オンプレミスからクラウドへ移行する際には、大きく環境が変わります。そのため、どのような影響を受けるのか、コストはどのように変わるのかなどをあらかじめ確認する「移行アセスメント」が重要です。
この記事では、移行アセスメントがなぜ重要なのか、Azure環境への移行ではどのような流れでアセスメントを行うのかを解説します。
アプリケーションの移行とは?
そもそもアプリケーションの移行とは、現在のコンピューティング環境から、別の環境にアプリケーションやソフトウェアを移行させるプロセスを指します。
移行方法のパターンはさまざまです。
たとえば、データセンター間での移行や、オンプレミスサーバからプロバイダのクラウドサーバへの移行などが代表例として挙げられます。クラウド環境でも、パブリッククラウドからプライベートクラウドへ移行させることもひとつの方法です。
一般的に、アプリケーションをオンプレミスからクラウドへ移行させると、スケーラビリティやアプリケーションの即応性が向上するといったメリットがあります。
ただし、基本的にアプリケーションは、企業の方針や使う目的などに応じて独自に開発されるため、運用環境を移行することで思わぬ問題が発生することも少なくありません。
とくにオンプレミス環境からクラウド環境への移行は、オンプレミス同士の移行よりも大きな負荷がかかります。そのため、移行にあたっては、個々のアプリケーションの依存関係やセキュリティ要件、コストなどもあらかじめ把握したうえで、適切な戦略を立てることが重要です。
アプリケーション移行アセスメントの重要性について
アプリケーションをクラウド環境へ移行させるにあたっては、影響範囲をふくめさまざまな不確定要素を洗い出し、解決に向け対策をしなければなりません。
もし移行途中でシステムの適応性に問題があると判明したり、予想以上にコストがかかると発覚したりすれば、苦心して立ち上げたプロジェクトがうまく進まないおそれもあります。
そこでぜひ事前に実施しておきたいのが、「アプリケーション移行アセスメント」です。アセスメント(assessment)とは、客観的に評価するといった意味があります。アプリケーション移行にあたっては、予算やスケジュールなどの観点から深く検討や調査をせずに進めてしまうと失敗に終わるリスクがあるため、アプリケーション移行アセスメントを実施し慎重にチェックしましょう。そうすることで、スムーズなクラウドへの移行が可能です。
Azure移行アセスメントを実施するメリット
近年、クラウドコンピューティングサービスが注目を集めている中、Microsoft製品との親和性の高さから、Microsoft Azureへのアプリケーション移行が注目を集めるようになりました。ここではAzure移行の際、あらかじめアセスメントを行うことで得られるメリットを解説します。
移行断念のリスクを低減できる
Azure環境へ移行する前にアセスメントを実施すると、想定されるリスクを明確化できます。
たとえばクラウドサービスの場合、ベンダーによって移行先の仕様が異なっていたり、制限事項に引っかかったりすると移行を進められないといったことなどです。
その点、あらかじめPoC(Proof of Concept)やパフォーマンス調査などのアセスメントを実施しておけば、移行プロジェクトの途中やテスト段階で、継続が危ぶまれるほどの重大な問題が発覚するのを防げます。
移行に伴う概算費用が明確になる
Azure環境へ移行するのにどれくらいの費用がかかるのかを知らないままでいると、プロジェクトの途中で予算オーバーとなり、継続できないといったリスクが生まれがちです。
しかし、アセスメントを実施しておけば、あらかじめ移行にかかる費用の概算を知ることができます。得られるメリットと天びんにかけ、移行によって本当に期待した成果が上げられるのか判断しやすくなります。
移行後のイメージが明確になる
Azure移行アセスメントを行うことで、移行後もうまく自社のシステムが稼働するのかイメージしやすくなります。アプリケーションの構成を把握できることから、運用コストを明確化できるのもポイントです。
Azure移行アセスメント
Azure移行アセスメントでは、まず最新のツールを用いてIT資産のデータを収集し環境を分析します。そして、分析した結果からクラウド移行やプロセス改善に向けて実行できるステップを決定するのが主な流れです。
ここからは、よりイメージがわきやすいように、移行アセスメントのフローについて詳しく紹介します。
1.評価
Azure移行アセスメントの最初のフェーズは「評価」です。Azureへ移行するにあたってどのようなニーズがあるのかを確認したうえで、なぜ移行する必要があるのか目的を明確化します。
さらに、システムに関するさまざまな情報、たとえば改修や切り替えの容易性などのデータを集め、評価します。この段階で、初期費用として必要な概算も把握可能です。
評価した結果が明らかになれば、移行によって得られるメリットや注意点も見えてきます。
Azure移行アセスメントにおける評価項目は、大きく
- 改修の容易性
- テストの容易性
- 切り替えの容易性
といった3つのカテゴリに分けられます。
改修の容易性の項目ではたとえば「開発環境」があります。この場合、必要なOSや使用言語、フレームワーク、開発ツールといったものが評価基準です。
また、テストの容易性における項目では「仕様の複雑度」があります。業務や仕様は分かりやすいか、外部のアプリケーションと連携できるかどうか、設計書やマニュアルがあるかどうかなどが評価基準です。
移行にあたって障壁が少ないものから順番に、A評価からE評価まで5段階で判断し、障壁が大きいと思われる項目があれば、それに焦点をあてて対策を検討します。
2.計画
最初のフェーズで評価した結果をもとに、ユーザーのビジネス戦略やニーズも含めたAzureへの移行計画が作成されます。
ソリューションの中でも、どれを優先的に移行すべきか特定し、アプリケーションやデータの移行ステップ、移行方法などを計画します。
3.移行
計画が立てられれば、あとはその計画に沿って実際に移行します。ただ、移行と一言で言ってもアプリケーションだけの問題ではありません。システムの稼働に必要なデータの移行、Azureのリソースの構成、うまく稼働するかどうかのテストなど、さまざまなプロセスがあります。
4.最適化
無事Azure環境へアプリケーションが移行できても、まだ終わりではありません。
移行アセスメントでは、システムのパフォーマンスが向上したのかどうか、可用性はどうかなど、移行後の状況についても監視します。また必要に応じて最適化するのも、Azure移行アセスメントの重要な役割です。
まとめ
オンプレミスからクラウドへのアプリケーション移行にはさまざまな問題が起きるおそれがあるものの、スケーラビリティやアプリケーションの即応性が向上するといったメリットも見逃せません。
そこでスムーズに移行プロジェクトを進めるには、事前に移行アセスメントを実施することが大切です。リスクをあらかじめ把握し対策を立てておくことで、開発やテストフェーズで重大なトラブルが表面化することを防いだり、コストを適切に把握できたりします。
リスクを低減してスムーズなアプリケーション移行を実現したい方は、ぜひアセスメントの実施を検討してください。