際標準のクラウドセキュリティを誇るAzureがその移行先として選ばれています。
オンプレミスファイルサーバーのデメリット
オンプレミスとクラウドは相反する特性をもっており、それぞれに一長一短があります。たとえば、アドオン開発が可能なオンプレミスはカスタマイズ性に優れ、独自のシステム要件を定義できる点が大きなメリットです。しかし、オンプレミス環境でファイルサーバーを運用する場合、以下のようなデメリットが懸念されます。
サーバーを自社で構築して運用するコスト
オンプレミス型のファイルサーバーは、ゼロからシステムを設計・開発するため、自社の事業形態や組織体制に最適化された機能を実装できるというメリットがあります。しかし、ファイルサーバーの安定的な稼働を担保するためには、サーバーやネットワーク機器、ソフトウェアといったITインフラの継続的な保守・運用管理が必要です。そのため、クラウド型よりもシステムの運用に多くの人的資源と管理コストを要する点がデメリットといえます。
専門人材不足
オンプレミス環境に構築されたファイルサーバーの保守・運用管理を最適化するためには、優れたシステムエンジニアやプログラマの存在が不可欠です。現在、国内は少子高齢化の進展や生産年齢人口の減少に伴い、さまざまな産業で人材不足が叫ばれています。とくにIT分野の人材不足は深刻で、経済産業省委託事業の調査によると、2030年にはIT人材が約45万人不足すると予測されているため、今後ますますシステムエンジニアやプログラマの確保が困難となるでしょう。
BCP対策がされにくい
オンプレミス環境でファイルサーバーを運用する場合、システム障害やサーバーダウン、通信の遅滞など、あらゆる角度からリスクを想定してシステムの可用性を確保しなくてはなりません。組織内のデータを管理するファイルサーバーの停止は事業活動の停止を意味するため、BCP対策としてバックアップシステムや予備サーバーを構築して冗長化を図る必要があります。システムの冗長化は、可用性の向上と引き換えに運用コストの増大を招くため、IT予算の圧迫につながります。
Azureファイルサーバーによるクラウド化のメリット
Azureはインフラストラクチャやデータベース、機械学習やアクセス管理、仮想化サービスやBIツールなど、複数のソリューションによって構成されているIaaS・PaaS型のクラウドサービスです。調査会社Canalysの調査によると、Azureの市場シェアは19%でAWSの32%に次ぐ2位となっているものの、成長率はAWSの35%を抜く50%を記録しています。
Azureは、OfficeやTeams、OneDrive、SharePointなど、Microsoft製品との連携性にも優れるため、多くの企業にとって非常に相性の良いソリューションといえるでしょう。また、アクセス管理サービスのAzure ADを活用することで、あらゆるMicrosoft製品とアカウント認証が紐付けられるため、組織全体における業務効率化と生産性向上が期待できます。そんなAzureをファイルサーバーの運用基盤として活用することで得られるメリットを3つ紹介します。
データ容量拡張が簡単にできる
クラウドサービスの大きなメリットのひとつがスケーラビリティです。オンプレミス環境でファイルサーバーを運用する場合、容量を拡張するためには、サーバーやネットワーク機器などのハードウェアを増設しなくてはなりません。システムの再設計も必要であり、ハードウェアの導入費用だけでなく、保守・運用管理におけるコストも増大します。しかし、クラウド型のファイルサーバーであれば、アカウントにサインインしてサービスを申し込むだけで容量の拡張が完結します。
運用コスト削減につながる
ファイルサーバーは組織全体のデータ共有や、部門横断的な業務連携を実行する上で欠かせない情報共有基盤です。そして、冒頭で述べたようにファイルサーバーには決して流出してはならない機密データが保管されています。この経営体制を支える情報共有基盤の安定稼働を確保し、マルウェアや不正アクセスなどの脅威から保護するためにはシステムの保守・運用管理が不可欠です。Azure環境なら、インフラ部分の管理はMicrosoft側の対応領域となるため、ファイルサーバーの運用コストを大幅に削減できます。
テレワークに対応している
テレワークなどのリモート環境に対応できる点も、Azureにファイルサーバーを構築するメリットのひとつです。オフィス外からファイルサーバーにアクセスするためには、セキュリティを担保するべくVPNを使用して社内ネットワークに入る必要があります。この場合、大量のトラフィックによってゲートウェイやVPN機器に過負荷が生じ、レスポンスの低下を招くケースも少なくありません。Azure上にファイルサーバーが構築されていれば時間や場所を問わずにアクセスできるため、テレワーク環境に最適化されたセキュアな情報共有が可能となります。
まとめ
Azure上にファイルサーバーを構築することで、テレワークにも対応できるセキュアな情報共有基盤を構築できます。スケーラビリティにも優れ、事業規模の拡大・縮小に柔軟に対応できる点もクラウドならではのメリットです。ファイルサーバーのクラウド移行を検討している企業は、Azureを導入してみてはいかがでしょうか。