アプリとデータベースのモダン化は、働き方の多様化などに対応するため、現在多くの企業で進められています。アプリとデータベースのモダン化とは具体的にどういったものなのかや、モダン化の実現に必要な要素、そのメリットおよび関係するMicrosoft Azure製品などについて解説します。
アプリとデータベースのモダン化とは?
「モダン化」は「現代的」「近代化」などの意味を持つ言葉ですが、アプリケーションとデータベースのモダン化の場合は、アプリケーションやデータベースをそれぞれ最新の状態に更新するといった意味になります。
アプリケーションやデータベースのモダン化では、企業が業務で使用しているアプリケーションやデータベースなどを、現在使っているシステムや機器を活かしつつ最新の機能を持つものに改善することなどで行われます。
業務にパソコンしか使われていなかった時代とは異なり、現在では業務にパソコン以外にもスマートフォンやタブレットなどのデバイスを使うケースが一般的です。これまではパソコンで「クライアント/サーバー形式」の処理が行われてきたアプリケーション・データベースを、常時ネットワークに接続しているモバイルデバイスでも活用可能にするための処理が必要になります。
デバイスの多様化が進み、OSにもWindows、iOS、Androidなど多様な種類が存在し、各種デバイスそれぞれ異なるOSが利用されているため、現在では多種のOS・デバイスに対応可能な状態へのモダン化も求められています。また、Microsoft社ではアプリケーションの開発後にリリースを行い、さらにフィードバックに応じたバージョンアップ(改善)を迅速に行うことに対して「モダン」の言葉を使っています。
モダン化の実現に欠かせない要素
モダン化の実現には「クラウド化」と「Kubernetes」の2つの欠かせない要素があります。モダン化に必要なクラウド化にはコストの最適化などさまざまなメリットがあり、Kubernetesはコンテナのデプロイや管理が簡単にできる点が重要なポイントです。
クラウド化
これまでは社内で仕事をするのが一般的でしたが、現在ではオンプレミスや社内ネットワークを使用していた多くの企業が、クラウド化によるモダン化の実現を目指しています。近年はリモートワークが急激に普及したことにより、会社の外でも仕事ができるシステム環境へのニーズが高まっています。
また、2025年の崖で指摘されているように、多くの日本企業では既存の基幹システム老朽化への対応も行わなければなりません。こうしたニーズへの対応として、クラウド化が進められています。社内ネットワーク利用時には外部からのアクセスができないため、テレワークなどで自宅にいながら仕事をしたい場合でも必要なファイルの閲覧や使用ができません。社内ネットワークの場合、リモートアクセスのために環境を整えるには導入時に多額のコストもかかります。
既存の基幹システムの老朽化に伴い社内に新規でサーバーを設置して社内ネットワークを構築する場合、サーバーなどの機器を選び、設置する場所を準備しなければなりません。自社のネットワークシステムは社内で保守管理を行う必要もあり、情報システム担当者の負担は大きくなります。
社内ネットワークではさまざまな限界があり企業の負担も大きいですが、クラウドの場合は社外からのアクセスができ、導入時やサーバー管理の負担・コスト軽減が可能です。さらに、企業ごとに異なるアプリケーションとデータ容量のラインナップから、自社に最適な規模のプランを選べたり、企業の変化に応じてプランを切り替えられたりするなどのメリットもあり、多くの企業でクラウド化への移行が進められています。
Kubernetes
「Kubernetes(クバネティス/クーベネティス)」とはギリシャ語で「操舵手、パイロット」の意味を持つ言葉で、複数コンテナの管理や自動化を行うソフトウェアを指します。もともとはGoogleが膨大な数のコンテナを実行するために開発したシステムでしたが、近年ではコンテナの操作、分散アプリケーションのデプロイを実行するオープンソースのプラットフォームとして進化し、幅広く使用されています。
Kubernetesが操作するコンテナとは、ホストOS上に「アプリサーバー」「Redisキャッシュ」「SQLデータベース」などのアプリケーションを動作する環境を、独立して設置するために必要な構造です。コンテナに分散してアプリケーションをデプロイすることにより、CPUやメモリなどのハードウェアリソースを軽減、ネットワークの負荷を減らして快適に業務を行えます。
