システム開発やアプリケーション開発の領域において、大きなテーマとなるのが「受託開発」か「自社開発」かという点です。そこで本記事では、受託開発と自社開発のメリットとデメリットについて解説します。併せて「共創型開発」についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
受託開発(SIer)とは
受託開発とは、発注者側の視点から見ると、自社が求めるシステムやアプリケーションの開発を外部企業に依頼する開発手法です。制作者側の視点では、企業からシステムの設計や開発を請負うビジネスモデルを指します。そして、発注者の求める業務要件やシステム要件に応じて、設計から納品に至るすべてのプロセスを一貫して行う事業者を「システムインテグレーター(SIer)」と呼びます。
SIerの役割は、発注者の求めるシステム環境をオーダーメイドで構築することです。企業の基幹系システムや情報系システムの企画・要件定義・設計・開発・テスト・リリース・保守・運用管理などが主な業務内容に該当します。サーバーやデータベース管理システムの構築、ハードウェア用の組込みシステム開発などもSIerの業務領域です。また、近年ではiOSやAndroidなどのアプリケーション開発もSIerの主要業務といえます。
自社開発とは
自社開発とは、システムやアプリケーションの設計・開発などを自社で行う開発手法です。自社にシステム開発部門やシステム管理部門を設立し、高度な技術と知識を要するエンジニアやプログラマーを雇用することで、外部のSIerに委託することなくシステム開発の内製化が可能となります。そして、企画・要件定義・設計・開発・テスト・リリース・保守・運用管理など、システム開発における全工程を自社のリソースで賄うのが自社開発の特徴です。
一般的にIT関連の事業を本業とする企業以外では、業務システムを自社開発する事例は多くありませんでした。しかし、近年では「Microsoft Azure」や「Amazon Web Services」のようなクラウドコンピューティングが普及し、自社開発を実行しやすい環境が整いつつあります。そのため、システム開発やアプリケーション開発の内製化を推進する企業が増加傾向にあり、受託開発の市場規模は縮小していくと予測されています。
受託開発を利用するメリット・デメリット
ここでは、受託開発のメリットとデメリットについて解説します。
メリット
受託開発を利用する大きなメリットのひとつは、業績向上に直結するコア業務に自社のリソースを集中できる点です。企業とは、事業活動を通じて製品やサービスといった付加価値を創出し、その提供によって利益を得ることで発展していく組織です。企業にとっての重要課題は、いかにして効率的に付加価値を創出するかであり、そのためにはヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を生産的に活用する必要があります。
業務システムやアプリケーションは事業活動を展開する上で欠かせないソリューションですが、その設計や開発プロセスそのものは付加価値を生み出すものではありません。システム開発の業務領域をSIerに委託することで、マーケティング戦略の立案やプロモーション展開の策定など、自社の業績やブランド価値の向上に直結するコア業務にリソースを集中的に投入できます。
また、自社にエンジニアやプログラマーを雇用する必要がなく、システム開発やITインフラの管理に要するリソースの維持コストを削減できる点も大きなメリットです。さらに開発したシステムに不具合が発生しても、1年以内に通知すれば無償の修理や代金の減額を請求できる「契約不適合責任」があるため、開発に伴うリスクを最小化できるというメリットもあります。
デメリット
SIerに開発を委託するデメリットとして挙げられるのが開発費用です。もちろん、構築するシステムやITインフラの規模、依頼するSIerによってコストは大きく変動しますが、基本的に内製化する場合と比較して開発費用は高額になります。また、受託開発は開発プロジェクトを主体的にコントロールできないため、納期の遅滞やリリースの延期といったトラブルに見舞われるリスクもはらんでいます。
自社開発を行うメリット・デメリット
ここからは、自社開発によって得られるメリットとデメリットについて解説していきます。
メリット
自社開発の大きなメリットは、SIerに依存することなく、開発プロジェクトを柔軟にコントロールできる点です。開発工程を内製化することでSIerのスケジュールや開発費用などに影響されず、工程やツール、品質やコストなどを自社にとって最適な形にコントロールできます。そして、システム開発やアプリケーション開発のノウハウやナレッジが蓄積されるため、経営基盤の総合的な強化に寄与する点も自社開発のメリットです。
また、自社開発の場合は企画者と開発者のコミュニケーションコストが低く、現場の声を素早く要件に反映できるというメリットもあります。実際に利用するのは現場で働く従業員であり、その声を拾い上げずして自社に最適化されたシステム環境を構築することはできません。直接的なコミュニケーションによって細かいニュアンスを汲み取れるため、自社の業務要件に最適化されたシステムを実装できる可能性が高まります。
そして、何よりも自社開発の最大のメリットといえるのが、受託開発と比較して開発コストを抑えられる点です。たとえば、受託開発では要件や仕様を変更せざるを得なくなった場合、手戻り分に応じて開発コストも増大します。自社開発であれば外注によるマージン分がなくなるため、より安価なコストで柔軟に要件や仕様の変更に対応できます。
デメリット
自社開発のデメリットは、専門的な技術と知識を有する高度な人材を集めなくてはならない点です。システムやアプリケーション開発を事業領域とする企業でない場合、エンジニアやプログラマーを継続的に雇用するのは容易ではありません。また、人的資源を開発業務に割く必要があるため、業績向上に直結するコア業務に投入できるリソースが減少するというデメリットがあります。
今後求められるのは“共創型”の自社開発
受託開発と自社開発のどちらが優れているかというのは、一概に決められるものではありません。それぞれにメリットとデメリットがあり、会社の事業形態や組織体制によって最適解が異なります。また、開発業務を100%内製化するには限界があり、すべてを受託開発するのもSIerへの依存度やコスト面から適切とはいえません。
そこで重要となるのが、自社とSIerで共同しながら進める「共創型開発」です。これは、自社とSIerで得意領域を補完し合いながら設計・開発を進めていく手法で、より効率的な開発体制を整備できます。また、共創型開発は自社と外部パートナーとの関係性のみを示すわけではありません。自社のシステム開発担当者と運用担当者が協調して開発を推進する「DevOps」も共創型開発の目指すところです。今後はシステムやアプリケーションの開発を外部に丸投げするのではなく、共同で推進していく共創型開発体制の構築が求められます。
共創型開発体制を支援する取り組み
共創型開発体制の構築を目指す企業におすすめしたいのが、Microsoftの日本法人「日本マイクロソフト株式会社」が提供する「Cloud Native Dojo」です。Cloud Native Dojoは、クラウドネイティブな開発手法の導入を検討している企業向けに提供される開発者育成プログラムです。アジャイル開発やスクラム開発の知見を有するパートナー企業と協働しながら、共創型の開発手法を学べます。
まとめ
変化が加速する現代市場のなかで競争優位性を確立するためには、自社とSIerで協働する共創型開発体制の構築が求められます。そのためには、クラウドコンピューティングをベースとした敏捷性と柔軟性に優れるシステム環境が必要です。モダンな開発環境を目指す企業は、Microsoft Azureの導入をご検討ください。