社内や組織のデータがばらばらに管理されていると、データの利活用がうまく進みにくく、情報の流れが高速化しつつある近年の市場に置いていかれてしまう可能性があります。データ一元化を行って、社内のデータを統合的に管理できる環境を整えることが大切です。そこで今回は、データ一元化のメリットや具体的な実現方法について詳しく解説します。
データ一元化とは
「データ一元化」とは、社内や組織内のデータを1か所にまとめて統合的に管理することです。社内には、取引先の名刺や自社ECサイトの会員登録情報、メルマガ登録者のメールアドレスなど、さまざまなデータが存在します。このようなデータをまとめて1か所で管理することにより、データ分析が容易になって今後の営業やマーケティングの方針を立てやすくなったり、経営判断が迅速になったりするといったメリットがあります。
データが一元化されていない状態では、社内のデータを有効に利活用できず、情報の入れ替わりが高速化し続けている近年の市場で後れをとってしまう可能性があります。
データ一括管理との違い
データ一元化と一括管理の違いは、「管理が含まれるかどうか」にあります。前述のように、データ一元化はデータを1か所に集約するだけでなく、集約後のデータを管理することも含まれます。
一方の一括管理は、あくまでも「データを1か所に集約すること」のみを指しており、その後の管理については含まれません。例えば、社内の名刺情報やWebサイトの会員情報を集めて新たなマーケティング施策を打ち出すまでの一連の流れを「データ一元化」とすると、一括管理は社内の名刺情報やWebサイトの会員情報を集める作業のことを意味します。
データ一元化のメリット
データ一元化を行うことで、さまざまなメリットがあります。ここでは、代表的な3つのメリットをご紹介します。
業務効率の向上
社内のデータがあちこちに散らばった状態だと、大量のデータを十分に利活用できず、自社にとって効率的な営業活動やマーケティング活動の方針を導き出すことが難しくなります。
また、各営業担当が個別にデータを所有しており、そのデータが部署全体に共有されないままだと、過去に対応したことのある案件のノウハウがほかのメンバーに共有されず、一から資料を作成したり顧客対応したりしなければならないなど、余計な手間や時間がかかる可能性があります。データを統合的に管理してすぐに取り出せるようにすればこうした問題は回避することができ、業務効率は一気に向上します。
リソースの軽減
データを一元化することで、リソースの軽減もはかれます。社内のデータを1か所に集めて管理することで、データ管理のためにかかる手間が削減されて業務効率が向上し、必要なリソースが減少するためです。
例えば、複数の部門がそれぞれ顧客情報を管理している状況よりも、複数部門の顧客情報を1か所に集めてどの部門からでもアクセスできる環境を整えておくと、データの管理者は1名で済みます。
情報活用の促進
データ一元化は、社内の情報活用を促進するというメリットもあります。社内のデータを一元化できれば、顧客の購入情報を分析してより効果的な販促活動を実行したり、顧客の満足度を高めるために有効な情報発信を行ったりと、ピンポイントなアプローチが可能になります。
効率的なアプローチができれば、営業やマーケティング活動にかかるコスト削減も期待できるでしょう。
データ一元化のデメリット
データ一元化には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。あらかじめデメリットも把握したうえで、一元化を実施することが大切です。具体的にどのようなデメリットがあるのか、みていきましょう。
導入コストが発生する
データ一元化のために新たなシステム導入や構築を予定している場合は、導入コストがかかるというデメリットがあります。かかるコストは導入するシステムによっても異なりますが、小規模でも数十万円、大規模なシステムなら数百万円にのぼる場合もあるでしょう。
データ一元化に向けてシステムを導入するのであれば、必ず事前に費用対効果を試算して、システム導入コストをかけてでもデータ一元化にメリットがあると判断できてから導入を決定することが大切です。
現場担当者の理解がないと失敗しやすい
データ一元化にあたってシステム導入や現場の業務フローの変更が必要不可欠になりますが、現場担当者の十分な理解を得ていない状態で実施してしまうと、環境の変化に難色を示されて失敗に終わってしまうおそれがあります。
