近年よく耳にする「DaaS」。これとあわせてAzureとAWSという単語を聞く機会も多いのではないでしょうか。この記事では、DaaSの意味やAzureとAWSの違い、それぞれの導入費用の目安を紹介します。DaaSの比較をしたい方は、ぜひ一度ご覧ください。
市場拡大を続けている「DaaS」そのメリットとは?
DaaSとは、「Desktop as a Service」の略でクラウドサービスの一種です。クラウド上にOSやソフトウェアなどのデータ(デスクトップ)を保存し、ネットワークを通じて手元端末に画面を共有し、さらに操作ができるようにしたサービスを指します。
DaaSの特徴は、外部のサービス業者がデスクトップデータを提供し、クライアントである企業がデータを受け取って利用する点です。つまり、企業が持つ手元の端末にはプログラムがインストールされておらず、外側の本体やキーボード、マウスのみがある状態になります。では、クラウド上に保管したデスクトップを利用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?
デスクトップ管理の効率化
大きなメリットとして挙げられるのが、デスクトップ管理の効率化です。通常、OSやアプリケーションを利用するには、常にアップデートを行い、最新の状態にしておかなければなりません。社内のパソコンがそれぞれデスクトップを持っていて、一括でアップデートが行えない場合、パソコンごとにアップデートを行わなければならず、労力がかかります。
一方DaaSなら、サーバー側のデスクトップ1つをアップデートすれば事足りるため、管理が容易です。また、そのアップデートは外部業者が行うため、企業にはほとんど労力がかかりません。
初期費用の削減
社内のパソコンすべてのデスクトップを最新型にするには、多額のコストがかかります。DaaSなら、最新のデスクトップを提供する業者を探し、月額料金を払えば利用できるため、初期費用が削減できます。
セキュリティの強化
DaaSでは、デスクトップデータをクラウド上で保管します。会社にとって重要なデスクトップデータをクラウド上で保管することに不安を感じる人も少なくありません。しかし、それぞれのパソコンで重要なデータを保管しておくと、端末の数だけウイルスに侵される危険性があります。また、仕事用のパソコンを持ち運ぶなら、紛失や盗難に遭う恐れもあるでしょう。
しかし、DaaSでは、それぞれの端末に画面が共有されているだけで、データは保存されません。そのため万一パソコンが盗難に遭ったり、不具合が発生したりしても、データを守ることができます。主要なデータを1つのデスクトップにまとめておくことで、セキュリティの強化につながるのです。
働き方改革の促進
DaaS環境では、インターネットにつなぐことができれば、パソコンだけでなくタブレットやスマートフォンからもデスクトップを利用できます。そのため、リモートワークなど働き方改革の促進に役立ちます。どの端末からアクセスしても端末上にデータが残らないため、セキュリティ対策も万全です。
DaaSには3タイプの導入形態が存在
DaaSにはプライベートクラウド型、パブリッククラウド型、バーチャルプライベートクラウド型の3タイプがあります。
プライベートクラウド型
1つの企業専用のクラウド環境を提供するDaaSです。セキュリティ性とカスタマイズ性が高く、本格的にDaaSを導入するときにおすすめです。
パブリッククラウド型
不特定多数に共有されたクラウド環境を提供するDaaSです。契約すれば誰でも利用できるため、セキュリティ性はあまり高くありません。またカスタマイズも難しいですが、その分安価で利用できます。
バーチャルプライベートクラウド型
IaaS・PaaS上に構築されたデスクトップを使用するDaaSです。ベースとなる部分を他社と共有しますが、DaaS自体を他の企業が使うことはないため、セキュリティ性・カスタマイズ性ともに高くなっています。
世界クラウドインフラ市場はAzureとAWSが過半数を占める
近年、クラウドインフラにはいろいろな企業が進出しています。中でも世界的に多く利用されているのが、Microsoftが提供する「Azure(Microsoft Azure)」とAmazonが提供する「AWS(Amazon Web Services)」です。シンガポールの調査会社「Canalys」が発表した、「2019年度の世界クラウドインフラ市場(支出額ベース)」に関する調査結果によると、1位は「AWS」、2位は「Azure」となっており、この2つが半数以上を占めています。最近ではAzureの伸び率が著しいことが以下よりわかります。
AzureとAWSの特徴の違い
では、AzureとAWSにはどのような違いがあるのでしょうか?ここではそれぞれのDaaSの特徴を紹介します。
AzureのDaaS「Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)(AVD)」
そもそも「Azure」とは、Microsoftが提供するクラウドプラットフォームです。そのサービスの中の1つに、「Azure Virtual Desktop(旧Windows Virtual Desktop)(AVD)」と呼ばれるDaaSサービスがあります。AVD はMicrosoftが提供するため、Microsoft 365など、Microsoftサービスとの親和性が高いのが特徴です。
さらに、Windows 10のマルチセッション接続に対応しています。この機能は、Windows 10をOSとしてDaaSを構築する場合に必要な機能です。また、すでにサポートが終了したWindows 7の拡張セキュリティ更新プログラムが無料で利用できます。
現在Microsoft製品をよく利用しており、Windows 10をOSに利用したい場合は、AVDがおすすめです。
AWSのDaaS「Workspaces」
「AWS」は、Amazonが提供するクラウドプラットフォームです。その中サービスの1つに、「Workspaces」と呼ばれるDaaSサービスの1つがあります。AWSは10年以上クラウドサービスを提供しており、安心感があります。料金体系もさまざまで、人数に応じた料金を支払えるのが特徴です。
またWindowsとLinux のデスクトップに適応しており、高速セットアップを利用すれば数分でセットアップが完了するのも1つの特徴です。
AzureとAWSのDaaS費用を比較
では、AzureとAWSのDaaS費用はどのくらいかかるのでしょうか?上で説明した「AVD」と「Workspaces」の費用を比べてみましょう。仮想デスクトップや回線、運用にかかるコストはサービス業者によって異なるため、今回は割愛します。
【AzureとAWSのDaaS費用比較】
主な費用 |
WDS(Azure) |
Workspaces(AWS) |
Windowsクライアントライセンス |
月760円/ユーザー |
月1,360円/ユーザー |
Officeライセンス |
月1,310円/ユーザー |
月1,605円/ユーザー |
管理プレーン |
無料 |
サービスによる |
※Workspacesは専有型ホスト限定
※1ドル=107円で計算
クライアントライセンスはAzureの方が安い
上記の表の通り、AVDとWorkspacesのクライアントライセンスは、ユーザー1人につき月額600円ほどの違いがあります。
また、OfficeライセンスもAzureの方が300円ほど安くなっており、管理プレーンも無料で含まれます。費用だけで見れば、Azureは低価格で利用しやすいサービスといえます。
ただし、仮想デスクトップや回線、運用にかかるコストは業者によって異なり、トータルで考える必要があります。導入前にサービス提供事業者などの相談することをお勧めいたします。
まとめ
DaaSは、新しい働き方を取り入れるためにも必要なクラウドサービスの1種です。中でも人気なサービスにAzureとAWSがあります。それぞれ特徴が異なるほか、導入にかかるコストも異なります。導入の際は、自社に必要なサービスをよく考え、それにあった製品を検討しましょう。