AIの進化がますます加速する中、自社の事業にどのようにAIを活用できるか、多くの企業が関心をもっています。そこで本記事では、「そもそもAIとは何か」という基本説明をはじめ、Microsoft Azureを用いたAIの活用事例をご紹介していきます。
AI(人工知能)とは何か?
そもそも「AI」とは何なのでしょうか。まずはAIの概要や、AIと機械学習との関係について解説していきます。
予測分析を行うAIの概要
AIとは“Artificial Intelligence”の略称で、日本語では一般に「人工知能」と称されます。AIは簡単にいえば、知覚・言語・判断・推量・予測といった人間の知的活動の一部を模倣するコンピュータープログラムです。こうしたプログラムを活用することで、たとえば外国語を翻訳したり、医療やものづくりの現場における検査・検品で異常を発見したり、市場需要の予測をしたりと、従来ならば人間の専門家が行っていたような仕事をコンピューターに肩代わりさせることが実現できます。
混同しがちなAI、機械学習を簡単に説明
AIとしばしばセットで語られる言葉として、「機械学習(マシンラーニング)」が挙げられます。簡潔にいうと、機械学習とはAIがもつ学習機能のことです。人間がさまざまな経験を通して能力を高めていくのと同様に、AIもまた学習を通してその能力を高めていきます。その学習の仕組みが機械学習です。
機械学習には「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」など、さまざまな種類があります。AIは一定のアルゴリズムに基づき、開発者からインプットされた膨大な量のデータから何らかのパターンや法則性などを解析し、その機能を向上させていきます。つまりAIの高度な能力は、機械学習の下支えがあってこそ可能になるのです。
近年では「ディープラーニング」という、人間の脳の仕組み(ニューラルネットワーク)を疑似的に再現した機械学習技術が登場し、機械学習の効率と効果を爆発的に高めることに成功しました。そして今や、AIの一部の能力は、人間の専門家のそれを凌駕するまでに成長しています。
AIを利用するメリット
現在では、ビジネスのさまざまな領域でAIを活用する動きが広がってきています。以下では、AIを利用するメリットについて解説します。
メリット①作業の効率化による労働負荷削減
AIの活用メリットその1は、従業員の労働負荷を削減できることです。AIは運用開始前に機械学習の時間が必要となりますが、その後はコンピューターならではの情報処理能力によって、膨大な量の作業も休むことなく迅速かつ正確にこなせます。AIに代替させる作業として特に向いているのは、反復的な定型作業です。ルーティン的な作業をAIに代替させ、業務の自動化・効率化を進めることで、従業員はより複雑な判断を要する仕事や、創造的な仕事に集中できるようになります。
メリット②顧客ニーズに素早く気づく
AIの活用メリットの2つ目は、顧客ニーズに素早く気づけることです。AIの情報処理能力はマーケティング業務における予測分析などにも役立ちます。たとえば、Webサイトの訪問者データをAIに分析させれば、「どのような属性の顧客が、どのような商品を買っているのか」など、マーケティング戦略に重要なヒントを与える顧客ニーズの把握ができます。
メリット③顧客満足度の向上
3つ目のAI活用メリットは、顧客満足度の向上です。AIはカスタマーサービスなどにも活用できます。たとえば、AIを搭載したチャットボットをカスタマーサポートに導入すれば、従業員の負担を減らしつつ、24時間365日いつでも顧客からの質問に対応できるようになります。このような取り組みは顧客の利便性を大幅に改善させ、顧客満足度の向上をもたらすことが期待できます。
メリット④人が気づかないようなことに気付ける
AIのメリット4つ目は、人が気づかないようなことにも気づけることです。現代の企業は、さまざまなチャネルからリアルタイムにデータを取得しています。しかし、こうして企業内に蓄積されたデータは、もはや人間にとって膨大すぎて、そこからビジネスに役立つ情報を拾い上げるのは容易ではありません。
