クラウドネイティブアーキテクチャという言葉は、近年のクラウド化が進む時代においてよく取り沙汰されます。
現代のIT社会のなかで経営を効率化させるには、クラウドについて知識を増やしていくことは不可欠と言えるでしょう。そのためクラウドネイティブアーキテクチャの概念や原則、メリットやデメリットについても、積極的に目を向けておきたいところです。
そこで今回は、クラウドネイティブアーキテクチャとは何かという基礎的なポイントを整理したうえで、重要な5つの原則やメリットなどを解説していきます。
クラウドネイティブアーキテクチャとは?
IT化が著しく進む現代のなかでは、あらゆる業界・企業は、クラウド移行のプロジェクトを進めています。まさにクラウド時代とも呼べるなかでは、クラウドにかかわる知識を充実させていくことは欠かせないことの一つです。
そこでチェックしておきたいIT用語の一つに、「クラウドネイティブアーキテクチャ」というものがあります。
まず、クラウドネイティブとは何かというポイントから整理していきましょう。これは、クラウドが持つ利点や魅力を最大限活かしてシステムなどを運用していく考え方のことを指します。
クラウドサービスが主流となった現代では、クラウド環境でのシステムは「最初からクラウドで運用することを前提とすることで、その機能を最大化するかたちで設計されている」特徴を持っています。
そしてITの分野におけるアーキテクチャとは、構造・設計概念を示します。したがってクラウドネイティブアーキテクチャとは、この「大クラウド時代」とも言える環境の中で、クラウドの利点を最大限活用し、新たな可能性を見いだすことを目的としているソフトウェアやシステムの構造のことをいいます。
あらゆる部門の業務の効率化を目指してクラウドを活用していくには、そして近年のDX化に対応していくには、クラウドネイティブアーキテクチャのアプローチでクラウドをフル活用することが求められると言えるでしょう。
クラウドネイティブアーキテクチャの原則
ネットワーク環境の中でシステムを運用できるクラウドには多くの可能性があり、ビジネス環境を今後もよい方向に変化させていくことが考えられます。
クラウドの特徴にそってシステムアーキテクチャを最適化するには、以下のような原則にのっとっていくことが不可欠です。
- 自動化を導入する
- 状態の保存を意識する
- マネージドサービスを利用する
- セキュリティを強化する
- アーキテクチャの改良を常に目指す
1つ目は一部業務の自動化を前提として設計を行うことです。クラウド環境における業務の自動化は、わかりやすく効率化をもたらします。ヒューマンエラーを防ぐことにもつながります。そして2つ目はクラウド環境での状態の保存です。データをどのタイミングで、どのように格納していくのか意識して設計を行うことが必要となります。
続いて3つ目のマネージドサービスの利用は、ユーザーのあらゆる管理業務を楽にします。導入・運用業務を任せ、よりコアな業務に集中できる環境を作り上げることが大切です。4つ目のセキュリティの強化は、クラウドネイティブアーキテクチャのあり方を考えるうえで欠かせないポイントです。ネットワーク上で運用するという性質を考慮し、強固なセキュリティ対策を敷くことが重要です。
そして最後のアーキテクチャの改良は、常に意識しなければならない課題の一つです。時代の変化にあわせて改良を行い、利益の最大化につなげていくことが昨今のビジネス環境に求められることなのです。
クラウドネイティブとクラウドファーストの違い
クラウドにかかわる用語には、類似した用語もよく取り沙汰されます。そのうちの一つにクラウドファーストがあります。
これは、システムを構築するにあたってクラウド環境での運用を優先的に検討するという考え方を指します。
いずれもクラウド利用に重きを置く考え方であることは確かですが、クラウドネイティブは「よりクラウド環境に最適化したビジネスを行っていくもの」になります。
というのも、クラウドファーストはあくまで「クラウド環境を優先して考えているのみ」にとどまるからです。このため必要に応じて、オンプレミス環境での運用が選択されることもあることがわかります。
一方クラウドネイティブは、もとよりクラウド環境でシステム運用を行うことを前提としているのが特徴です。このためクラウドネイティブの考え方では、設計を進める際にはクラウド利用がそもそものスタート地点になります。
クラウドネイティブアーキテクチャのメリット
昨今のIT環境のあり方において欠かせないクラウドの利用ですが、クラウドネイティブアーキテクチャの考え方には、メリットもあればデメリットもあります。
クラウド前提でビジネス環境を最適化していくためには、まず以下のメリットを整理しておくことが大切です。
コスト削減につながる
やはり見逃せないメリットは、コストの大幅な削減です。
従来のオンプレミス環境では、構築から運用、保守・メンテナンス、そして改良まで高いコストが必要になり、もちろん必要な人員の配置も不可欠でした。したがって人員コストが大きくかかっていたのも明白で、リソース確保にも手間がかかっていました。
しかしクラウドでシステム運用をしていくとなれば、基本的にはすべてをベンダーに任せることが可能です。必要なコストが最低限に絞られ、エンジニアを配置する必要もなくなります。
変更にも柔軟に対応可能
クラウドなら、あらゆる変更にも臨機応変に対応していけるのが魅力です。クラウドネイティブアーキテクチャの場合、クラウド前提でシステムを構築するため、継続的に変更を行うことを考えたうえでの構築が可能となります。このため時代の変化やトレンドに合わせて効率的な運用を実現していけるのです。
クラウドネイティブアーキテクチャのデメリット
クラウドネイティブアーキテクチャにはあらゆるメリットがありますが、以下のようなデメリットや注意点にも、あらかじめ目を向けておく必要はあります。
セキュリティやITリテラシーなど、実際のところ課題として挙げられることは少なくありません。
セキュリティ面での課題がある
クラウドネイティブアーキテクチャの原則には、セキュリティ強化が挙げられています。実際にクラウドはこれまでのオンプレミス環境と違い、「境界のないネットワーク上で運用を行う」という特性があるため、セキュリティ強化についての課題は看過できないものとなります。
セキュリティ対策の品質についても、ベンダー次第で変わってくるのはリスクの一つと言えるでしょう。データの重要性についての理解も、自社とベンダーではどうしても認識が異なるため、ずさんな扱いをされてリスクを高めることになることも、まったくないとは言い切れません。
専門知識が必要
ITリテラシーや技術的なスキル・知識の問題もあります。クラウド環境であらゆるシステムを運用していくことは、これまでのビジネス環境を思えば、革命的とも言える変化を取り入れることです。
「クラウドとは何か」という概念への理解はもちろんのこと、ITリテラシーを総合的に身に着ける必要があるのはいうまでもないでしょう。クラウドの利便性とセキュリティ課題は表裏一体とも言えるため、知識が不足した状態で運用を行うと、場合によっては情報流出などのセキュリティ事故につながる可能性も出てきます。
まとめ
クラウドネイティブアーキテクチャには多くのメリットとデメリットがあるため、原則とともに十分な理解が必要となります。
クラウドネイティブの環境では、さまざまな業務を効率化させられる可能性があると言えるでしょう。しかしセキュリティにおいて課題があったり専門知識が必要だったりなどの注意点は伴います。クラウドネイティブアーキテクチャへの理解を深めたうえで、クラウドを取り入れた新たなビジネス環境を構築していきましょう。
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