クラウド移行(インフラ・DB)

クラウドコンピューティングってどんなもの?定義やメリットをわかりやすく紹介(初心者向け)

昨今、ビジネスシーンなどにおいて「クラウド」という言葉を聞く機会が増えました。しかし、クラウドサービスやクラウドコンピューティングという言葉は一般的になりましたが、いざ説明しようとすると意外と難しいものです。当記事では、初心者でも概要を理解しやすいように、事例・メリット・デメリットだけでなく、利用するクラウドコンピューティングを選ぶ判断基準も交えながらわかりやすく解説しています。

クラウドコンピューティングってどんなもの?定義やメリットをわかりやすく紹介(初心者向け)01

クラウド移行 まるわかりガイド

クラウドコンピューティングの定義

クラウドコンピューティングとは、インターネット上のサーバーにあるコンピューターが提供している機能を、インターネット経由で利用する仕組みのことを指します。わかりやすくいうと「インターネット上でアプリケーション込みでも利用できるサービス」のことです。GmailやYahoo!メールなどを例に挙げると、イメージしやすいかもしれません。

通常は、ローカル環境にあるコンピューター(PC)内にさまざまなアプリケーションをインストールして利用します。会社で使用するPCであれば、WordやExcel、Outlookといったアプリケーションがインストールされている状態です。

一方で、クラウドコンピューティング形態で提供するサービス(以下クラウドサービス)の場合は、自身のPCにアプリケーションをインストールする必要はありません。インターネットに接続できる環境があれば、サーバー上で提供している機能やサービスを利用することができます。会社のPCからでも、自宅でスマホからでも、同一のデータにアクセスでき、同一のサービスを利用できることが特長です。

ちなみに、クラウドとは「雲」のことです。インターネットを図式化する際に雲の図柄で表すことから、インターネット上の環境のことをクラウドと呼んでいます。さらに、クラウドコンピューティングという言葉が普及したことで、今まで使っていたローカルのサーバー環境は「オンプレミス」と呼称されるようになりました。

エッジコンピューティング

クラウドコンピューティングと対になるような仕組みが、エッジコンピューティングです。これは、インターネットサーバーより手前のデバイス(スマホ、ルータなど)でデータ処理を行う技術を指します。エッジとは「端」のことで、インターネットの端のデバイスで処理することを意味しています。クラウドコンピューティングのように、インターネット上のサーバーで集中処理を行うと、サーバーに負荷がかかります。また、データを送信するための時間も必要です。そのため、リアルタイムで軽い処理を行いたいIoT機器などでは、エッジコンピューティングの技術を用いることで、負荷分散や遅延防止を実現させています。

クラウドコンピューティングのメリット

クラウドコンピューティングが普及した背景には、以下のようなメリットが、今どきのコンピューター利用環境やビジネス形態にマッチします。

【利点1】システム・環境構築が不要&拡張性が高い

今まではアプリケーションやシステムを利用したい場合、PCにアプリケーションをインストールしたり、組織であれば自社サーバーを立ち上げてシステム環境を用意したりする必要がありました。しかし、これには時間もコストもかかります。

クラウドサービスであれば、サービス提供側がシステム環境などをすべて用意してくれているので、利用したい期間だけ利用料を支払えば、いつでも利用可能です。

アプリケーションのバージョンが新しくなったときにも、今までは新しくパッケージを買い直したり、アップデートの手続きをしたりする必要がありました。しかし、クラウドサービスであればサービス提供側がすべて対応してくれます。自分たちで何かを用意する必要がなく、また、不具合対応やメンテナンスなども不要になるのです。

一方で、クラウドサービスを提供する側では、大規模なデータセンターや膨大なサーバー機器などを用意し、インターネット経由でユーザーがサービスを利用できるような環境を構築しています。

【利点2】必要なときにすぐに利用できる

今までは、利用したいソフトウェアのパッケージを購入し、組織で利用するサービスであれば契約書のやりとりなどが必要でした。

クラウドサービスであれば、利用したい場合には申し込みをして、利用料を支払えばすぐに利用することができます。複雑な契約や書類のやりとりはほとんどなく、多くはインターネット上で利用申請と支払い手続きをするだけなので、スムーズに利用できます。

