近年、データを活用したデータドリブン経営を推進する企業が増加しています。さまざまなメリットがありますが、そもそもデータをどのように収集すればよいのかと悩むケースも少なくありません。本記事では企業におけるデータ活用とはどのような取り組みなのかを解説し、データ収集の方法やおすすめのツールも紹介します。
データ収集はデータ分析におけるフローの1つ
データ収集はさまざまなシーンで行われています。一例としては、機械学習における学習用データセットの収集、IoTにおいてはPLCをデータハブとすることでセンシングデータを収集するケース、医療分野では看護研究を行うためのデータなど、あらゆる分野におけるデータ収集が考えられます。ただ、データは集めるだけでは意味がありません。分析を行い、適切に活用してこそメリットをもたらします。
企業におけるデータ活用とは?
企業におけるデータ収集は、分析したデータから導き出した傾向や方法論をビジネスに生かすことを目的として行われます。抽出したデータに基づく経営判断や、具体的な施策の実行などに役立てられます。たとえば、顧客の行動データと天候データを分析し、雨天の日に売上が伸びやすいとの結果が出たとしましょう。この場合、雨が降った日に目玉商品を投入する、セールを開催するといった施策を実行できます。
データを活用すれば、確度の高い推論や根拠に基づいたアクションを起こせます。思いつきや勢いではなく、データに裏付けされた推論や根拠があるため、施策が失敗するリスクが引き下げられるのです。
デジタル社会となり、企業が扱うデータは年々増加しています。日常的に大量のデータが生まれ、蓄積されているのが現状です。ただ、データは蓄積するだけでは意味がありません。きちんと分析と活用を行える環境を構築し、データドリブン経営に取り組むことでデータを最大限生かした企業活動を展開できるのです。
データ分析におけるデータ収集の位置づけ
データ収集は、データ分析を行う前のプロセスです。データ分析の大まかなフローは、目的の明確化→データ収集→データ分析と進めます。
データを漠然と分析するのはおすすめできません。企業が扱うデータは膨大であり、目的を明確にせず取り組むのは非効率です。現状の課題を把握し、何のために分析を行うのかをはっきりさせるプロセスが必須となるのです。
次にデータ収集は、目的を達成するためにデータを集めて整理するプロセスです。効率よくデータを分析するには、真に必要な情報のみを抽出して整理しなくてはなりません。さまざまな種類のデータが混在しているようでは、いたずらに時間を費やしてしまい、なかなかゴールへたどり着けないおそれがあります。
つまり、データ収集はただデータを集めるだけでなく、スムーズに分析を進めるために行われるプロセスです。次章からは、具体的なデータ収集の方法を見ていきましょう。
データ収集の方法
データ収集の方法は多岐にわたり、企業によって採用する手法も異なります。ただ、一般的には以下の方法で行われるケースが多いため、覚えておくとよいでしょう。以下、主なデータ収集の方法をピックアップしました。
エクセル・CSVなどのファイルをダウンロードする
ポピュラーかつ容易なデータ収集方法として、エクセルやCSVファイルのダウンロードが挙げられます。インターネット上には、各種データを掲載しているWebサイトが数多く存在し、自由にダウンロードしてよいオープンデータファイルも多々あります。
しかも、簡単に情報を入手できるよう、統計データなどをファイルにまとめているケースも少なくありません。Webサイト上でファイルをクリックし、ダウンロードできるためすぐにデータを取得できます。特別な知識やスキルがなくてもダウンロードできるのも、おすすめできるポイントです。
日本総務省統計局や日本保健衛生、世界銀行、土地総合情報システムなど、オープンデータを取得できるWebサイトは多々あります。質のよい最新のデータをまとめているWebサイトもあり、知識やスキル不要でコストをかけずにさまざまな情報を取得できるのがメリットです。
なお、オープンデータの利用にあたっては、提供元がルールを設けているケースもあるため、注意が必要です。たとえば、情報の二次利用にはクレジットを表記する、といったルールを定めているWebサイトもあるため事前に確認しておきましょう。
