企業においてIT環境のクラウド移行が進んでおり、データベースも例外ではありません。クラウド型データベースには無料で使用できるものもありますが、使える機能や操作性に違いがあります。この記事では無料で利用できるおすすめのクラウド型データベースについて説明します。
クラウド型データベースとは?
クラウド型データベースは、名前の通りクラウド上で提供されるデータベースです。クラウド型といっても、実際にはクラウドサービスを提供するベンダー所有のデータセンターにデータベースを構築しており、ユーザー側で物理的なサーバーを所持する必要がありません。
クラウド型データベースには、いくつかのサービス形態があります。1つめは、ベンダーからクラウド上に仮想マシンスペースを購入して、そこにデータベースを構築する手法です。この場合、管理やセキュリティなどはユーザーが行わなければいけませんが、拡張性の高い機能を利用できます。
もう1つは、サブスクリプションで契約する形態です。このタイプは、ベンダーが管理から運用まで幅広く行うため、ユーザーは最適化されたデータベースを常に利用できます。ただし、前者と比べるとシステム構築の自由度が低くなります。
オンプレミス型データベースとの違い
オンプレミス型データベースでは、ユーザー自身が設置したサーバーにデータベースを構築します。そのため、運用までに期間を要し、その分人的コストもかかります。そのうえ、データベースの管理・運用はユーザーで行わなければいけません。
一方、クラウド型データベースでは、サーバーを仮想マシン上で組み立てるか、すでにベンダーが用意しているサーバーをそのまま利用します。実機サーバーを購入しなくてもいい分、初期費用が抑えられるうえ、管理などもベンダー側が行うので、運用コストも抑えられます。利用するにはインターネット環境が必須ですが、クラウドサービスであることから契約すればすぐに利用可能です。
クラウド型データベースを導入するメリット
クラウド型データベースを導入するメリットをいくつかの観点から解説します。
自社でセキュリティ管理をする必要がない
クラウド上のサーバーやデータベースは、ベンダーが管理を行います。バックアップ、パッチ適用、更新など、セキュリティに関わる多くの問題を自動化しており、ユーザーは常に最新のサービスを受けられます。メンテナンスも定期的に行われるため、物理的な問題も発生しにくいです。これらの管理はユーザーが行う管理よりも高いレベルで行われるため、安心してデータベースを利用できるでしょう。
さらにユーザーの管理権限など、細かい設定をユーザー側で行えるので、適切な環境設定を行えばより強固なセキュリティ構築も可能です。
また、データセンターをベンダーが管理しているので、可用性が高いのもポイントです。トラブルや災害にも強く、いつでも安定したサービスを受けられます。
導入コストが削減できる
大規模なサーバーを必要とする大企業では、一からサーバーを構築するには、およそ数百万円〜1,000万円ほどかかるとされます。
中小企業クラスでも、最低数十万円もの初期費用は必要です。クラウド型データベースを利用することで、この費用が不要になります。
また、クラウド型データベースでは、従量課金制を採用しているサービスや無料で提供しているものもあります。これらを利用すれば、導入コストはもちろん、運用コストも抑えられるでしょう。
利用開始までの時間を短縮できる
物理サーバーの場合、導入する際には、機器の購入やサーバー構築期間が必要です。特に構築期間はおおよそ数週間から数ヶ月にもなるため、すぐには利用できません。
クラウド型データサーバーであれば、データベースはすでに作られたものが提供されるので、契約すればすぐにでも使用できます。そのため、利用前にデータベースを構築する必要がないのも大きなメリットといえます。
代表的なクラウド型データベース
無料で利用できるクラウド型データベースの中から代表的なサービスを4つご紹介します。
Azure SQL Database
Azure SQL Databaseは、Microsoft社が提供するクラウドサービス「Microsoft Azure」のプラットフォームを利用できるデータベースです。アカウントを作るだけで、1年間無料で利用できます。
Microsoft SQL Serverをクラウドベースにしたもので、基本的な特徴や機能はSQL Serverに準拠しています。そのため、Office製品との連携に優れ、Excelにデータのインポート・エクスポートが可能です。
