クラウドPCを活用していく際には、そもそもAzure Virtual Desktop(旧WVD)の利用にはどれくらいの料金がかかるのか、導入にはどのような準備が必要なのかという点が気になるところでしょう。
また、「そもそもクラウドPCとはどういう仕組みなのか」「セキュリティ上のリスクはないのか」という疑問と共に、基本的なポイントから理解を深めていきたい人も多いかもしれません。仮想デスクトップの活用には、基礎知識をしっかりつけておくことも重要です。
本記事では、そんなAzure Virtual Desktopについて整理したうえで、月額料金や初期費用の考え方、そして導入方法や取り入れるメリットなどを紹介していきます。
Azure Virtual Desktop(旧WVD)の特徴・利用シーンを解説
2020年から始まった新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一つとして、多くの企業はテレワークを取り入れています。
しかしテレワーク環境下ではPCなどのデバイスを十分に確保できなかったり、社内システムに外部からアクセスするためのセキュリティ対策が追い付かなかったりなど、当初はこれらの課題に追われた企業も少なくなかったでしょう。
そこで取り入れておきたいのが、クラウドPCです。略称のAVDという名前でもよく呼ばれる「Azure Virtual Desktop」は、クラウド環境で接続できる仮想デスクトップサービスです。自宅などの社外にいてもAVDなら、インターネット接続を通じて会社とほぼ同じのPCを開くことが可能です。
仮想化されたデスクトップサービスのため、「アクセスしたデバイスに重要なデータが残ったままになる」という危険性もありません。そのためテレワークによる情報流出などのリスクがなく、しっかりとセキュリティ対策を実施した状態で業務に従事することが可能です。
テレワークをはじめとしたリモートでの作業には、AVDは最適のシステムと言えるでしょう。自宅、カフェ、取引先、コワーキングスペースなど、社外でも場所を選ばずに自社サーバーにアクセスすることができるため、あらゆるシーンでの業務効率化に貢献します。
【シーン別】Azure Virtual Desktopの料金や計算方法
在宅勤務などの際にAzure Virtual Desktopを取り入れるとなった場合には、前持って利用料金や初期費用などについて理解を深めておきたいところです。
また、どういったオプションがあるのか、オプションを利用する場合は料金がいくらになるのか知っておきたい人も多いでしょう。
具体的な月額料金についてはケースバイケースとなるため詳細は後述していきますが、まず初期費用としては、クラウド初期設定費用として10,000円ほどの料金がAzureアカウントID単位でかかってきます。そこにプラスして、ライセンス取得のための費用や構築時のAzure利用料、インターネット接続の初期費用がかかるイメージです。
オプションについては、24時間受付オプションなどが利用でき、ユーザー数に応じて500円ほどの費用が必要になります。
では次項からは、主なシーンによってパターンを分け、毎月かかると想定される料金を紹介していきます。
個人や数名での利用
人数:3~4人
同時接続:3~4人
業務内容:一般事務、WordやExcelを使った処理が中心(=低スペックで問題なし)
全体費用:36,000円
1ユーザーあたりの単価:12,000円
個人や3~4人ほどの数名くらいの規模で使う場合は、主にWordやExcelといった事務的な業務がメインとなるロースペックでの構築になるイメージです。
例えば3人がテレワークなどで同じ時間帯に、10時間ほど使った場合には、月額費用は36,000円ほどと計算できます。このため1ユーザーごとの料金は12,000円ほどです。
約50名で社外業務を行った場合
人数:50人
同時接続:30人
業務内容:営業事務で、頻繁にTeamsや基幹系システムなどを動かす
(=中スペックな機器が必須)
全体費用:200,000円
1ユーザーあたりの単価:4,000円弱
以上のような場合のスペックは数人パターンよりも上がりますが、ユーザー数が増えるため、1ユーザーごとの月額料金は4,000円弱となり、全体の月額料金も200,000円前後になります。
高スペック機器で社外業務を行った場合
人数:10人
同時接続:5人
業務内容:グラフィック系