その点、AIにこうしたビッグデータの分析を任せれば、人間では気づけなかった潜在的なビジネスリスクや、ビジネスチャンスの発見などが期待できます。あるいは、売上予測にAIを活用することで、さまざまなデータに基づいた正確な売上予測も可能になります。
身の回りのAI導入事例
上記のようなメリットのあるAIは、医療・製造業・教育など、私たちの身近な生活や企業活動のさまざまな領域で活用されています。こうしたAIの活用事例の中には、非常に参考になる面白い内容も含まれます。以下では、私たちの身の回りにあるAI活用方法をご紹介していきます。
事例①倉庫の検品、出荷を自動化
大手アパレルブランド「ユニクロ」を展開する株式会社ファーストリテイリングは、自社の倉庫業務にAIを導入しました。このAIは画像認識機能に秀でており、商品の入出庫や検品、仕分け、商品コンテナの片付けの自動化などに成功しました。このAIの導入効果により、同社では従来これらの業務に100人の従業員を割いていたところ、約10人にまで削減できたそうです。
事例②マーケティングによる高見込み客抽出
ある大手クレジットカード会社は、マーケティング業務においてAIを活用することで成功を収めました。その会社は、ダイレクトメールの効果を向上させるために、自社が有する会員リストの中から有望な見込み顧客をAIに抽出させたのです。その結果、ダイレクトメールの反応率は従来の2倍にまで向上しました。
事例③住宅ローンの自動審査
大手金融機関のみずほ銀行は、AIによる住宅ローン簡単診断サービスの提供を始めました。AIによるこの事前診断はインターネットで提供されているため、顧客はわざわざ実店舗を訪れることなく、最短1分足らずで審査結果を得られます。これにより、同行は従業員の業務の効率化・省力化を実現しつつ、サービス品質を改善し、顧客満足度を大きく向上することに成功しました。
AzureとAIを組み合わせた活用法を紹介
Microsoft社では、同社が提供する「Microsoft Azure」を利用したAI活用事例の一覧をWebサイトにて掲載しています。以下では、AzureとAIを組み合わせた活用法をご紹介していきます。
事例①株式会社電通国際情報サービス
株式会社電通国際情報サービスは、「Azure Machine Learning」を利用してAIの活用を進めています。たとえば、同社が開発したAIシステム「TexAIntelligence」は、製造業における品質保証や新商品の開発をサポートするものです。このようなAI活用を通して、同社はDevOpsと業務自動化の実現に取り組んでいます。
事例②一般社団法人リテールAI研究会
多くの企業が加盟している一般社団法人リテールAI研究会では、新しいトレンドを発掘するためのマーケティング分析などにAIを活用しています。たとえば、加盟企業のひとつである伊藤忠食品株式会社は、全国に1,000以上もの取引先を有していますが、それらすべての売場に実際に足を運び、分析をすることは難しいのが実情です。そこで同社は「Azure Databricks AI」を用いて、AI分析による地域別棚卸を実施し、どの地域にどのようなビジネスチャンスや課題があるかを明らかにしました。
事例③株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
ビジネスにおけるAI活用を推進する株式会社NTTデータは、音声会議システムにAIを活用しています。事業をグローバル展開する同社では、頻繁に海外拠点とのWeb会議が行われます。会議で使われる言語は英語で統一されているものの、話者によって発音や表現の仕方が異なるため、意思疎通にときに困難が生じていました。そこで同社は「Azure Cognitive Services」を活用して、音声会議支援システムにAIによる音声の自動テキスト化・自動翻訳機能を搭載し、コミュニケーションの円滑化および意思決定の迅速化に成功しました。
まとめ
AIとは、人間の知的活動の一部を模倣できるコンピュータープログラムです。機械学習技術が発展する中、AIの機能はますます向上しており、多くの企業がその活用に取り組んでいます。Microsoft Azureでは、AIを活用したITインフラの構築が可能です。AI導入を進める際には、ぜひご活用ください。