世の中には、さまざまなソフトウェアが存在します。それに合わせて、開発するための手法も多く考えられてきました。「アジャイル開発」という名は、数ある開発手法のなかでも特に今日よく耳にするため、「実際のところどのような開発手法なのか?」と気になる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、従来の開発手法と比較したアジャイル開発の特徴や、そのメリット・デメリットについて解説します。どのような開発に向いているかも具体的に紹介していきますので、ぜひご覧ください。
アジャイル開発とは?ウォーターフォール開発との違い
アジャイル開発とは、開発サイクルを機能などの小さな単位に分解し、それぞれを別々に開発する手法のことをいいます。アジャイルには、「機敏」や「素早い」などの意味があり、小さく分解したそれぞれの機能を素早いサイクルで開発します。
ウォーターフォール開発との違いは、開発サイクルの数でしょう。ウォーターフォール開発は、「滝」という意味のとおり水が上から下に落ちていくように、全体を1つの開発サイクルに落とし込んで順々に開発していかなければいけません。
対してアジャイル開発は、機能などの小さな単位ごとに開発サイクルに落とし込みます。さらに単位ごとに優先度を決めることで、優先度の高い機能からそれぞれ開発に取り掛かることができます。
かならずしも、どちらかの開発手法がどちらかより優れているというわけではありません。それぞれのメリットを活かして、開発に取り入れることが大切です。
アジャイル開発を採用する3つのメリット
アジャイル開発には、下記3つのメリットがあります。
- トラブルへの対応
- 開発速度
- 成果物の質
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
トラブルにも柔軟に対応可能
開発には、計画の変更がつきものです。
仕様の変更や追加要望や、仕様漏れなどトラブルが発生することが考えられます。それにより、計画の見直しをすることもあるでしょう。
このような場合、従来の開発手法では比較的大幅に計画を変更しなければいけない傾向にあります。なぜなら、全体を通して1つのサイクルで開発しているからです。
トラブルが起こると、時には全体の計画を見直さなければいけなくなるでしょう。しかし先述のように、アジャイル開発の特徴はソフトウェアを細かく分解していることです。分解して開発しているため、トラブルが発生しても計画の変更を対象となる範囲を最小限にとどめることができるのです。
開発速度が速い
開発サイクルが終わる都度、その機能を実装して次の開発に移るアジャイル開発。
それぞれの開発サイクルが終わり次第順々に実装するため、スピード感のある開発を行うことができるでしょう。トラブルによる手戻り工数も開発速度に大きく影響します。
ウォーターフォール開発では、「トラブルが発生した際に大きく計画の変更をしなければいけない」という場合は、大きな手戻り工数が発生して計画に遅れが生じます。
対してアジャイル開発は、トラブル発生による影響を最小限に抑えることができるため、大きな手戻り工数は発生しません。
手戻り工数が発生しない分、開発速度が速い傾向にあります。
満足度が高い成果物を得られる
アジャイル開発では、一つの開発サイクルが終わるとその都度ユーザーとコミュニケーションを取ることができます。
ユーザーとコミュニケーションを取ることで、フィードバックや仕様のすり合わせが可能で、その内容を適宜織り込んでいけます。このように「開発途中」でも、ユーザーの要望を取り込んでいけるのです。
そのため、はじめに仕様をしっかりと決定し得なかったとしても、開発途中に仕様を順次決定しながら開発することができます。最終的に満足度の高い成果物をユーザーに提供することができるでしょう。
アジャイル開発を採用する3つのデメリット・課題
一見優秀な開発手法ですが、下記のようなデメリットや課題も存在します。
- わかりにくい進捗状況
- 納期遅れの可能性
- 当初の方針とのズレ
それぞれのデメリットや課題について、詳しく見ていきましょう。
全体の進捗状況の把握が難しい
一つひとつの開発サイクルが短いため、開発速度が速いメリットがある一方で、どのくらい開発が進んでいるか把握しづらい傾向にあります。
ウォーターフォール開発では、初めに全体の計画を立ててその計画に沿って開発を行います。そのため、進捗状況を簡単に把握することができるでしょう。しかし、開発サイクルごとでしか計画を立てていないアジャイル開発には、全体を通した計画がありません。したがってアジャイル開発では一般に、全体の計画がそもそも立てづらく、進捗状況も把握しづらく、進捗の管理が難しいでしょう。
納期に間に合わないケースもある
アジャイル開発は、「進捗状況が把握しづらいことで納期遅れが生じやすい」というデメリットがあります。
規模にもよりますが、開発は1人ではなく複数人で行うことが一般的です。特に大規模な開発になると、複数のチームで開発を行うことも少なくなりません。そのような場合、それぞれの人やチームの進捗状況をうまく把握できずに、遅れを見逃してしまう恐れがあります。
遅れに気づけなかったことで挽回できず、納期に間に合わないケースも考えられるため注意が必要です。
当初の方針とズレが生じる場合がある
アジャイル開発には、途中でもユーザーのフィードバックや要望を織り込めるというメリットがありますが、これにより方針のズレなどのデメリットが発生する恐れがあります。
通常、初めにユーザーの要望を基に要件定義などを行い、方針を取り決めます。
しかし、途中でユーザーの要望を織り込んでいくと、当初の方針とズレが発生するかもしれません。新たな要望を織り込む際は、「その要望が当初の方針とマッチするか」「機能として本当に必要か」などをユーザーと相談する必要があります。
アジャイル開発が向いているプロジェクトとは
今回紹介したメリットは、適した場面で採用することで最大限に活かせるでしょう。
特に適した場面として考えられるのは、主に下記の2つです。
- 時代や状況の変化によって仕様変更が必要な場合
- 仕様が明確ではない場合
ユーザーのニーズ変動が激しい業界も存在します。アジャイルなら、そうした状況で度重なる仕様変更などに対しても柔軟に対応し、変化にマッチした開発を行うことができるでしょう。
加えて、「仕様が明確ではないが、どうしても早く開発を始めなければいけない」などの状況でも、開発を進めながら細かい仕様を決めていくことが可能なアジャイル開発は最適と言えるでしょう。
まとめ
ここまで、アジャイル開発の特徴やそのメリット・デメリットについて解説しました。
アジャイル開発は、ソフトウェアを機能ごとに分解して開発する手法です。従来の開発手法とは異なる、さまざまなメリットがあります。しかし同時に本記事で紹介したようなデメリットにも十分注意しなければいけません。
ソフトウェアの開発において大切なことは、仕様や状況によって適切な手法を選ぶことです。アジャイル開発に適したソフトウェア開発に採用することで、そのメリットを最大限に活かすことができるでしょう。
アジャイル開発には、「Microsoft Azure」を利用することも効果的です。
Azureが提供するサービスの1つである「Azure DevOps Services」を活用することで、開発をサポートすることができます。ぜひ、Azure DevOps Servicesの利用も検討してみてください。