(=高スペックな機器が必須)
全体費用:120,000円
1ユーザーあたりの単価:12,000円
例として、上のようなケースにおいては全体の費用は120,000円ほどとなります。1ユーザーあたりの単価も上がり、料金は12,000円ほどになることが考えられます。
Azure Virtual Desktop環境を構築する方法
ここでチェックしておきたいのは、AVD導入前にやっておくべきことです。テレワーク推進にあたっては、AVDなどの仮想デスクトップを取り入れて作業をすることは、セキュリティ対策やコスト削減に大きく貢献します。
スムーズな構築のためには、主に以下の行程に沿って準備を進めておく必要があります。
- 認証基盤を準備する
- マスターイメージを構成する
- サーバーやストレージアカウントを用意
- Azure ADユーザーを作成する
認証基盤の準備にあたっては、
- Azure AD+Azure AD Domain Services
- Azure AD+Active Directory Domain Controller+Azure AD Connect
これら2つのパターンのいずれかを用意しておくことが必須となります。
続いてマスターイメージの構成ですが、「Azure上に所有しているマスターイメージの持ち込みをするのか」「Azure MarketplaceのOSイメージから構成するのか」いずれかの選択肢があります。
そして構築にあたっては、ファイルサーバーかストレージアカウントが必要となるため、最低限どちらかを用意しておきます。
最後にAzure ADユーザーを作成するという手順です。
Azure Virtual Desktopを導入する2つのメリット
社外での作業の需要が進む現代において、仮想デスクトップは非常に重要なメリットを持っているのは間違いありません。Azure Virtual Desktopももちろん同じです。そのため積極的に導入を検討し、性能をチェックしている企業担当者も多いはずです。
では、具体的にはどのような魅力や利点があるのでしょうか。メリットを明らかにしたうえで、自社に必要なシステムなのかをよく判断していきましょう。
Windows 10に対応
はじめに注目しておきたいメリットは、Windows 10に対応しているというポイントです。
2021年になってWindowsは最新バージョンの11がリリースされましたが、Windows 10といえば、現在のビジネス環境においてもっとも使用されているWindowsのバージョンです。2020年の時点では、デスクトップOSバージョン別シェアはWindows 10が60%以上を占めます。
そのためWindows 10では数多くのソフトウェアを使用することが可能です。つまりWindows 10対応のAzure Virtual Desktopなら、多岐に渡るソフトウェアを使用可能となるのです。特定のソフトウェアがOSバージョンに対応していないといった問題に直面することも少なく、また直面した際も、別のソフトウェアを探すなどの対処が取りやすいでしょう。
VPN接続すればどこからでも安全にサーバーアクセス可能
セキュリティ上の安全性について目を向けたケースでも、AVDには大きなメリットがあります。AzureとVPN接続を行えば、自宅をはじめとした社外の場所でも、安全にサーバーにアクセスすることが可能です。
社内のファイルサーバーに保管されているデータを参照する際には、社外からのアクセスは、従来の価値観では大きなリスクが伴うという考え方でした。しかしVPN接続なら専用回線を用いるため、クラウドPCでもセキュリティの強化が可能となります。
まとめ
昨今のリモートワーク環境の整備がトレンドとなっているなかにおいて、安全性の高いクラウドPCを実現してくれるのがAzure Virtual Desktopです。最低限のコストでデスクトップ仮想化が可能となるため、機器を用意したり特別なセキュリティ対策を講じたりしなくても、コスト削減を図りつつリモートワーク環境を構築できます。
Azure Virtual DesktopはMicrosoftが提供するクラウドPCとして信頼性が高く、多くのユーザーに親しまれているのも強みと言えます。「どこからでも気軽に慣れ親しんだ作業環境にアクセスできる」そんなメリットを従業員たちに実感して、職場全体の業務効率を高めたい場合、Azure Virtual Desktopの導入をぜひ検討してみてください。