【利点3】初期投資が不要、必要な期間だけ支払えばよい

先述のように、今まではアプリケーションを利用するためにサーバーを準備したり、パッケージを購入したりするなどの初期投資が必要でした。クラウドサービスでは基本的に、「利用した期間・量だけ支払う」という従量課金制になるため、利用したい期間分の利用料を支払うだけで済みます。仮に、一時的にアクセス負荷が高まると見込まれるWebサービスがあったとしましょう。そのような場合、クラウドサービスでその期間中だけサーバー環境をレンタルすれば、数日間分のサーバー利用料を支払うだけで、快適にWebサービスを利用できます。もしもオンプレミスで用意する場合は、多額のコストと大きな手間がかかります。

【利点4】マルチデバイス環境で利用できる

今までは、あるPCで作業した履歴は、他のPCで引き継ぐことができませんでした。クラウドサービスであれば、利用した履歴やデータはすべてサーバー上に保存されています。そのため、どのPCであっても、あるいはスマホなど別のデバイスであっても、ログインすれば引き継ぐことが可能です。

【利点5】災害時でも復旧しやすい

自社でサーバー環境を用意するオンプレミスの場合、台風や地震、火事などの予期せぬ災害にあったときに、復旧に時間がかかる可能性があります。クラウドのホスティングサービスを利用することで、万が一自社で保存しているデータが破損した場合でも、クラウドサービスに保存しておいたデータから容易に復旧することが可能です。

初期投資が不要、かつ必要な期間だけ利用できるということは、スピード感がある開発ができることを意味します。業務効率化やコスト削減にも貢献するクラウドサービスは、現代のビジネスシーンにおいて非常に重要な技術となっています。

【利点6】セキュリティ面で安心できる

クラウドコンピューティングは、強力なセキュリティ対策が施されています。オンプレミス環境でセキュリティ対策を行う場合は、相応の人材、コスト、計画などが必要です。クラウドサービスでは、クラウド事業者によってサービス提供部分にはこれらが用意されています。また、データセンターは監視カメラや警備員の設置などによる物理的な防犯対策がされているため、自社で行う手軽なセキュリティよりも強化された環境といえるでしょう。

クラウドコンピューティングの課題点・デメリット

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近年、クラウドコンピューティングが普及していますが、導入に踏みきれない企業もあります。これは以下のようなデメリットを抱えているためです。

【課題1】インターネット環境がないと利用できない

クラウドサービスはインターネットを経由して、契約中のサービスにアクセスすることで利用できます。そのため、インターネット環境がない場合は、クラウドサービスを利用することができません。強力なセキュリティで守られているクラウド環境ですが、インターネットを経由することによる、情報漏洩のリスクが高まることに抵抗がある企業もあるでしょう。また、インターネット経由での通信が必要なため、インターネット接続をできるスマートフォンやパソコンが手元になければアクセスできません。

【課題2】クラウドサービス終了に伴うリスクがある

クラウドサービスは、提供しているクラウド事業者の意向でサービスが終了してしまう場合があります。その場合は次の移行先を探さなければなりません。当然、新たな移行先環境への移行にも労力が必要となるでしょう。サービスが終了しなくとも、より良いサービスのリリースにより移行したい場合が出てくる可能性があります。クラウドサービス終了や新サービスの登場の可能性を踏まえ、クラウド事業者の信頼性、サービスの継続性、IT業界のトレンドを考慮して、利用を決定しなければなりません。

【課題3】カスタマイズ性が低い

クラウドサービスは自社で自由にカスタムできるオンプレミスに比べて、カスタマイズ性が低くなってしまいます。クラウド事業者によって、多くの場合はカスタムされた形態のサービスが提供されるためです。クラウドサービスの利用を考える際は、提供されている形態で自社のサービス、スペックなどの要件を満たしているのかを十分に考慮しなければなりません。カスタマイズ性が高いクラウド事業者やサービスを選定しましょう。

【課題4】既存の社内システムとの相性が悪い可能性がある

既存の社内システムをクラウドに移行する際には、クラウドサービスと社内システムの相性を考慮しなければなりません。相性が悪いと運用時のトラブルが増える、パフォーマンスが不十分になる可能性が高く、顧客の信頼度低下につながってしまいます。また、利用当初は相性に問題がなくても、クラウドサービス側のバージョンアップにより相性が悪くなってしまう可能性もあります。これらの事態を避けるためにも、相性が良いクラウドサービスを選定することが大切です。

クラウドコンピューティングの活用方法

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クラウドコンピューティングは、その利便性から多くの用途で活躍しています。以下では3つの例をご紹介します。

【用途1】大規模データの保存

クラウドコンピューティングは大規模データの保存に利用されています。企業であればオンプレミスでのデータ保管はセキュリティ、重複削除、増設、ハードウェアの保守など多くの問題にさらされてきました。クラウドコンピューティングは、これらの問題を全てクラウド事業者が担うため、抱えている問題から解放されます。また、保存したデータを別のサービスと連携させて分析に利用することも容易です。

