オンプレミスからクラウドにシステムを移行する際には、多くのメリットがある分、それに伴う注意点もさまざまあります。
スムーズに移行作業を進める際には、オンプレミスからクラウド移行するにあたって、前もって確認しておくべきポイントをしっかり整理しておきましょう。システムの移行には、多くの手間と費用がかかることも珍しくありません。あとになって後悔につながることがあれば、移行計画の見直しなど不必要なタスクが生まれてしまいます。
そこで今回は、クラウド移行する場合のメリットを考えたうえで、現状課題となることや注意点を解説していきます。
オンプレミスからクラウド移行するメリットとは
最初にメリットとなる点から詳細を整理していきましょう。移行計画を進めるか迷っているときは、次に紹介するような利点があることを前もってチェックしておき、そのうえで自社にとって移行が有益なのかを考える必要があります。
社内に専門人材が不要になる
オンプレミスは自社サーバーを構築してシステムを用意する分、カスタマイズ性の高いオリジナルシステムを使うことができます。
しかしその分、オンプレミス型のシステムを使っていく際には、保守・メンテナンスを行うための専門人材の存在が不可欠となります。何かあったときのトラブルシューティングは自社で行わなければならないため、そういったリソースの負担は組織によっては大きいものと考えられます。
一方でクラウドなら、保守・メンテナンスは原則としてサービスの提供会社に一任できます。自社ですべてを負担することはなくなるため、管理コスト削減につながり、社内に専門人材を常住させておく必要もなくなります。
クラウドはオンプレミスと比較するとカスタマイズ性では劣りますが、その分運用・保守における負担が少ないのは大きな利点といえるでしょう。
サーバー構築などの固定費削減が可能
あらゆるコストの削減が実現し、全体的にコストパフォーマンスの高いシステム運用が可能になるのも、クラウド移行の強いメリットとして考えられます。
オンプレミスの場合はサーバー構築などの固定費が大きくかかることが、デメリットとして指摘されます。もちろん保守・メンテナンスにかかるコストも少なくないため、固定費としてオンプレミスは総合的に見て固定費が高くなりやすいのです。
しかしクラウドの場合は、基本的にランニングコストとして必須になるのはユーザー分の月額料金のみです。もしくは利用したデータ分の費用のみです。そのため費用も把握しやすく、オンプレミスよりもリーズナブルに収まることが多いのが特徴となります。
固定費が少なくなり、全体的にコストパフォーマンスが良くなるという点で見れば、クラウド移行へのメリットは非常に大きいといえます。
障害発生時にベンダーが復旧する
クラウドなら、自社で障害発生時の対応を行う必要はありません。基本的にはすべてベンダーが復旧作業を担当するため、障害発生時に復旧作業を行うといった、余計な業務が生まれることもないのです。
そのため当然ながら、障害が発生したことで、リソースが削られてコア業務が停滞してしまうこともないと考えられます。オンプレミス型のシステムをこれまで運用してきて、障害が起きるたびに対応に追われてきた企業にとっては、クラウド移行は業務効率化につながる重要な選択肢といえるでしょう。
災害発生時にBCP対策になる
クラウド移行が実現すれば、災害などのいざというときの対策にもつながります。
自然災害や火災など、自分たちの力ではどうしようもない脅威にさらされることは、いつ起こるのかわからないものです。特に日本は地震や台風が多い国として知られているため、BCP対策は早期に、かつ確実に進めておくことが不可欠となります。
実際に、2011年3月に起こった東日本大震災では、一般住宅だけでなく多くの店舗や会社が津波の脅威にさらされ、業務の根幹をなすようなシステムの停止を余儀なくされています。機器が物理的に破損したり紛失したりしたことから、重要なデータが失われたケースも少なくありません。
こういった大災害を想定したリスクマネジメントの一つとして、オンプレミスからクラウドへの移行は、非常に効果的な手段と考えられます。
オンプレミス型のシステムを使っていた場合は、災害時に機器の破損・故障により、長い間システムがダウンしてしまう可能性があります。しかしクラウドであればすべての管理はベンダー側が行うため、こういった万が一のときでも安心できるのがポイントです。
オンプレミスからクラウド移行する際に確認するポイント
ここからは、クラウド移行計画を進めるうえで事前に確認しておくべき注意点を解説していきます。
クラウドタイプにシステムを切り替えるときは、以上のようにあらゆる利点があると考えられます。しかしその分デメリット・課題となるポイントが伴うのも事実です。移行における事前の確認ポイントとして、以下のことは必ず整理しておきましょう。
情報セキュリティがベンダーに依存する
移行にあたって最も注意を払わなければならないことに、セキュリティの課題が挙げられます。
クラウドはオンプレミスとの大きな違いとして、ネットワーク上でシステムを運用していくため、自宅やカフェ、コワーキングスペースなどの作業スペース、その他電車の中など、社外のあらゆる場所からアクセスできるのが魅力となります。
しかしこのようにアクセスの自由度がアップするということは、それに伴ってセキュリティの厳重さに課題が残るのも事実となります。多くの場所からアクセスが可能になることで、第三者が不正アクセスなどの攻撃を仕掛けてくる可能性につながります。
当然、クラウドはこういったセキュリティ上の脆弱性に対応するためにさまざまな対策を講じています。
しかしそれでも不安要素の一つとして挙げられるのは、そういった情報セキュリティの質は、基本的にベンダー次第になってしまうという点です。
極端な話をすれば、ベンダー側がいい加減な情報セキュリティ管理を行っていた場合は、それが原因で社内の重要データを危険にさらしてしまう可能性があるということです。
よって、クラウド移行を検討する際には、安心して情報セキュリティ管理を任せられるのかという観点から、管理体制の質をよく見極める必要があるといえるでしょう。
オンプレミスよりカスタマイズ性が低くなる
クラウドではよりオリジナリティのあるシステム運用を行うことは難しくなりがちです。基本的に利用できるサービスはベンダーが用意しているサービス次第なので、その中で、自社に合うかたちでシステムを運用していくことが求められます。
このため別システムとの連携に不便さを感じたり、最悪の場合連携ができなかったりなど、便利さを求めてクラウド移行したはずが、結果として業務効率を落とすかたちとなる可能性も考えられます。
細かい修正ができるという点でも、オンプレミスのほうが使いやすいと感じる場合もあります。移行計画を進めるべきか、慎重に判断したいところです。
まとめ
クラウドへの移行は多くの業界において著しく進んでいることの一つですが、それにはメリットも多くある反面、事前に確認すべき課題があるのも確かです。
思わぬ落とし穴で生産性を落とす結果にならないよう、クラウド移行を検討する際には、オンプレミスとの違いをよく考えて判断を下すことが重要となります。その際には、クラウドサービスのベンダーとの打ち合わせも、入念に重ねておきたいところです。