「ビットコイン」について詳しくは理解していなくても、言葉だけなら聞いたことがあるという方が大半かと思います。本稿のテーマは「ブロックチェーンについて解説する」ことですが、なぜ冒頭からビットコインが登場しているかというと、両者は密接に関係しているからです。本稿ではビットコインの解説を通じてブロックチェーンとは何なのか?を解説していきたいと思います。
ビットコインとは?
いわゆる仮想通貨の一種であり、元祖でもあります。ビットコインが誕生したのは2009年とすでに10年以上が経過しており、サトシ・ナカモトと自称している人物(あるいは団体)がネット上に投下した論文から実用化に至っています。名前からして日本人のようですが、その正体は謎のままです。
同人物が提出した論文というのは「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System(ビットコイン:端末間電子キャッシュシステム)」であり、PDFにすると9ページの非常に短い論文の中に、ビットコインの思想とシステムが体系的に描かれています。ビットコインやブロックチェーンについてある程度理解ができたら、一読をおすすめします。
仮想通貨について簡単に説明しておきますと、「実体のないお金(ポイントのような感覚)」というのが一番しっくりとくるかと思います。会員登録済みのECサイトで商品を購入すると大半の場合はポイントが付与されますが、これも一種の「実体のないお金」であり、イメージとしては仮想通貨に類似しています。
ECサイトのポイントと異なる点は、「実際のお金として使える」こと、「為替変動が起こる」ことです。ポイントは同じECサイト内か提携サービスでしか使用できませんが、仮想通貨は対応している店舗ならどこでも利用できますし、換金も可能です。円やドルなどの通過と同じなので為替変動も常に起きています。
ビットコインが目指したもの
サトシ・ナカモトなる人物がビットコインを通じて創ろうとしたものは、「国家に管理されない新しい通貨」です。円やドルといった通貨は通常、国家が管理しています。論文の中にも記されている通り、国家や銀行のような中央管理が存在しなくても機能する新しい通貨を創るというのが、ビットコインの目指すところです。
たとえば私たちが普段使っている円は、日本国が管理し日本銀行が流通量をコントロールしています。発行しすぎず、円の価値を安定させるために常に国の監視下に置かれているのです。
一方、ビットコインには国家や銀行のような中央管理は存在せず、システムによって管理されています。実際に10年以上の歴史の中でシステムがダウンしたことは一度もなく、かつ法定通貨(円やドル)と交換できるほどの価値を持つようになっています。そして、ビットコインを安全かつ安定的に運用する仕組みこそが「ブロックチェーン」と呼ばれる技術です。
ブロックチェーンとはどんな技術なのか?
仕組みを解説するにあたりまずイメージしていただきたいのは、「蜘蛛の巣のように張り巡らされたインターネットの世界」です。1本1本の糸の先には、皆さんが普段から使っているパソコンやスマートフォン、タブレットなどの端末があります。このネットワークこそブロックチェーンの基礎になる部分です。
パソコンやスマートフォンがインターネットにアクセスするためには、どこか中央で管理するサーバーなどの存在があります。しかし、ここではそのサーバーの存在を飛ばして、パソコンやスマートフォン同士が繋がっている様子をイメージしてみましょう。皆さんが今使っているパソコンやスマートフォンは、すぐ隣にある別の端末と繋がっていますし、同時に世界の裏にいる人の端末とも繋がっています。
そして、こうしたネットワーク上で「正しい取引データ」を記録した1つの台帳を、皆が同じものを共有しています。それを皆で確認していきます。確認できたら、一定量の取引情報をまとめて1つのページのようなもの(ブロック)を作り、過去の取引が記載された台帳に、鎖のようにつなげていきます。こうして過去から現在へと取引情報が鎖のように繋げていく技術を、ブロックチェーンと呼びます。
さらにかみ砕いて説明すると…
自分が会社経営をしていて、取引先のA社に1,000万円融資したと仮定してください。通常の取引ならば、銀行に取引明細が残りますので、たとえA社が「融資された覚えはない」と踏み倒そうとしても、取引明細にその事実がしっかりと記録されています。これをビットコインで融資した場合、銀行のように中央管理する組織が存在しないので、A社が踏み倒そうとすると泣き寝入りするしかない、という状況になるリスクが想定できます。
ところが、ブロックチェーンには特別な仕掛けがあります。それは「A社に1,000万円の融資をした」という事実を、ネットワークで繋がっている世界中のビットコインユーザーが証明してくれるといものです。
A社が返済を踏み倒そうとしても、ネットワークに繋がっているすべてのユーザーのパソコンに「あなたがA社に1,000万円融資した」という記録が正確に残っています。さらにブロックチェーンで記録される取引情報は、運用が開始されてから途中で書き換えらえることなく、今までもこれからも続いていきます。誰もが繋がった取引履歴を持っていて、確認できるので誰かがそれを書き換えようとしても問題が起きないのです。
ブロックチェーンとは、分散型台帳技術[3]または分散型ネットワークである。ビットコインの中核技術(サトシ・ナカモトが開発)を原型とするデータベースである。ブロックと呼ばれる順序付けられたレコードの連続的に増加するリストを持つ。各ブロックには、タイムスタンプと前のブロックへのリンクが含まれている。理論上、一度記録すると、ブロック内のデータを遡及的に変更することはできない。ブロックチェーンデータベースは、Peer to Peerネットワークと分散型タイムスタンプサーバーの使用により、自律的に管理される。(Wikipediaより)
ブロックチェーンのすごいところ
引き続きビットコインを例に挙げます。円やドルといった通貨は中央管理者が存在するため、それを使っている私たち企業や消費者は、中央管理者の指示に従うほかありません。
たとえば、最近では課金制ゲームが流行していますが、どんなに大金をはたいて強力なアイテムを手に入れても、中央管理者が設定を変更してそのアイテムを弱体化させることがあります。あるいは、中央管理者がゲーム運営自体をやめてしまえば、今までの課金は無に帰すというわけです。これと同じように、法定通貨は中央管理者からの攻撃に弱い、という問題があります。
一方で、ビットコインはそもそも中央管理者が存在しないため、運営上の意思決定はブロックチェーンのネットワークを形成するすべてのユーザーによって行われています。つまり、ビットコインは法定通貨と異なり「パワーバランスが均等」なので、非中央集権性が非常に高い通貨なのです。
さらに、ブロックチェーンは運営のために特定のサーバーを持たないので、サイバー攻撃などのリスクが低い傾向にあります。ブロックチェーンを形成する1つのコンピューターを攻撃しても、世界中に存在する無数のコンピューターが正しい取引情報を保持しているため、ブロックチェーン全体に影響は出ないのです。
そのためシステムダウンが起きず、非改ざん性も高いので法定通貨よりも安心して運用できる通貨としてビットコインが注目されています。
ブロックチェーンは広がっていく
現在、ブロックチェーンはフィンテック(金融業界)をはじめ、様々なところで拡大を見せています。近い将来、一般企業でもブロックチェーン技術を用いてシステム構築が当たり前になっていくのではないかと考えられています。なので、ブロックチェーンについての理解を深め、自社ビジネスにどう活用できるかについて日ごろから考えてみることをおすすめします。
また、マイクロソフトではクラウド内でのブロックチェーン アプリの容易なプロトタイプ作成が可能なAzure Blockchain Workbenchを公開しています。ご興味のある方は試して見てはいかがでしょうか。