近年、ITやICTが普及したことで、あらゆる情報がデータ化され、企業が扱うデータは増加しつつあります。データをマーケティングに活用し、ビジネスに役立てる動きも活発になっていますが、膨大なデータを手動で分析するのは現実的ではありません。そこで登場したのがBIツールです。BIツールを利用することにより、膨大なデータを自動で分析し、ビジネスに役に立つ情報として見える化できます。
しかし、BIツールを使用する為には、社内に分散して保存されているデータを統合し、総合的に運用する必要があります。そこで活用されているのがETLツールです。
本記事では、ETLツールの概要やメリット、ETLを実現するAzureのソリューションについて解説します。
ETLとは
ETLとETLツールの概要について解説します。
ETLの概要
ETLとは、データを抽出(Extract)・変換(Transform)し、データウェアハウスに書き出す(Load)といった一連の処理のことです。この処理により、様々な場所に分散して保存されているデータを統合し、活用できる形に変えます。
ETLツールとは
ETLツールは、ETLの各プロセスの自動化や作業の効率化を実現するものです。
ETLプロセスはプログラミングによっても実現可能ですが、プログラミングには高度な知識を持ったエンジニアが必要です。ETLツールを利用すれば、高度な知識なしにETLを利用できる特徴があります。また、ETLプロセスは、データソースの数だけプログラムを開発する必要があります。ETLツールを利用すると、ETLプロセスの敷居が下がり、プログラム開発工数を削減できます。
また、ETLプロセスの最大の核心はデータの変換処理にあります。ETLツールを利用すると、精度の高いデータ変換が可能であり、品質向上につながります。
ETLのプロセス
ETLの3つのプロセスについて詳しく解説します。
抽出(Extract)
データを活用するために、まずは複数のデータベースから必要なデータを集める必要があります。抽出のプロセスでは、多くのデータの中から、データの中身を解析し、対象のデータであるか判断します。必要があると判断されたデータのみ抜き出され、一か所に集約されます。この時不要なデータは抽出の対象となりません。
例えば、売上を分析する目的であれば、抽出の対象となるのは、販売した商品の価格や売上個数などの情報です。在庫や仕入れについての情報は不要であるため、抽出されません。
このように、抽出のプロセスでは、どのような利用目的でデータを抽出するのかを明確にすることが重要です。
変換(Transform)
抽出されたデータをデータウェアハウスに書き出すためには、データを分析しやすい形に変換する必要があります。変換のプロセスでは、一定の規則や関数にしたがってデータを変換したり、データの重複や欠損の解消・表記ゆれの統一などの加工を行います。
例えば、売上の単位がばらばらであったり、同じ日のデータが複数ある場合、正確な分析ができません。
変換のプロセスでは、データ形式を統一することが重要です。
書き出し(Load)
書き出しのプロセスでは、変換したデータをデータウェアハウスに書き出して格納します。データウェアハウスに保存されたデータはBIツールを使ったデータ分析に利用されます。
抽出・変換したデータを外部に保存することで、データ分析の際に素早くデータにアクセスできます。書き出しのプロセスがなければ、データ分析の度に、抽出・変換を再度行うことになり、時間がかかる原因となります。これを避けるために、書き出しは重要なプロセスです。
ETLツールのメリット
ETLツールを利用すると、次のようなメリットがあります。
メリット1.複数システムのデータソースを集約できる
社内のデータは、部署や拠点ごとに管理されていたり、様々な場所に散らばって存在しています。ETLツールを利用すると、社内の様々なシステムのデータソースからデータを集約できるため、データを集約・分析する工数を削減できます。
メリット2.データを活用しやすくする
データには形式の違いがあるため、分散したデータを収集して、統合するだけでは活用できません。ETLツールの変換プロセスでは、データを分析しやすい形に加工します。このプロセスにより、データ活用がスムーズになります。
メリット3.膨大な量のデータを短時間で処理できる
ETLの各プロセスを手動で行うには、多くの時間や人員が必要です。ETLツールが自動で各プロセスを実行するため、膨大な量のデータでも短時間で処理できます。
メリット4.専門知識が必要ない
ETLツールは、GUIを利用して視覚的な操作でETLプロセスを構築できます。プログラミングなしで開発できるため、専門知識がなくても、ETLプロセスを実現できます。
クラウド型ETLツール
ETLツールが登場したばかりの頃は、ほとんどがオンプレミスでした。しかし、クラウドの台頭により、近年はクラウド型ETLツールを導入する企業が増えています。
クラウド型ETLツールを利用するメリット
クラウド型ETLツールは、オンプレミス型と比較して、拡張性が高いのが特徴です。ストレージ容量が不足した際にも、容量の増加や機能の追加が可能です。また、クラウド上に保存されたデータは、どこからでもアクセス可能なため、利便性が高いです。低コストで導入でき、セキュリティが担保されていることもクラウド型ETLツールのメリットです。
Azure Data Factory
Azure Data Factoryは、ETLを実現するAzureのソリューションです。Azure Data Factoryでは、オンプレミス・クラウド・ビックデータなど様々な場所に点在するデータを、保存場所やデータ形式を意識することなく収集でき、加工までをクラウド上で完結できます。
Azure Data Factoryは、下記の特徴があります。
操作性
Azure Data Factoryは、GUIの操作でデータの変換・管理画面の設定・管理などが可能です。直感的な操作でプロジェクトを作成できるため、専門的な知識がなくても、ETLプロセスを構築できます。また、開発者向けにはPythonを使うことで細やかな設計も可能です。
料金
Azure Data Factoryの料金は、アクティビティの実行回数やデータ統合単位時間数・Data Flow に使用されるコンピューティングの種類・コア数・インスタンス数・実行期間などによる、従量課金制です。システムの稼働時間、データアクティビティとパイプラインの実行回数、実行時間によって課金されます。料金の詳細は、Microsoftの公式ページの料金計算ツールで見積もりをしてみてください。
様々なシステムとの連携
Azure Data Factory自体はETLツールですが、その他のAzureのシステムを併用するとより高度な利用が可能です。例えばAzure Batchと併用すれば、膨大なデータを並行して処理できます。また、Azure Data Factoryでは、既存オンプレミスのSQL ServerをAzureに移行することも可能です。
まとめ
近年、企業が扱うデータは増加しつつあります。社内に分散して保存されているデータを統合し、総合的に運用するために重要となるのが、ETLツールです。
最近では、オンプレミス型に代わって、クラウド型のETLツールが主流となってきています。今回はETLを実現するAzureのソリューションとして「Azure Data Factory」を紹介しました。Azure Data Factoryは、わかりやすい操作性と料金システムが特徴です。また、他Azureサービスとの連携も可能で、柔軟な活用も期待できるソリューションです。
Azure Data Factoryは様々なレベルのユーザーに対して、データ活用の機会をもたらします。