【用途2】複数人でのファイルの共有

複数人でのファイル共有に、クラウドコンピューティングを利用している方は多いのではないでしょうか。SharePoint、Googleドライブなどがその例です。アクセスできるユーザーを制限できるため、見られたくない相手に内容を見られることもありません。同時に複数人がファイルを編集してしまい、後からマージ作業をしなければならないという問題も起きにくくなりました。

【用途3】新規システムの開発

クラウドコンピューティングでは、最短数秒で開発環境をデプロイできます。従来のシステムの開発はハードウェア調達、調達後にも開発環境の構築など事前準備に時間と労力がかかっていました。クラウドコンピューティングの利用によってこれらの面倒な事前準備から解放されて、エンジニアが開発に取り組みやすくなっています。

クラウドコンピューティングの分類

クラウドコンピューティングは、提供する機能の種類によって分類することができます。大別すると、SaaS、PaaS、IaaSの3つです。それぞれのサービスについて簡単に説明します。

SaaS(Software as a Service)

インターネット経由でソフトウェアを提供するサービスのことを指します。該当するサービスは、電子メールや社内グループウェア、顧客管理、クラウド型ERPなどです。

プライベートでもビジネスでも幅広く利用されており、ユーザーが耳にする機会の多いものです。

PaaS(Platform as a Service)

インターネット経由でアプリケーションを利用するためのプラットフォームを提供するサービスを指します。PaaSを利用することで、OSのインストールやネットワーク設定が不要になります。主にビジネスシーンで利用されており、Microsoft AzureやAWSが有名です。

IaaS(Infrastructure as a Service)

インターネット経由でインフラ部分を提供するサービスのことを指します。これをHaaS(Hardware as a Service)と呼び、IaaSを利用することで、ストレージやメモリなどのハードウェア部分の環境準備が不要になります。Microsoft AzureやAWSが有名です。

上記3つの他に、提供先の環境によってプライベートクラウドとパブリッククラウドに分類することもあります。

プライベートクラウド

大企業などが自社の社員に利用させるために、専用に構築したクラウドコンピューティング環境のことです。自社の用途に合わせてカスタマイズできることが特徴となっています。。また環境を占有できるため、セキュリティ面の信頼性が高くなります。

パブリッククラウド

インターネット経由で誰でも利用できるクラウドコンピューティング環境のことを、パブリッククラウドと呼びます。一般的に私たちが利用しているのは、パブリッククラウドです。

クラウドコンピューティングの具体例

それでは、実際にどのようなサービスがあるのか、身近な例をご紹介します。

【Microsoft Azure】

Microsoft Azureは、ビジネス上の課題への対応を支援するためにマイクロソフトが提供するIaaS/PaaSサービスの集合体です。世界規模の巨大なネットワークに対し、お気に入りのツールやフレームワークを使ってアプリケーションを自在に構築、管理、展開することができます。さらには上記のようなサービスだけでなく、小売業や製造業、医療など業界に特化したクラウドサービスにも力を入れており幅広く利用されています。

【Microsoft Office 365】

マイクロソフトが提供するOffice 365は、使い慣れたOfficeの機能とクラウドの高い柔軟性を組み合わせたソリューションです。どこにいるときでも、デバイスに関係なく、仕事や共同作業を行うことができます。

【Sales Cloud】

Sales Cloudは、セールスフォースが提供しているクラウド型のCRM(顧客管理システム)、SFA(営業支援システム)です。クラウド上にあるデータベースに顧客情報や案件情報を保存し、どこからでも閲覧することができ、SaaSの分類になります。

【Dropbox】

Dropboxは、オンラインストレージと呼ばれるデータ管理サービスです。自身のコンピューター上にあるフォルダとクラウド上にある仮想フォルダを同期して、データをクラウド上に保存することができます。これはSaaSの分類される一つです。

【Amazon Alexa】

徐々に日本でも利用者が増えてきているスマートスピーカーですが、仕組みとしてはAmazon Alexaもクラウドサービスです。利用者がスマートスピーカーに話しかけた内容は、音声データとしてクラウドサーバーに送信されます。そして、クラウド側で音声認識・処理をし、その結果をスマートスピーカー側に返していくのです。

