最近では、多くの企業がITシステムのクラウド導入を進めています。その流れを受けてクラウド導入を検討している企業も多いことでしょう。しかし、どのようにクラウド導入を進めればいいのかわからない方も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、クラウド導入のメリットや課題、具体的な導入の進め方について解説します。
多くの企業がクラウド導入する理由とは!?
ITシステムをインターネット経由で利用できるクラウドサービス。なぜ近年、多くの企業が導入を進めているのでしょうか?総務省の「令和元年版 情報通信白書」をもとに、その理由を1〜5位までの順位で見てみましょう。
1位 資産、保守体制を社内に持つ必要がないから
2位 どこでもサービスを利用できるから
3位 サービスの信頼性が高いから
4位 安定運用、可用性が高くなるから(アベイラビリティ)
5位 災害時のバックアップとして利用できるから
最も多いのが、「資産、保守体制を社内に持つ必要がないから」という理由です。保守体制をなくすことで、社内の人的リソースの確保やコスト削減につながります。
2番目には、「どこでもサービスを利用できるから」という理由が挙げられています。働き方改革の影響を受けてテレワークが広まっている今、社内だけでなくどこからでもサービスを利用できるクラウドは需要が高まっているといえます。
また、クラウドサービスは、データをインターネット上に保管します。そのため、5位の「災害時のバックアップとして利用できるから」にあるように、企業が不測の事態に備える体制づくりにもクラウドが有効であると考えられているのです。
クラウド導入のメリット
では、クラウドサービスの導入により、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか?代表的な3つのメリットについて解説します。
オンプレミスに比べて総コストが安い
クラウドサービスと比較されるものに、「オンプレミス型」があります。オンプレミス型は社内にサーバーなどのハードウェアを用意し、ソフトウェアを構築して使用するITシステムです。システムそのものを自社に用意しなければならないため、多額の初期費用がかかります。さらにメンテナンス費用や復旧対応なども自社で行うため、ランニングコストも高くなりがちです。
一方クラウドサービスなら、自社にシステムを用意する必要がないので初期費用を大幅に減らせます。またランニングコストも、使った分だけコストが発生する「従量課金制」がほとんどです。メンテナンス費用も不要となり、総じてコスト削減につながります。
簡単に導入できる
前述した通り、クラウドサービスはハードウェアの調達が不要です。本体を用意したり、システムを構築したりする手間がかからないため、簡単に導入できます。また、利用中のアップデートやセキュリティ対策はもちろん、万一トラブルが起きた場合もベンダーが対応を行います。そのため、社内にITシステムに詳しい人材がいなくてもクラウドを導入し、利用していくことが可能です。
システムの拡張・縮小が容易に行える
オンプレミス型は、自社で必要なリソースを調達さえすれば、システムの拡張を自由に行えます。しかしそれには、時間とコストがかかりがちです。クラウドであれば、プランを変更するだけ、もしくは追加オプションを付けるだけで、リソースの拡大・縮小が迅速に行えます。またそれらの操作自体もコントロールパネルから設定できるため、煩わしいやり取りなども必要ありません。企業規模に合わせてカスタマイズできるため、自社の環境変化にも柔軟に合わせやすくなります。
クラウド導入の課題
クラウド導入にはさまざまなメリットがあります。一方で、クラウドを導入する上の課題として捉えておくべきこともいくつかあります。
情報漏洩リスクなどのセキュリティ担保
オンプレミス型は、社内でのみ使われるネットワークを利用してITシステムの提供を行います。しかしクラウドサービスは、オープンネットワークでファイル共有などを行います。そのため、クラウド導入により情報漏洩のリスクが高まることが課題として挙げられます。しかし、多くのクラウドサーバーでは、セキュリティ対策のためにアップデートが頻繁に行われます。厳重なセキュリティ対策を施したデータセンターに侵入するのは、困難だといえるでしょう。クラウドサービスに切り替えることで、より安全にデータが守られていると考えることもできます。
改修コストの増加
現在使用している既存システムとクラウドサービスを連携させるときに、システムインテグレーションのためのコストがかかることがあります。内訳は、要件定義、方式設計、機能設計などです。特に企業ならではの業務に特化したアプリケーションを多く利用している場合、コストがかかるだけでなくうまく連携が取れないこともあります。事前に連携ができるかどうか、連携するためにはどれくらいのコストが必要なのかを確認しましょう。
システムのカスタマイズ柔軟性が不十分
クラウドサービスでは、他社が提供するサービスを利用します。そのため、自社に必要な機能が装備されていないなど、思い通りに社内システムが組めない可能性もあります。またオンプレミス型のように、必要なときに必要な機能を付け加えることも難しいのが現状です。しかし、近年ではある程度カスタマイズできるように、豊富な機能を揃えているクラウドサービスも少なくありません。事前にどんなカスタマイズ機能があり、また社内システムを構築する上で適したものなのか見極めておくことも重要となります。
クラウド導入の進め方
メリットと課題を踏まえたうえで、クラウド導入を行う場合、どのような手順で進めていけばよいのでしょうか?最後にクラウド導入の進め方を説明します。
クラウド導入の目的を明確化する
まずは、何を目的としてクラウドサービスを導入するのか、そのためにはどんな機能が必要なのかを明確にしましょう。ここがしっかりしていなければ、せっかく導入しても機能が足りなかったり、オーバースペックになってしまったりする可能性があります。クラウド導入で解決できる問題は、「業務効率化」「ITの負担軽減」「ITを活用したビジネス展開」の大きく3つに分けられます。業務フローなどを再確認しながら、課題解決の優先順位をつけた上でクラウド導入の目的を明確にしましょう。
クラウド利用計画を策定
続いて、クラウド移行した際にどのようなサービスを利用するのかをまとめた利用計画を策定します。利用計画が決まったら、予算の概算をし、導入するサービスを決め、導入期間の見積もりをしておきましょう。どのサービスを導入するか迷ったら、クラウドコンサルタントに相談するのもおすすめです。クラウドコンサルタントは、企業とベンダーの間に立ち、第三者の目線でクラウド導入のアドバイスをしてくれます。
既存データのバックアップ
オンプレミスからクラウドへ移行する場合、移行時にトラブルが起きてデータが紛失する恐れがあります。万一のトラブルに備えて、既存データは事前にバックアップを取っておきましょう。
オンプレミスからのクラウド移行
本格的な移行を行う前には、少人数で社内テストを実施するのがおすすめです。テストで実際に触ってみて、どのようなサポートが必要なのかを洗い出しておきましょう。準備ができたら、いよいよクラウド移行を実行します。円滑に移行を行うためにも、常にベンダー側と連絡が取れる体制を整えておきましょう。トラブルが起きたときに慌てることがないように、イレギュラー対応のシナリオを考えておくことも大切です。移行完了後は、社内が混乱しないよう、IT部門が各部門のサポートを行いましょう。また移行後には、忘れずに以前使用していたサービスを廃棄してください。
まとめ
クラウド導入には、コスト削減をはじめとしたさまざまなメリットがあります。テレワークなど新たな働き方が広まる昨今、クラウドサービスは必要不可欠といっても過言ではありません。クラウド導入をする際には、自社の環境に合った最適なサービスを選び、適切な方法で導入を進めることが大切です。
一方で、クラウド化することだけで全ての課題が解決するわけではありません。企業のDX化を促進するためにも、より一層クラウド環境の効率的な運用が求められます。
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