日本はデータ活用が進んでいないと評価されることもありますが、DX推進の流れから、激増するデータの重要性はますます高まっています。この記事では、データ活用にまつわる課題を解説するとともに、企業が扱うデータの種類にはどういったものがあるのか、またデータ活用をすることで得られるメリットについてご紹介します。
ビジネスに不可欠なデータ活用
市場の変化が著しい現代において、企業がビジネスを成功させるためには、日々蓄積されるデータを活用することが欠かせません。企業のデータ活用に関しては、各社からさまざまな本も出版されており、その重要性が広く認知されつつあります。以下ではまず、データ活用とは何か、またその課題についてご説明します。
そもそもビジネスにおけるデータ活用とは?
企業におけるデータ活用とは、社内で取得・蓄積したデータを経営やビジネスに役立てていくことを指します。一見するとデータは数字や記号で形作られていますが、それらを分析してみると、ビジネスを成功に導くために必要な要素が詰まっています。それらをただ社内で保管しておくだけでは、宝の持ち腐れといっても過言ではありません。会社が目指す姿に向けて課題を設定し、そのためにデータを収集・分析・加工などして有効活用することが、まさに「データ活用」の骨子といえます。
日本企業のデータ活用における課題
世界に目を向けてみても、DX推進の流れは大きく、積極的にデータ活用を進めている国はたくさんあります。しかし、ログデータ解析ソフトウェアベンダーのSplunk社が2020年3月に実施した調査によると、日本企業は経営の意思決定に対し、積極的にデータを分析・活用してはいるものの、データ活用の「成熟度(データ活用への意欲、専門ツールの整備、データ運用の有効性の3基準で評価した度合い)」は7ヵ国中(オーストラリア・中国・フランス・ドイツ・日本・英国・米国)最下位とのことです。
同社は、その原因について「データ分析ツール」と「データ分析スキル」の不足を指摘しています。これは、すなわちデータ活用における価値や有効性が、経営層をはじめ従業員にまだ完全に理解されていないということでしょう。また、データ活用を推そうとするムーブメントはあっても、システムのサイロ化により部署間での連携がとれていないことや、IT人材の不足なども課題として残されていると考えられます。
企業が扱うデータの量や種類は増えてきている
DXの流れがビジネスを大きく変革している昨今、企業が取り扱うデータの量や種類は爆発的に増えてきています。その背景には、コンピューターの高速化やデータ分析技術の進歩、AIや機械学習の普及などが挙げられるでしょう。
もちろん、それ以前から定番のExcelやERP(基幹システム)、SCM、CRMなどのシステムもデータ活用の一端を担っています。しかし、Webサイトに関するデータやIoT(Internet of Things)の浸透などにより、データ量や種類が増える要因は、ますます領域が広がってきているといえます。
そのような状況では、簡単にデータ活用を進めることは困難ですが、裏を返せば戦略的に有効活用することで競争優位性が保てるというメリットもあります。企業がビジネスを成功させるために、データ活用は今や重要な位置を占め、喫緊の課題になっているのです。
企業が持つデータの種類
ここからは、企業の分析対象となるデータの主な種類について、事例もからめて見ていきましょう。
顧客管理データ
ビジネスの先にいる顧客のことを理解せずに、マーケティングや営業は行えません。そのため、顧客に関わるあらゆるデータは非常に重要といえます。顧客管理データには、大きく分けて以下の2種類があります。
- 定量データ
数値化できる年齢や性別、住所、年収といった基本の属性情報や、購入履歴やWebサイトでの行動履歴などが含まれます。これらは会員登録やアンケートのほか、「Google Analytics」や「Adobe Analytics」などのアクセス解析ツールから取得します。 - 定性データ
数値化できない情報を指し、顧客の声やSNSでの反応などが該当します。定量データと異なり決まった収集方法はありませんが、顧客の心理状態を掴むために、アンケートや投稿の地道なチェック作業などによって、しっかり把握しておく必要があります。
社内データ
人事や労務など総務に関するものや、営業活動状況や在庫に関するものなど、社内ではたくさんのデータが日々発生します。それらを管理・分析することで、現状の課題を抽出でき、各組織におけるスムーズな業務推進や適切なコスト管理が実現するのです。経営やビジネスを成功させるためには、社外のみならず、足元にある社内のデータにも目を向けることが大切です。
業績データ
営業部門では、販売による売上や利益などの業績データも常に発生しています。それらを分析することで、市場規模を推測したり、順調に営業活動ができているのかを測ったりする指標になります。また、その分析結果から、今後さらに業績を伸ばしていくためにはどうすればよいか、品質改善を図るためにはどうすればよいか、といったインサイト(知見)も得られるでしょう。
製品データ
主に製造部門で扱われることが多いのが、製品データでしょう。自社の製品やサービスに何か問題があった場合、管理している製品データを活用して、品質を安定させるといった取り組みが可能になる場合があります。
ビジネスにおけるデータ活用のメリットとは
では、これらのデータを活用することによって、一体どのようなメリットがあるのでしょうか。以下で詳しく見ていきましょう。
売上の改善
まず、企業がデータを適切に管理し活用すると、経営に影響のある問題を引き起こしているボトルネックを早期発見でき、売り上げの改善につながるというメリットがあります。さらに、データ分析によって数値だけでは見えてこなかった顧客の心理を掴めれば、顧客満足度の向上や、顧客が生涯にわたって得られる価値、つまりLTV(Life Time Value)の上昇にも期待できるでしょう。
迅速な意思決定の実現
ビジネスの成功には、データ活用の重要性を経営層がしっかり認識し、全社を挙げて推進していくことが大切です。
個人の勘や経験則などを頼りに施策方針を決めていると、周囲と認識を合わせることにも時間がかかってしまいます。しかし、収集データをもとに課題を客観的に把握できれば、改善に向けた施策や取り組みについて、スピーディーかつ正確な意思決定が可能になり、共有もしやすくなるのです。
また、データを活用することで、誰が見ても納得できる取り組みができると、その企業で働く従業員の満足度にもつながると考えられます。
リスクの予測・回避
データ活用は現状把握だけでなく、将来的な変化の予測にも役立ちます。データ上の規則性や異常値を分析し、相関関係や因果関係を発見することで、事業の動向や今後の経営ビジョンを早期に描けるようになります。また、経営のリスクを予測することで、あらかじめそのリスクを回避する方法も検討しやすいでしょう。
新規事業の拡大
企業が新たなビジネスモデルを創出したい場合も、データ活用は必須です。一つひとつのデータだけでは見出せなくても、さまざまな種類のデータを組み合わせることで、市場や顧客のニーズを素早く読み取れます。
そして、データに基づいた確かな根拠をもって、新規事業を展開できるようになります。競合他社がまだ踏み入れていない市場へいち早く参入することで、自社の競合優位性を確立できるのも非常に大きなメリットといえるでしょう。
まとめ
今やビジネスの成功には、膨大なデータを分析・活用することが必須となっています。もしノウハウや人材不足に課題があるなら、複数のデータ統合から分析まで一貫して行える、Microsoft社提供の「Azure Synapse Analytics」の活用がおすすめです。ぜひ一度、導入を検討してみてはいかがでしょうか。