Microsoftが提供するプラットフォームということもあり、高い可用性を誇ります。自動バックアップ・更新・リソースのスケーリングにも対応しているので、メンテナンスもセキュリティ管理も不要です。また、Microsoft Azureでは、「PostgreSQL」「MySQL」「MariaDB」「Cosmos DB」のクラウドサービスも提供しています。
無料料金枠では、250GBを上限として利用ができます。ただし、データ容量が250GBを上回った場合は、追加料金が発生するので注意が必要です。
Amazon RDS
Amazon RDSは、AWSプラットフォーム上で利用できるクラウド型データベースです。AWSのサービスであり、マネジメントコンソールで直感的な操作ができる他、コマンドラインインターフェイスも活用できます。
データベースエンジンは、「Microsoft SQL Server」「Amazon Aurora」PostgreSQL」「MariaDB」「MySQL」「Oracle」から好きなものを選択して使用します。そのため、オンプレミスで稼働していたサービスを、クラウドに移行することも可能です。
Amazon RDSでは、無料利用枠として「無料トライアル」「12ヶ月間無料」「無期限無料」の3つが用意されています。アカウント作成した日から換算され、無料期間終了前にメールで知らせてくれます。
有料サービスに移行後は、従量課金と定額制を設けており、データベースインスタンス1つにつき毎月料金がかかります。インスタンスが必要なくなった場合は、すぐに削除できるので不必要な料金はかかりません。また、リザーブドインスタンスというシステムがあり、年単位の契約によってインスタンスの割引が受けられます。
Google Cloud SQL
Google Cloud SQLは、名前の通りGoogle社によるクラウド型データベースです。Googleといえば、検索サイトやYouTubeといったサービスが挙げられますが、これらと同じ技術を用いたプラットフォームを活用できます。
データベースエンジンは、「PostgreSQL」「SQL Server」「MySQL」の3つで、フルマネージドでサービスを提供しています。細かい設定や運用は、全てGoogleが行うため保守コストの削減に繋げられます。
さらに24時間365日のサポートを行っているため、トラブルの時もすぐに対応してくれます。また、BigQueryやGKEなどのGoogle Cloudサービスとの連携も可能なので、Google製品を主に利用しているユーザーに特におすすめです。
無料枠には、「無料トライアル(90日間300ドル制限)」「無期限無料」の2つを設けています。無料トライアルでは、300ドル以上の利用か90日間を超えたら、サービス利用が終了します。引き続きサービスを利用する場合には、有料枠に移行しなければいけません。
kintone
サイボウズ社によるクラウドサービスがkintoneです。クラウドで業務アプリケーションを作成するためのプラットフォームで、簡単・素早くを売りにしたサービスを提供しています。基本的にノンコードでのアプリケーション作成ができ、データベースにおいても同様のシステムが採用されています。
メニューからドラッグ&ドロップしてシステムを構築するだけの簡単操作でデータベースを利用できます。難しい知識も不要なため、ITエンジニア以外でもシステム作成が可能です。大規模で複雑なデータベースを作成するというよりも、多くの企業が簡単に自社向け業務アプリケーションを作成するために構築するデータベース向けと考えるといいでしょう。多くのテンプレートも用意されているので、定型的なデータベースはすぐに作成できます。スマートフォンにも対応しているので、出先で確認したい時にも便利です。
無料枠には、30日間のトライアルがあります。30日間を超えて使用したい場合は、本契約が必要です。
まとめ
無料で利用できるクラウド型データベースには、Azure SQL Database、Amazon RDS、Google Cloud SQL、kintoneなどがあります。
無期限無料で利用できる製品もありますが、ツールによって向き不向きもあるので、構築するデータベースに合わせて選択しましょう。