データ資産を有効に管理するために「データガバナンス」は欠かせませんが、どのように自社で運用すれば良いか、頭を悩ませている方は少なくないでしょう。
そこで本記事では、データガバナンスの概要、データガバナンスが必要とされる意味とメリット、運用に向けた参考事例などをご紹介します。
データガバナンスとは?
データガバナンスは、データ資産を体系的に統制・管理するための考え方です。データを扱うためのポリシーとルール、プロセスを定めて機能させることで、成熟したデータのマネジメントにつながります。
しばしば「データマネジメント」と混同されますが、データガバナンスは「ガバナンス(governance=統治)」という言葉が表す通り、政治のように立法・司法・行政としての機能を含んでいるのが大きな違いです。
例えば、顧客の動向を探るためにデータを分析していた場合、それはレベルの高低に関わらずデータマネジメントを行っていることになります。その一方でデータガバナンスは、データガバナンス組織が、まずデータを扱うルール・プロセスを設定・周知し、実際にデータを扱うメンバーがルールを守っていなければ取り締まり、ルールが遵守がされるように徹底させる一連の行為のことを指します。
なお、監督を行う組織であるデータガバナンスと、分析・利活用などのデータマネジメントを手がける実行側は、それぞれ分離・独立をさせる必要があります。データガバナンス組織に横断的な権限を与えることも必要です。そうすることでデータガバナンスが有効に機能し、より成熟して一貫性のあるデータの利活用の実現につながるでしょう。
データガバナンスが求められる理由
データガバナンスが求められる理由には、次に挙げるようなものがあります。1つずつ見ていきましょう。
データのクオリティが向上する
まず、データガバナンスが機能することで、おのずとデータのクオリティが向上することが挙げられます。あらかじめルール・プロセスを定めることで、データの管理体系が統一されるため、データの劣化・陳腐化、重複といった問題を防ぎ、データの平準化・品質向上が叶うでしょう。
効率化ができる
効率化につながることも、メリットの1つです。データを蓄積する仕組みの構築から、データの形式(表記ルール、分類カテゴリ、コード体系など)、データの利活用・管理、データの保護までのプロセスとルールが明確になれば、データを扱う一連の作業の効率化につながります。
データ利活用における課題が解決できる
「同じデータが各部門のシステムごとに複数存在する」「データの仕様が違うため統合できず、全社的に横断してデータ分析ができない」「システム基盤をつくったが、次につなげられなかった」など、データを扱う上で起こりがちな課題も、独立したデータガバナンスの組織が運用ルールを定め、遵守することを強力にアナウンスすることで、改善につながっていくでしょう。
また、データに関するガイドライン・指針があれば、対外的にデータの質・データの取り扱いに関する説明を行う場合も、企業として一貫した対応が取れます。
データガバナンスを根付かせるためにはガイドラインが必要
データガバナンスが形骸化している場合、1)データガバナンスを行う理由が把握されていない、2)漠然とし過ぎており行動に落とし込めない、3)継続的な運用が行われていない、という原因が考えられます。
これらの原因をまとめて解決するには、データガバナンスに関するガイドラインを策定することが有効です。まず、企業のデータの扱い方・プライバシー保護に関するポリシー、データガバナンスを推進するための体制、保有データの扱い方、データの利活用におけるリスク、データの取得・提供のプロセス・ルール、ルールの遵守状況のチェックと改善措置、データガバナンスの進捗を評価する基準などを明確にしてください。
そして、社員それぞれがデータガバナンスに対する理解を深め、一貫した行動を取れるように、全社的に共有しましょう。また、データガバナンスが企業に根付くよう、ビジネス戦略や市場のトレンド、社会状況に合わせて適宜見直しするようにもしてください。
データガバナンスを取り入れた事例
続いて、データガバナンスを有効に取り入れた企業の事例を参考までにご紹介します。
データ活用の課題を改善するため「データガバナンス指針」を策定|Zホールディングス
PayPay株式会社、ヤフー株式会社、LINE株式会社などを傘下に持つ「Zホールディングス株式会社(ZHD)」は、各グループ会社のプライバシー問題とデータの利活用に対するスタンスを明確にするために、自社のコーポレートサイトで、平易な文章で書かれた「データガバナンス指針」を発表しています。
以前「LINE」では一部データを保管するために外国のサーバーを利用していたものの、それに関する説明が明らかに不足していたため、大きな社会問題となりました。発覚後、LINEとZホールディングスは外部機関による提言を受けて、ユーザーの視点から適切な横・縦のガバナンスの実現につなげることを改めて定めています。
LINEにおける失敗事例を生かして「データガバナンス指針」を一層強化するとZホールディングス株式会社は発表していますが、その中では、セキュリティ対策とプライバシー保護を最優先として、パーソナルデータに関する取り扱いの透明性・選択権の確保を明記しています。さらに、データを活用してユーザーにうれしい驚きのある体験を届け、さまざまな社会課題を解決することも大切にした内容です。
PayPay・LINE・Yahoo!など、日本の社会・ビジネスに欠かせないサービスを提供し続けているZホールディングスならではの指針だといえるでしょう。
データガバナンスに関する3軸のルールを整備|西日本旅客鉄道株式会社
西日本旅客鉄道株式会社と株式会社野村総合研究所は、データガバナンスに関するガイドラインなどの策定を共同で進めています。JR西日本グループのJR西日本、百貨店、駅ビル、ショッピングセンター、ホテルなど多岐にわたる事業で得られたデータを、責任を持って組織間で安全・円滑に共有・利活用することで、顧客、ひいては社会へさらなる価値を提供することが目的です。
プライバシー保護に関する安全性を担保しながら、今後さらに膨大化するデータを利活用することで、さらなるグループシナジー効果が期待できるでしょう。
データガバナンスでツールを利用するならAzure Purview
データガバナンスを機能させて、より適切なデータ管理を行うためには「Azure Purview」などのツールを使うのがおすすめです。
「Azure Purview」はオンプレミス、クラウド、SaaSのデータを有効に管理するためのソリューションで、一貫したデータの分類・ラベル付け・統合などを通してデータ資産のマップを作成する「Data Map」、データのデータソースなどを簡単に検索・追跡できる「Data Catalog」、データに関するアクションを包括的に把握する「Date Insights」といった機能を備えています。データガバナンスを根付かせることに寄与するでしょう。
このようなシステムを通してデータ資産を一元管理することで、データ資産と企業の価値が一層の高まりを見せるかもしれません。
まとめ
独データガバナンス組織をつくり、目的、企業としてのポリシー、データの扱いに関するルール・プロセスなどを定め、各部門が遵守するよう徹底することで、データガバナンスは全社的に機能していくでしょう。
しかし、膨大なデータの管理が求められるため、「Azure Purview」などの専門のツールを導入するのがおすすめです。