ビジネスの迅速な意思決定を導く手段のひとつに、データ分析の活用があります。分析作業の効率化を目指し、BIツールの導入を考える企業も多いのではないでしょうか。BIツールは、その種類により導入効果が異なります。本記事では、WEBスクレイピングツール・可視化ツールの役割を解説するとともに、おすすめのツールを紹介します。
WEBスクレイピングツール
数多くあるBIツール(Business Intelligence tools)のうちのひとつがWEBスクレイピングツールです。WEBサイトから特定の情報を抽出するスクレイピング作業を自動で行い、集めた情報を加工して新たな情報として生成します。
手動でWEBサイトから商品データを収集して価格表を生成したり、自社製品の口コミを集めて表にまとめたりする作業は手間ひまを要します。WEBスクレイピングツールを活用して、スケジュールに合わせたデータの自動収集が可能になれば、これまでの担当者はより重要な業務に注力できるようになり、業務効率化が実現するはずです。
ここからは、代表的なWEBスクレイピングツールを紹介します。機能面やコスト、特徴などを比較しながら見てみましょう。
Octoparse
インターネット上に流れている情報をコーディングなしで自動収集してくれるツールです。定期的な競合他社と自社製品との比較、新規開拓のための営業リスト抽出、マーケティングの精度を高める口コミ調査の実施など、多くの機能を搭載しています。クラウド型のサービスなので、保守の心配もありません。
フリープランがあるので、事前に使いやすさを確認できます。有料プランには14日間の無料トライアルが用意されています。
【個人向け】
スタンダードプラン: $75(年間契約)
【企業向け】
プロフェッショナルプラン: $209(年間契約)
エンタープライズプラン:要問い合わせ
Mozenda
安全性が確保されたクラウド型サービスで、コーディングの知識がなくても安心して利用できるツールです。ドキュメントと画像から抽出したデータを抽出したデータをDropboxやMicrosoft Azureなどへエクスポートすることも可能です。
すべてのプランで30日間の無料トライアルが利用できます。利用規模とユーザー数に応じてプランが分けられていますが、公式ホームページに価格が明記されていないため、興味があれば問い合わせてみるとよいでしょう。なお、利用にはWindowsの環境が必要です。
【個人向け】
プロジェクトプラン:1ユーザー
【企業向け】
プロフェッショナルプラン: 2ユーザー
エンタープライズプラン:3ユーザー
マネージドサービスプラン:見積もりの取得可
Import.Io
ノンプログラミングで誰にでも簡単に使えます。データ化したいサイトのURLを入力するだけで、Webサイトの情報を取得できます。ソフトウェアをインストールする必要がないクラウド型のサービスです。
無料版の提供やトライアルはありません。価格は用途に合わせて異なるため、利用する際は公式WEBサイトから見積もりを取得してみましょう。
【企業向け】
価格:カスタマイズによる
Sequentum Enterprise
商品画像や検索結果など、現代の複雑で多様化したWEBコンテンツに対応して素早くデータを抽出してくれます。ポイントアンドクリックの簡単な操作で利用できますが、必要に応じてプログラミングを組み込める柔軟性の高さも魅力です。
フリープランの提供はありませんが、リクエストに応じてトライアルを提供してくれます。
【個人向け】
スタータープラン:$15,000(年間会費)
【企業向け】
コマーシャルプラン;$25,000(年間会費)
チームプラン:$45,000~(年間会費)
スケールプラン:$7万5,000~(サーバーの年間支出)
Web Scraper
Google Chromeの拡張機能として提供されているWEBスクレイピングツールです。無料でインストールでき、ノーコーディングで誰でも手軽に利用できます。
フリープランが提供されているため、個人利用にも向いています。また、それぞれの有料プランでは、無料のトライアル利用も可能です。
【個人向け】
プロジェクトプラン:$50(月契約)
【企業向け】
ビジネスプラン:$200(月契約)
スケールプラン:$300(月契約)
スケールプラン:ニーズに適したプロキシプロバイダを選択、使用した分の料金を支払い
データ可視化ツール
スクレイピングツールで集めたデータをビジネスで有効活用するためには、ビジュアライゼーションが効果的です。直観的に把握しやすくなったデータを用いれば、社内外を問わず相手との共通認識が持ちやすくなります。
ここからは、データの可視化に便利なツールを紹介します。自社での活用シーンをイメージしながら比較してみましょう。
Tableau
日本の大手企業が導入しているツールで、簡単な操作でデータの可視化が実行できます。プログラミングスキルがなくても簡単に利用でき、アプリケーションへの埋め込みも可能です。
閲覧に特化したプランや、企業向けのライセンスサブスクリプションプランなども用意されており、それぞれ無料トライアルが提供されています。
【個人向け】
クリエータープラン: 1ユーザー/10万2,000円(1年単位)
【企業向け】
エクスプローラプラン:1ユーザー/5万1,000円(1年単位)
ビューアプラン:1ユーザー/1万8,000円(1年単位)
Power BI
