これまでビジネスを根底から支えてきたい社内システムが、今では企業の足かせになっているケースが多発しています。政府は、2025年までに然るべき対処を取らない限り、多くの日本企業がデジタル時代の敗者になると宣言しています。そうした中で存在感を日ごとに増しているのがクラウドです。つまり、オンプレミスで運用している社内システムやレガシーシステムを何らかの形でクラウドへと移行し、現代の社内システムが抱えている諸問題の解決を目指します。では、そもそもなぜ社内システムをクラウド化する流れが加速しているのでしょうか?
本記事では社内システムをクラウド化するメリット、そしてクラウド化までの流れを分かりやすく解説します。
そもそもクラウドとは?オンプレミスとの違い
クラウドと聞くと、オンプレミスで運用している社内システムのあらゆる問題を解消する魔法の杖のように認識している方も多いでしょう。確かに、クラウドはさまざまな問題の解消に向けて活用されている側面もありますが、一方でクラウド特有の問題もあることを忘れてはいけません。
クラウドとはインターネット上で提供されるサービスの総称であり、この言葉が示す範囲は広大です。クラウドを細かく分類したものの中で基本的なのがIaaS/PaaS/SaaSの3つです。
IaaS(Infrastructure as a Service)はシステム運用に欠かせないサーバー・ネットワーク等のインフラを、PaaS(Platform as a Service)はシステム・アプリ開発環境をセットで、そしてSaaS(Software as a Service)はパッケージ化されたソフトウェアをそれぞれ提供しています。
企業が社内システムをクラウド化する場合、利用することが多いサービスはIaaSかPaaSです。既存環境をそのままに、インフラのみをクラウド化する場合はIaaSやPaaSを、また、社内システム自体の刷新を検討して素早いクラウド化を行う場合はSaaSを選択することになるでしょう。
いずれのクラウドを選択しても、オンプレミスとの最大の違いはインフラが社内にあるか外部にあるかです。この決定的な違いによって、クラウドはオンプレミスには無いさまざまなメリットが生まれています。
社内システムをクラウド化するメリット
では具体的に、オンプレミスの社内システムをクラウド化することでどのようなメリットが生じるのかを整理していきましょう。
メリット1. レガシーシステムの延命
企業が長い間、運用しており問題を多く抱えるシステムがレガシーシステムと呼ばれています。この言葉が意味するのは、古く企業の足かせになっている負の遺産です。しかし、多くの企業は社内システムのカスタマイズを繰り返したことで、業務プロセスの依存性が非常に高くなっており、簡単には刷新できません。
そこへ五月雨式に降りかかる問題がハードウェアの寿命です。寿命が来たハードウェアは買い替えればよいのですが、レガシーシステムの場合は最新のハードウェアにソフトウェアが対応できない理由から刷新できないケースが大半です。
一方、クラウドならリソースを独自に選択することでレガシーシステムを運用し続けるための可能性が高く、レガシーシステムの延命措置として活用できます。
メリット2. リソースの増減が自由に
クラウド化した企業が実感する大きなメリットが、クラウドではリソースの増減が自由に行えることです。オンプレミスの場合、新しい社内システムを構築するためにサーバー調達が必要です。また、パフォーマンスやスケーラビリティの確保のためにはサーバーの買い足しや買い替えが必要不可欠です。
対してクラウドならば、新しい社内システムを構築する際はそれに必要なリソースを管理画面から調達するだけで、最短数分でインスタンス可能です。しかも、余剰リソースが生まれることはなく、資源を最大限有効活用できます。
メリット3. コスト適正化
リソースの増減が自由ならば、当然そこにかかるコストは適正化されます。また、クラウドは基本的に従量課金制であり、使用したリソースの分だけ料金が発生します。一部のクラウドはかなり格安で利用できるため、適正化だけでなくコスト削減につながる可能性もあります。
メリット4. 会社が被災してもデータは安心
災害大国日本で事業展開する以上、被災を想定したBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を実践することが大切です。しかし、BCPには多大なコストがかかります。そこで社内システムをクラウド化し、システム環境を社内ではなく外部で運用することでたとえ会社が被災してもデータは保護されます。
また、BCPだけでなくクラウドが持つ高度なセキュリティに頼ることで、社内システムのセキュリティ対策も強化されるでしょう。
メリット5. 物理メンテナンス不要
政府が警告している「2025年の崖」では、企業が社内システムやデジタル投資に対して確保可能な予算のうち、9割が運用費に費やされると予測しています。実際に、レガシーシステムの運用は非常に面倒かつコストが莫大にかかるため、何らかの手を打たない限り警告は現実のものになるでしょう。
クラウドに社内システムを移行すると、サーバーやネットワークの物理メンテナンスは一切不要になります。IT管理者の運用負担を大幅に軽減することで、新しいITリソースを生み出して積極的なデジタル投資が可能となります。これからの時代、IT予算は現状維持ではなく常に変化するビジネス要件に追随するためのものです。
社内システムをクラウド化する流れ
社内システムをクラウド化する流れとして一般的なのは、第一段階としてプライベートクラウドへ移行します。これは物理サーバー上に直接構築されている社内システムを、仮想化ソフトウェアを活用した仮想環境上に移行し、プライベートクラウドとして運用することです。一見無意味に思えますが、仮想化によって障害復旧が用意になったり、パブリッククラウドへの移行を容易にしたりといったメリットがあります。
そして第二段階としてパブリッククラウドへの移行を検討します。Microsoft Azureなど外部事業者が提供するクラウドは、コストメリットと拡張性が非常に高いことから最終的に移行目指すべきプラットフォームです。
また、細かいポイントとして以下の点にも注意しましょう。
- 既存の社内システム問題を洗い出す
- 優先的に解決したい問題を決める
- クラウド化する社内システムの範囲を決める
- クラウド化するデータの範囲を決める
- クラウド化にあたっての基本方針を定める
- クラウド化担当チームを設置する
- 社内全体への周知徹底を怠らない
- 全体的なクラウド化ではなくスモールスタートを意識する
いかがでしょうか?社内システムのクラウド化には多数のメリットがありますが、注意点もあります。本記事の内容を参考にしながら、これからのクラウド化について検討していただければ幸いです。