スクレイピングを行う
スクレイピングとは、Webサイト上の情報を収集する技術です。スクレイパーと呼ばれるプログラムを用いて、対象のWebサイト上から情報を取得します。
全てのWebサイトがオープンデータとしてダウンロード可能な環境を整えてくれていればよいのですが、そうはなっていません。求める情報がWebサイト上にあるのに、ダウンロード用のファイルが用意されていない、といったケースではスクレイピングが有効です。
スクレイピングなら、Web上のありとあらゆるデータの取得が可能です。プログラムを用いてデータ収集を自動化できるため、効率よく多種多様なデータを集められます。
一方、スクレイピングは対象のWebサイトに負荷をかけることがあるため、場合によっては業務妨害と受け止められる可能性があります。また、スクレイピングそのものを禁止しているWebサイトもあるため、必ず事前に確認をしましょう。
APIを活用する
API(Application Programming Interface)とは、大まかに説明すれば「人の手を介さずにソフトウェア同士をつなぐ仕組み」のことです。APIはアプリケーションにおける窓口のような存在で、各種ツールと連携させることで窓口を通じてさまざまな情報をやり取りできます。現在では、インターネット上のさまざまなサービスが、APIを公開しています。公開しているAPIを紹介したWebサイトもあるため、見つけるのはそれほど難しくありません。
自社で使用しているツールと公開されているAPIを連携させることで、自動的にデータ収集を行えます。オープンデータのダウンロードやスクレイピングなどは、少なからず手作業が必要ですが、この手法であれば不要です。設定後は自動的にデータを集めてくれるため、効率よく求めるデータを得られるのが魅力です。
データ連携ツールを使用する
社内のファイルサーバーやデータベースなど、さまざまな場所に散らばっているデータを収集するのに便利なのがデータ連携ツールです。バラバラに管理されている情報を収集するのは、手間も時間もかかりますが、データ連携ツールを用いれば効率よく進められます。
データ連携ツールには、膨大なデータの統合や収集に適したETLツールと、システム同士を連携できるEAIツールがあります。双方にできることとできないことがあるため、それぞれの特徴を把握したうえでどちらを導入するか検討しましょう。
なお、データ連携ツールには無料の製品もあります。コストを抑えられるのは魅力ですが、トラブルの発生は自己責任となり、サポートを受けられないケースもあるため注意が必要です。有料ツールの場合でも、無料トライアル期間を設けた製品であれば事前に機能や操作性を確認できます。
データ集約基盤で脱サイロ化を
データは収集することが目的ではなく、きちんと分析してこそビジネスに生かせます。データの効率的な分析と活用を実現するには、データ集約基盤の整備が必須です。
データ活用が進まない企業の多くは、データのサイロ化が顕著です。サイロ化とは、それぞれのデータが連携できておらず、分断されている状態を指します。このような状態では、社内の情報を集めるだけでも多大な労力が発生し、データの横断的な活用もできません。
脱サイロ化を実現するには、データ集約基盤を整備する必要があります。データ集約基盤を構築できるサービスは多々ありますが、その中でもおすすめなのが「Microsoft Azure」です。これはMicrosoftが提供しているクラウドサービスで、オンプレミスやクラウドの情報を統合的に管理できます。
データ活用を目的としてAzureを導入している大企業は少なくありません。高度なセキュリティ対策が施されているため、安全に利用できるのもメリットです。
まとめ
データ収集の方法には、オープンデータを人力でダウンロードする方法のほか、APIやスクレイピング、データ連携ツールの利用などがあります。収集したデータは、きちんと分析してこそビジネスに活かせることを覚えておきましょう。データの脱サイロ化を実現できる、Azureのような集約基盤の導入も検討してみてはいかがでしょうか。