Microsoft社の提供するノンプログラミングでデータを可視化するツールです。Excelの分析機能を使った操作でデータに関するインサイトを取得できます。Microsoft AIの活用により、あらゆるWEBサイトのテキストや画像からデータを素早く収集します。100種類以上のデータビジュアルがそろっている点も魅力的です。
少人数利用であれば、比較的リーズナブルな価格設定となっています。試用版が提供されているので、自社の既存システムとの相性を確かめてから導入するとよいでしょう。
【個人向け】
プロプラン:1ユーザー/1,090円(月単位)
【企業向け】
プレミアムプラン:ユーザー単位/2,170円(月契約)
プレミアムプラン:容量単位/54万3,030円
Alteryx
大規模データの迅速な処理を得意とするツールです。直観的なドラッグアンドドロップ操作により、分析プロセスの高速化に役立ちます。ノーコーディングでの利用も可能ですが、豊富な機能を使いこなすにはデータ分析の経験を十分に積んだ人材が必要です。
これまで紹介してきたツールと比べると、その費用はかなり高額ですが、データ分析の十分な体制が整っているのであれば、導入を検討する価値は大いにあります。まずは30日間の無料トライアルを利用してみてください。
【個人向け】
デザイナープラン:$5,195(年単位)
インテリジェンススイートプラン$2,300(年単位)
データパッケージ/ロケーションインテリジェンスプラン:$11,700
データパッケージ/コンシューマーインテリジェンスプラン:$33,800
【企業向け】
要問い合わせ
Chart.js
無料で使えるオープンソースのJavaScriptライブラリです。プログラミングは必要ですが、簡単なコードを記述するだけで8種のグラフを作成できます。多様なグラフを組み合わせてビジュアライゼーションするのも可能です。操作が容易でありながら、カスタマイズ性に優れているため多くのファンを持つツールです。
【企業・個人向け】
フリーツール
Highcharts
世界的によく利用されているJavaScriptチャートライブラリで、ライセンス費用は非商用であれば無料、商用目的の場合は有料となります。チャートタイプが豊富で、プラグインによるアニメーション機能の追加など、柔軟性に優れているのもポイントです。
【個人・企業向け】
商用目的は有料:価格は要問い合わせ
データ分析ツールを選ぶ際の3つのポイント
経営判断に役立つデータ分析も、使いやすくなければ効率化の実現は不可能です。そのような事態を避けるために、ツールを選定する際には押さえておきたいポイントが3つあります。
①使いやすいか
データ分析ツールの活用シーンにおいて、エクセルに慣れているビジネスパーソンほど最初の操作で戸惑いやすいという話をよく耳にします。慣れるまでのハードルがあまり高くならないように、使いやすさを重視した選定が大切です。
まずはUI・操作性・テンプレートの数などをチェックしてみましょう。UIと操作性は、直感的に操作できるかどうかをチェックします。よく使う機能がワンクリックで選択できることや、わかりやすくアイコン表示されているかどうかなどを意識してください。
また、テンプレート機能が自社のニーズを満たしているかどうかも重要なポイントです。たとえば、日本にある支店ごとの売り上げを単純なグラフだけでなく、地図上で可視化したいのであれば、日本地図のテンプレートが必要です。
このように、自社のユースケースを想像しながら、必要な機能がそろったツールを選定すれば導入後の後悔がありません。
②分析結果が見やすいか
データ分析はあくまで手段であり目的ではありません。データ分析の目的は、分析されたデータを活用して意思決定を導くことにあります。
意思決定を促進させる資料を作成するには、可視化による効果をさらに高める機能が備わっているかどうかも大切です。重要なポイントだけ赤く色づけできたり、主要でない部分は小さくしたりといった工夫を加えれば、上司へ相談する際もスムーズに共通認識を持てます。
②既存のシステムに連携可能か
すでに活用しているシステムとの連携が可能かどうかも入念にチェックしましょう。可視化したデータをどのように扱うのかを明確にしたうえで、既存のシステムからのインプットや既存のシステムへのアウトプットに対応できるツールを選ぶと導入後に慌てずに済みます。
ExcelやCSVは比較的多くのBIツールに対応していますが、SharePointを活用している場合には同じMicrosoft社のPower BIと相性が良いなど、ツールごとの特性もあります。また、他の社員と共同でデータを加工する必要があるかなど、ユースケースに配慮しながら比較検討してください。
データ分析ツールは目的を明確にして利用する
データ分析ツールを導入する際には、目的の明確化が大切です。目的を達成するために必要なデータ分析の結果が得られなければ、ツールの有用性が十分に発揮されない可能性もあるのです。導き出されたデータを使う目的と、目指すべきゴールは見失わないようにしましょう。
ビジネスで成果を上げるためには、データ分析で得た知見を次のアクションへつなげる必要があります。社員に可視化したデータを共有すれば、モチベーションの向上にも期待が持てます。データに基づいて自分がやるべき仕事を把握して取り組むことが、自社の発展へとつながるはずです。
まとめ
数多くリリースされているBIツールの中から、自社に適したBIツールを見つけ出すのは容易ではないかもしれません。導入目的だけでなく、自社のリソースと照らし合わせながら最適なツールを選択しましょう。
自社のニーズに合う最適なツールを駆使すれば、あらゆる効率化が実現し、ビジネスの成果の向上につながるはずです。