コンテナの利用によるメリットは大きいのですが、それぞれ独立しているコンテナを複数ホストで管理する負担が増加する問題も生じます。Kubernetesを利用すると、このコンテナをクラスタでまとめて管理でき、アプリケーションの処理を自動化することが可能です。セキュリティの強化や障害発生時の自己回復も行えるなどのさまざまなメリットから、モダン化には欠かせない要素のひとつとなっています。
アプリとデータベースをモダン化するメリット
アプリとデータベースのモダン化には、主にクラウドの最大活用、市場化時間の短縮、セキュリティの強化といったメリットがあります。自社ネットワークを利用している場合は、使用期間が長くなるほどファイルサーバーの空きストレージが不足していきます。クラウドサービスを利用すると、容量無制限であったり、大容量であったりするオンラインストレージサービスを活用できるため、容量を気にせずに利用できます。
モダン化により、Azure App Service、Azure Spring Cloudなどのフルマネージドアプリケーションやデータサービスを使用する場合には、製品やサービスを市場に投入するまでの時間の短縮が可能です。ローコードアプリケーション開発でアプリを素早く開発、デプロイできるため、アプリケーションの最適化による業務効率化も期待できます。
データのモダン化では、重要なデータをクラウドベンダーが管理するオンラインストレージに保存します。オンラインストレージは、ベンダーによって独自のセキュリティ対策がとられているため、条件によっては自社で管理しているサーバーよりも高いセキュリティでデータを保存可能です。
また、Microsoft Azureアプリケーションのモダン化は、Azure security、Azure Web Application Firewallにより、脅威の廃除、安全性の維持を実現します。フルマネージドのAzure SQL Database使用で、データベースを管理することなく最新の状態を維持、高いパフォーマンスでアプリ構築に専念できます。
オンラインストレージの利用は災害対策にも有効です。会社の住所地が火災や地震などの災害に遭ったとしても、離れた場所にある堅牢なデータセンターに保存されている会社のデータは消えることがありません。
アプリケーションとデータの最新化に関するAzure製品一覧
Azure製品は、Microsoft社が提供するクラウドサービスです。Azure Kubernetes Service (AKS)、Azure SQL、Azure App Serviceなど、アプリケーションやデータのモダン化に必要なサービスをはじめ、豊富なサービスが利用できるAzure製品を活用することにより、効率的にモダン化を進められます。
- Azure Kubernetes Service (AKS):フルマネージドKubernetesサービスです。コンテナ化されたアプリケーションのデプロイ・管理の負担を軽減が可能で、セキュリティの強化や、迅速なアプリケーション開発をサポートします。
- Azure SQL:アプリケーションの移行と最新化、SQLを使用した幅広いデプロイオプションを利用できます。
- Azure App Service:Webアプリケーション・APIを迅速に構築、デプロイ、スケーリングが可能です。アプリケーションを選択して取り込み使用できるため、自社に必要なものだけを選び、コストや機能の最適化につなげられます。
- Azure Spring Cloud:最新のアプリケーションパターンを取り込んで、Spring Bootアプリの開発と管理作業負担を軽減します。
- Azure Database for PostgreSQL:フルマネージドのPostgreSQを使用して、アプリケーションの迅速な革新が行えます。ワークロードを迅速にスケーリングし、AIを利用したパフォーマンスの最適化などの作業が可能です。
- Azure Database for MySQL:フル マネージドのMySQL データベースを使用し、高度なセキュリティを実現しつつ、高可用性のSLAによってアプリケーション開発をサポートします。
まとめ
アプリケーションとデータベースのモダン化は、Microsoft Azureソリューションを活用することで効率的に行えます。高いセキュリティで迅速なアプリケーション開発・管理を可能にするなど、モダン化をサポートするアプリケーションが豊富に揃うMicrosoft Azureソリューションなら、自社に最適な方法でモダン化を進められます。