データ一元化を行う場合は、事前に現場担当者に「なぜデータ一元化が必要なのか」を十分に説明したうえで、理解を得てから実施することが重要です。
業務フローの見直しが必要
前述のとおり、データの一元化には現場の業務フローの見直しが必要不可欠です。とはいえ、業務フローを抜本的に見直すには現在の業務フローを洗い出したうえで、どのような課題があるのかを導き出し、新しい業務フローに改革する必要があります。
現場担当者が日常業務をこなしながら業務フローの見直しを行うには多くの手間と時間がかかるため、事前にしっかりとスケジュールを立てて進めなければ途中で頓挫してしまう可能性がある点には注意が必要です。
データ一元化の具体的な方法
データ一元化を実施するためには、次の4つのポイントを押さえて進めることが大切です。
社内の情報を1か所に集める
まずは社内の情報を1か所に集めて、自社にはどのようなデータが存在しているのかを把握する必要があります。営業担当者が所有している取引先の名刺や、営業リスト、ECサイトの会員登録情報、メルマガ配信先のメールアドレス、業者から購入した名簿など、社内のあらゆるデータを1か所に集約しましょう。
複数部門で同系統のデータを所有している可能性もあるため、一部の部門だけでデータを集めるのではなく、必ず全社的にデータを集めることが大切です。
集めた情報を精査する
データを1か所に集約できたら、集めた情報を精査しましょう。社内の膨大なデータのなかには、利用価値の高いものとそうでないものが玉石混交の状態で存在します。データ一元化のためにシステムを導入するのであれば、どのような情報を投入すれば今後のデータ活用に役立つのかを一つひとつ判断することが求められます。
まずは集めたデータのカテゴリー分けを行い、どのカテゴリーのデータが自社にとって必要なのかを判断するとよいでしょう。そのうえで、必要と判断されたカテゴリーのデータをひとつに統合してシステムに投入する準備を整えましょう。
精査した情報をシステムに投入する
データの統合が完了したら、精査した情報をシステムに投入します。取引先の情報や氏名、年齢、性別、メールアドレスや興味・関心、居住エリアなど、データの種類はさまざまなので、前述の「集めた情報を精査する」フローで自社に必要な情報が十分に精査されていないと、この後の利活用の精度が低下してしまうリスクがあります。
また、不必要なデータを投入してしまうと管理の手間が増えて、業務効率の悪化や必要リソースの増加につながってしまう可能性もあるため注意が必要です。
システム内の情報は定期的に整理する
システムに一度情報を投入すると安心してしまいがちですが、情報は定期的に整理・更新することが大切です。取引先の情報を例にとると、オフィス移転で新しい住所に移っているにもかかわらずいつまでも旧オフィスの住所が登録されていたり、部署異動によって所属が変わっているのに古い部署の情報が更新されなかったりすると、営業活動に支障が出る可能性があります。
また、退職によってメールアドレスが使われていない担当者の情報が残り続けていると、一斉配信したときに宛先不明なメールアドレスが発生するなどのリスクにもつながります。
データ一元化の導入に有効なAzureとは
データ一元化の導入には、Microsoft社が提供しているクラウド基盤の「Azure」がおすすめです。クラウド環境を構築することにより、インターネット回線があればどのような場所からでもデータを参照できるだけでなく、部門間のデータ共有が容易になってデータ一元化を行いやすくなります。
また、データ一元化のためにはデータ保存のルール整備など内部統制も重要です。Azureならユーザー単位でデータに適切な権限を設定できるため、安全にデータの一元化を実施しやすいのもポイントです。リアルタイムで世界中のリスク情報を反映しながらセキュリティ対策を行っているので、セキュリティが高いというメリットもあります。
まとめ
データ一元化が十分に行われていない会社や組織では、業務効率が低下したり、必要リソースが増加したりしている可能性があります。社内のデータを1か所に集めて精査し、システムなどを使って適切に管理するデータの一元化が重要です。
データ一元化の実現には、現場の理解や十分な事前準備が必要です。経営層やシステム部門だけで実施するのではなく、全社的な理解を促したうえで、現場の意見も取り入れながら準備を進めましょう。