【クラウドサイン】

契約書や請求書などをクラウドに保存するサービスが、クラウドサインです。
既存の方法では紙面でのやりとりや押印の必要があった契約を、電子データのみで完結するようにしたことで、手続きの効率化を実現しました。
現在では、みずほ証券やリクルートなどの大企業をはじめ、多くの企業で導入が進んでいます。こちらもSaaSの分類です。

【Gmail】

Gmailは、Googleが提供するフリーのメールサービスです。2004年4月1日から提供を開始しており、WebメールとPOP3・SMTP、IMAPに対応しています。

【AWS(Amazon Web Services)】

AmazonのクラウドサービスであるAWSは、コンピューティング、ストレージ、データベース、分析ツール、アプリケーション、AI・機械学習サービス等、幅広いサービスを提供しています。また、同様のサービスをMicrosoft(Microsoft Azure)も提供しています。

【Dynamics 365】

マイクロソフトが提供するビジネスアプリケーションです。CRM/SFAやERPの機能をクラウドで提供しています。

適切なクラウドコンピューティングの選び方

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クラウドコンピューティングにはさまざまなサービスがあるため、自社の目的に合う適切なサービスを選択しなければなりません。選ぶための4つの基準を以下で解説します。

希望する機能が装備されているかどうか

なぜクラウド移行をするのかの目的と、どういった機能をクラウドに希望するのかをはっきりさせておきましょう。クラウドコンピューティングの利用自体が目的になってはいけません。必要機能が装備されていないクラウドを利用しても目的を果たせず、コストやリスクだけが増えてしまいます。そのような事態を防ぐためにも、クラウドコンピューティングに求める機能を明確にしておき、装備されているサービスの中から選びましょう。

内容とコストのバランスが取れているかどうか

新しいサービス導入を検討するには、コストパフォーマンスが重要になります。利用するサービスの内容とバランスが見合っているのか、必ず確認してください。複数のクラウド事業者が同じようなサービスを提供していても、金額が大きく違うことがあります。また、先述したように、仮にコスト面で優位でも相性が悪いサービスを利用すると、サービスのパフォーマンスが低下する可能性があります。サービスの内容確認に注力したうえで判断してください。

セキュリティ対策は十分かどうか

企業ごとに設けられているセキュリティレベルがあるはずです。利用を検討するクラウドコンピューティングがそのレベルを満たしているのかを必ず確認してください。クラウドコンピューティングはインターネット経由でアクセスするため、オンプレミス環境と比べれば情報漏洩のリスクが高くなります。リスクを減らすためにも、通信の暗号化など十分なセキュリティ対策が行われているクラウドコンピューティングを選択するようにしましょう。

サポート体制が充実しているかどうか

サポート体制の充実度合いもクラウドコンピューティング選択の基準となります。同様のサービスでも、利用時の不明点の対応や故障対応など解決が早くて利用しやすい方が、サポートが充実したサービスです。解決が早いほど、システムのパフォーマンスを発揮しやすく、社員も開発や運用に集中できるようになります。サポートが充実していることも一つの選択としてクラウドコンピューティングを選択してください。

クラウドコンピューティングを利用するときの注意点

クラウドコンピューティングは非常に便利な仕組みですが、利用するにあたっては注意が必要な点もあります。

無料で使えるクラウドサービスには注意

Gmailなどのように、無料で利用できるクラウドサービスも数多くあります。便利な反面、対価として自分の情報がビッグデータとして利用される可能性があることに注意が必要です。また、無料で提供されているクラウドサービスは、突然提供を終了してしまうケースもあります。

SLAに注意

クラウドコンピューティングは自社で資産を抱えないことによる大きなメリットがある反面、サービス提供会社のサービスレベルに準ずる必要があります。極論ではありますが、何か起こった場合には、自社のみで解決するのが難しいということです。もし、クラウドを活用する場合には、提供事業者が掲げるSLAや体制などを考慮して導入することが重要です。

まとめ

クラウドコンピューティングとは、インターネット経由でさまざまなコンピューティング資源(ソフトウェア、ハードウェア、処理性能、記憶領域、ファイル、データ、人工知能/機械学習など)を提供する仕組みのことです。
必要なときにすぐに利用できる、利用するための環境を用意しなくてよい、初期投資が少なくて済むといった点から、個人利用でもビジネスシーンにおいても欠かせないものになっています。
昨今ではMicrosoft OfficeやAdobe Creative Cloudのように、それまでアプリケーションをパッケージ形態で提供してきた企業でも、クラウドサービスとして提供する方針に変更するところが増えてきています。クラウドサービスを利用する目的・メリット・デメリット・判断基準をきちんと理解した上で、上手に有効活用していきましょう。

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